相続税対策についてお悩みの方へ、生前に行っておくべき3つの対策方法を弁護士が解説
- 遺産を残す方
- 相続税
- 対策
平成27年相続税法の改正により、基礎控除額が6割引き下げられました。
相続税の課税対象の方の中には、「相続税の対策方法がよくわからない……。」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
自分の大切な資産を少しでも多く、相続人に残す相続税対策のポイントとしては、生前に正しい方法で相続税対策を行うことが重要です。
本記事では、相続税対策の考え方・生前に行っておくべき相続税対策の3つの方法についてご紹介していきます。
1、相続税対策の主な考え方
相続税とは、相続人が遺産を受け取る際、その遺産の評価額(固定資産税評価額)に応じて発生する税金のことを言います。
遺産の評価額が高い場合でも、税金を引き下げる「控除」という制度を利用することにより、相続税を抑えることが可能です。
相続税対策の主な考え方としては、3つあります。
- 相続財産自体を減らす
- 控除額を大きくする
- 相続財産の評価額を軽減させる
節税のポイントを知っていると知っていないとでは、相続の結果が大きく変わります。
なるべく相続税で損をしないためにもなるべく早く対策を行うことが重要です。
以上のことを念頭に置き、相続税の対策方法についてご紹介いたします。
2、生前贈与を行い、相続財産を減らしていく
まずは、生前贈与を活用する相続税対策についてご紹介いたします。
-
(1)生前贈与とは?
生前贈与とは、一般的には「生きているうちに、財産を配偶者などの推定相続人に贈与すること」を指します。「生前贈与」という言葉は法律にはなく、上記のような解釈で一般的に用いられる言葉です。
生前贈与は、生前に相続する財産を減らしておくことで、将来相続が発生した際の相続税を減らす目的があります。贈与税の方が相続税よりも税率が低いためです。
また、計画的に生前贈与を行うことで、財産を基礎控除額以下にすることができ、相続税を0円にすることも不可能ではありません。 -
(2)生前贈与の方法
贈与する場合は生前贈与も例外なく、贈与税がかかります。しかしやり方次第では、贈与税を0円にすることも可能です。
贈与を受ける人には、年間110万円以内の基礎控除が設けられています。
つまり年間110万円ずつ贈与すれば、贈与税が0円となり一切税金がかからないのです。
2人の相続人に対して、110万円を10年間贈与した場合、2200万円の財産を税金0円で受け渡すことができます。
贈与税を抑えたい場合は、年間110万円以内という基礎控除の枠を利用して、なるべく早くから贈与を行うとよいでしょう。
基本的には上記の方法を利用するのがおすすめですが、財産が数億円以上ある場合は110万円以上の贈与を行うことで、節税できるケースもあります。
贈与を行う際は、相続税よりも低い税率の範囲で行うのが重要なポイントとなりますが、実際に計算を行うのは難しいため、専門家に相談されることをおすすめいたします。 -
(3)生前贈与の注意点
生前贈与をする際には、贈与者と受贈者間でその都度契約書を作成することが必要です。
また、子どもや孫に贈与する場合、振り込む口座の名義がその子どもや孫のものであったとしても、実際にその口座を管理しているのが贈与者(親)であると、贈与とみなされずに相続税が課税される場合があります。
ご自身で贈与を行うのが不安な場合には、弁護士や税理士にご相談ください。
3、生命保険を活用し、控除額を大きくする
次に、生命保険を活用した相続税対策についてご紹介いたします。
-
(1)生命保険を活用した相続税対策とは?
相続税の対策として、「控除額を大きくすること」も1つの方法です。
生命保険の死亡保険金には、非課税枠があります。この非課税枠を活用することにより、相続税を軽減させることができます。
生命保険の非課税枠は、
法定相続人の人数×500万円
とされています。
そのため配偶者と3人の子供に相続される場合は、
4人×500万=2000万
2000万まで非課税となります。
非課税対象となるのは相続人が相続された死亡保険金のみで、相続人以外の人が受け取った死亡保険金は非課税対象にされず、課税されてしまいます。
また、相続放棄をした場合でも、生命保険金は受け取れますが非課税対象にはなりません。 -
(2)生命保険を活用する場合はなるべく早く加入する
生命保険を活用して相続税対策を行う場合、生きているうちに、生命保険に加入しておくことが必須となります。加入年齢を最大90歳まで取り扱っている生命保険会社もありますが、生命保険は高齢者の方への審査が厳しい場合もあるので、なるべく早めに加入しておく事がおすすめです。
-
(3)生命保険を活用した相続税対策の注意点
生命保険の受取人が、被相続人自身となっている場合、死亡保険金が支払われた際、被相続人の財産ということになり、相続財産に含まれてしまいます。
受取人を被相続人以外に指定してある場合、法律上相続財産には含まれず、受取人固有の財産ということになるのです。
そのため、受取人を被相続人ではなく、配偶者などの推定相続人を選択しておきましょう。
また、生命保険の種類で、「養老保険」「定期保険」「終身保険」などがあります。
「養老保険」「定期保険」は、一定期間をすぎると死亡保険金が支払われなくなるので、注意が必要です。
期間制限のない「終身保険」を選択しましょう。
4、不動産や特例の活用で相続財産の価値を下げる
次に、不動産を活用した相続税対策についてご紹介いたします。
-
(1)不動産で相続財産の価値を下げるとは?
相続税対策の1つとして不動産が活用されているのは、法律によって定められた財産評価額の引き下げの仕組みを利用できるからです。
現金の場合、相続する時価が課税対象となりますが、不動産などは、時価よりも相続評価額が低くなる評価方法の「相続税路線価」「固定資産税評価」を利用して行われます。
現金を土地に変えることで約20%、不動産に変えることで30~70%(建築年数により変動あり)ほど、評価額を抑えることができるのです。
また、賃貸不動産の場合はさらに評価額を抑えることもできます。 -
(2)不動産で相続税対策方法
多くの現金資産を所持していることが必要となりますが、その資産を利用し不動産を購入します。
賃貸マンションやアパートを購入することで、その後賃貸経営を行えば、定期的に収入につながりますし、相続税の評価額が大幅に下がり節税となるのです。
不動産を譲り受け、それを売却するのは手間にもなりますし、大幅に相続金額が少なくなってします恐れもあります。
評価額抑えるという点からしても、土地を購入するよりは、賃貸不動産を購入・建設することがおすすめです。 -
(3)不動産で相続税対策の注意点
不動産を活用した相続税対策の注意点としては、一度不動産にしてしまうと、現金化することが難しいという点です。
残された家族が相続税の納税金額の問題で、争いになるという事例も見受けられます。
保有資産を全て不動産にするのではなく、別途現金を用意しておくことが大切です。
また、不動産の購入も慎重に行わなければ、大きな損失が発生してしまうリスクもあるので、良い物件を選び、上手く賃貸経営を行うスキルが必要となってきます。
被相続人は、自分の判断だけで購入するのではなく、配偶者の方や推定相続人の方に一度相談し、同意した上で購入することをおすすめします。
不動産といっても、賃貸マンションやアパート・タワーマンション・住居用不動産を購入するのでは、それぞれ節税額が異なってきます。
詳細な節税額、別途用意が必要な現金の額を知りたい場合は、弁護士もしくは税理士に相談されることをおすすめいたします。
5、まとめ
多額の資産を保有している場合はもちろんのこと、税法の改正により、ごく一般的な家庭においても相続税の申告が必要となるケースは少なくないでしょう。
相続税対策を行うだけではなく、残された家族が争いを起こさないように、配慮することも大切です。
ベリーベストグループでは弁護士のほか税理士も所属しておりますので、相続税対策から遺産分割を含めた相続問題についてワンストップで対応することが可能です。
相続税対策や相続についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています