相続の財産調査はお早めに! その必要性と方法を札幌の弁護士が解説
- その他
- 相続
- 財産調査
- 方法
全国的に「空き家」の増加が問題になっていますが、平成31年4月から、札幌市における空き家問題の解決を図るため、札幌商工会議所が「空き家の相談窓口」を開設しました。
空き家の増加にはいくつかの原因がありますが、そのひとつとして挙げられているのが「相続時の財産調査の不徹底」です。
相続が開始されると、故人、つまり被相続人がどれだけの財産を持っていたのかを徹底的に調査することになります。
これが「財産調査」です。
財産調査は、相続が発生したらできるだけ早い段階で徹底的におこなわれるべきですが、どのようにすれば故人が所有していた財産が調べられるのか、わからない方も多いでしょう。
ここでは、財産調査の必要性や方法について、札幌オフィスの弁護士が詳しく解説します。
1、財産調査は重要! 急いで調査すべき3つの理由
相続が発生したら、相続人となる方はまず財産調査を徹底する必要があります。
では、なぜ財産調査を急ぐべきなのでしょうか?
-
(1)相続税額を確定させるため
相続税の申告と納税には期限があります。
相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税をしないと、無申告加算税や延滞税といったペナルティーが課されてしまいます。
通常、相続の開始を知った日は被相続人が死亡した日を指すため、相続税の申告・納税の期限は「10か月後」と考えておけば良いでしょう。
この10か月の間に、どれだけの遺産を誰がどんな割合で相続するのかを話し合い、相続した財産の価値に応じて相続税が課税されるわけです。
つまり「どれだけの遺産があるのか」が明らかにならない限り、相続税の金額は確定しないことになります。
実際に相続が発生し、遺産分割の協議や手続を進めてみるとわかりますが、意外にも10か月という時間は短いものです。
ペナルティーの発生を防ぐためにも、早めの財産調査で相続税額を確定させましょう。
あとで財産が発覚して期限に間に合わなくなるケースもあるので要注意です。
税務調査によって指摘を受けると、納税した税額の10~15%が追加で加算されてしまうこともあります。 -
(2)マイナスの遺産で故人の借金を背負ってしまわないため
被相続人の死亡後、相続人を悩ませてしまう代表的なトラブルが「借金」です。
故人が借金を残して死亡した場合、何もしなければ、借金を返済する義務は相続人に継承されてしまいます。
ほかの遺産を使って借金が清算できる場合は大した問題にならないはずですが、借金のほうが多い場合は、故人の借金を肩代わりしないために相続放棄を検討しましょう。
目に見える財産を分配し、相続税も納税して相続手続が終了したと思っていたところ、突然、故人宛てに借金の返済を求める通知が届けば、相続人が責任をもって返済することになります。
こんな事態に陥らないためにも、早い段階で財産調査を徹底的におこない、マイナスの遺産を洗い出しておく必要があるのです。 -
(3)公平な遺産分割を実現するため
財産調査をする場合、故人の持ち物や郵便物などの情報を第一の手がかりとするのがセオリーでしょう。
しかし、なかにはこれらの情報からは判明しない遺産が存在しているケースもあります。
もしかすると、家族の誰もが知らない財産が眠っているかもしれません。
また、悪意を持った相続人がいれば、「ほかの相続人にとられたくない」と考えて財産の存在を隠すこともあります。
遺産分割を公平なものにするためには、故人が所有していたすべての財産を明らかにしたうえで遺産分割協議を進めていく必要があるのです。
2、故人の預貯金や借金を調べる方法
相続財産としてまず存在を確かめることになるのが、銀行など金融機関の口座に預け入れている預貯金でしょう。故人の預貯金について調べる方法を解説します。
-
(1)通帳・キャッシュカードなどから調べる
故人の預貯金を調べるもっとも簡単な方法は、預金通帳やキャッシュカードの存在から、金融機関に問い合わせて取引明細・口座履歴・残高証明書などを取り寄せることです。
通帳が手元にあったとしても、記帳されている最終残高が本当の残高である保証はないので、これらを取り寄せるほうが確実でしょう。
取引明細・口座履歴・残高証明書などの発行は、金融機関によって対応が異なります。
原則、故人の戸籍謄本や相続人の本人確認書類などを必要としますが、場合によっては口頭・電話などでも対応してくれる場合があるので、まずは問い合わせることをおすすめします。
また、把握できていない口座も、故人の持ち物などから発覚することがあります。
ボールペン・ティッシュ・タオルなど、金融機関が配布した粗品などから口座の存在が明らかになるケースも存在するので、しっかり調査しましょう。 -
(2)ネット銀行の利用がないかにも注意する
最近では、通帳レスのネット銀行に口座を開設している方も増えています。
故人の所有物のなかに、ワンタイムパスワードを生成するためのカードやトークンなどがあれば、ほぼ間違いなく口座を開設していることになります。
また、パソコンやスマートフォンを調べ、インターネットブラウザー内のブックマークやアプリからネット銀行の利用が判明することもあります。 -
(3)借金は信用情報機関に問い合わせる
預貯金が「プラスの遺産」であれば、借金やローンなどは「マイナスの遺産」だといえます。
マイナスの遺産は、請求書や口座引落の通知などの手紙から判明しますが、これらの手がかりがない場合は信用情報機関に問い合わせるのがおすすめです。
信用情報機関は、次の3社です。- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
JICCは主に消費者金融の利用、CICは主に信販会社のクレジットカードの利用、KSCは主に銀行からの借り入れを調べることができます。
3、不動産の所有を調べる方法
相続財産のなかでも価値が高いのが土地・建物などの不動産です。
不動産の所有は、どのように調べれば良いのでしょうか?
-
(1)権利関係の書類から調べる方法
故人の所有物に、不動産の権利証や登記済証、または登記済証に代わる登記識別情報通知書などがないかを確認しましょう。
権利関係を明らかにするために、所有している不動産の登記事項証明書、いわゆる「登記簿謄本」を保管している場合もあるので、重要な手がかりとなります。 -
(2)税金にかかる書類から調べる方法
権利関係の書類がない場合でも、郵便物などから不動産の所有が判明する場合があります。
固定資産税納税通知書や課税明細書が存在する場合は、なんらかの不動産を所有しており、税金が課税されていることの証拠です。
「遺族の知らないところで不動産投資をしていた」といったケースも考えられるので、よく調べておきましょう。ただし、持っている不動産の価値が一定の価格より低い場合には、固定資産税がかかっていない場合もあります。心にとめておきましょう。 -
(3)名寄帳から調べる方法
不動産を所有していると聞いていたが、どこに、どんな不動産を所有しているのかがわからないというケースでは、名寄帳から調べる方法が有効です。
名寄帳とは、市町村が作成している固定資産課税台帳のことで、だれが、どこに、どのような不動産を所有しているのかが記録されています。
固定資産税の課税対象から外れてしまった不動産でも記録されているため、税金にかかる書類とあわせて確認しておけば万全でしょう。
ただし、名寄帳は市町村ごとに作成・管理しているため、大方の目星をつけて市町村に証明書の交付を申請することになります。
不動産が存在する可能性はあるが所在地が見当もつかない、という場合には弁護士に相談するほうが賢明でしょう。
4、株など金融商品の所有を調べる方法
遺産として発見されにくいもののひとつが、株や国債などの金融商品です。
投資に興味がなさそうな故人でも、実は現役時代の勤務先からボーナスなどで自社株を配布されていたというケースもあります。
-
(1)証券や取引報告書などから調べる方法
故人の所有物のなかに株・国債などの証券や取引報告書などがあれば、金融商品を保有している可能性が高くなります。
そのほか、株主総会に関する郵便物や、株主優待券なども手がかりとなるでしょう。 -
(2)証券保管振替機構に問い合わせる方法
以前は株式を保有していると「株券」が発行されていましたが、すでに株券の制度は廃止され、上場株式はすべて電算化され、証券会社の口座で取引がされています。
故人がどの証券会社に口座を開設しているのかが不明であれば、株式会社証券保管振替機構に情報開示を請求しましょう。
所定の開示請求書に加えて、相続人の本人確認書類のコピーや住民票・印鑑登録証明書の原本を郵送すれば、故人が利用していた証券会社が判明します。
5、まとめ
相続が発生したら、まずは財産調査を徹底してすべての遺産を明らかにすることが肝心です。
しかし、預貯金・不動産・金融資産のすべてを洗い出すのは大変な作業で、特に仕事が忙しい方は、漏れのない調査をする暇がないのが実情でしょう。
相続発生時の財産調査は、弁護士に一任するのが得策です。
弁護士に任せておけば、手間がかからないだけでなく、短期間で漏れのない調査ができるうえに、難しい遺産相続手続のサポートが受けられます。
もし、相続人の間で争いが起きたとしても、弁護士が介在していれば円満な解決を図ることが期待できます。
ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスは、遺産相続に関するお悩みの解決実績が豊富な弁護士が、相続人の方を全力でバックアップします。
まずはお気軽に、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています