非嫡出子にも法定相続分はある? 遺産分割のとき気を付けるべきこと

2021年11月18日
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非嫡出子にも法定相続分はある? 遺産分割のとき気を付けるべきこと

札幌市が公表しているデータによりますと、令和2年中、札幌市内では2万178名の方が亡くなられたそうです。遺産が多い・少ないに関係なく、亡くなられた方の数だけ相続が発生しているといえます。

相続の態様は実にさまざまです。中には「非嫡出子」と呼ばれる続柄の方が相続人になるケースもあります。近親者が知らなかった非嫡出子が存在した場合、相続でトラブルになる可能性があるでしょう。

そこで本コラムでは、嫡出子と非嫡出子の違いから非嫡出子の相続、そして非嫡出子との相続争いを避ける方法について、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。

1、嫡出子と非嫡出子の違い

  1. (1)嫡出子とは?

    嫡出子とは、市町村役場に婚姻届を提出し、正式な法律上の夫婦である男女のあいだに生まれた子どものことをいいます

    妻の場合、その子どもが自分の子どもであるかどうかは長い妊娠期間を経て出産に至るわけですから、産院で取り違えでも起きないかぎり子どもの母親であることは簡単に証明ができます。しかし、夫からみれば、妻の産んだ子どもが本当に自分の子どもであることを証明することは難しいものです。

    そこで、民法第772条第1項では、婚姻中に妻が妊娠した子どもは夫の子どもと推定するものと定めています。また、同条第2項では、婚姻成立の日から200日を経過したあと、または婚姻の解消、もしくは婚姻の取り消しの日から300日以内に生まれた子どもは婚姻中に妊娠したものと推定し、夫の子どもであると推定すると規定しています。

    つまり、上記の場合は夫婦の子どもであると証明しなくても、民法上嫡出子と推定されるのです

    また、婚姻関係が成立する前に妊娠し、婚姻関係成立後200日以内に子どもが生まれることも珍しくありません。そこで、婚姻関係成立後200日以内に生まれた子どもは「推定されない嫡出子」として、嫡出子となるとされています

    なお、上記のように嫡出子と推定される場合であっても、夫がずっと海外に滞在していた、あるいは行方不明になっていたなどのケースも起こりえます。そのような、期間内に生まれた子どもが夫の子どもではあり得ない場合は「推定の及ばない子ども」といい、嫡出子としての推定は及びません

  2. (2)非嫡出子とは?

    嫡出子に対して非嫡出子とは、愛人など法律上の婚姻関係にない男女のあいだに生まれた子どものことです。

    非嫡出子は、実際に出産した母親とは無条件に戸籍上の親子関係が認められます。しかし、事実上の父親とはそうではありません。戸籍法第52条においても「嫡出でない子の出生の届出は、母がこれをしなければならない」とされています。母親が出生の届け出をしない場合、戸籍上の父親の欄は空白になります。

    このため、嫡出子は生まれたそのときから父親の法定相続人になることができるのに対し、非嫡出子は実の父親であろうと自動的に法定相続人になることはできません

    子どもが非嫡出子で、特に何も手続きをしない場合、法律上の親子関係にない事実上の父親の財産を相続する権利は発生しません。したがって、何も手続きをされていなければ、事実上の父親が死亡して相続が発生したときに、遺産分割協議に参加することもできないのです。

    しかし、事実上の父親が、生まれた子どもを民法第779条に規定のある「認知」することで、戸籍の父親欄に父親の氏名が記載されます。同時に、子どもが生まれたときにさかのぼって法律上の親子関係が認められるようになり、遺産相続においては嫡出子と同等の法定相続分の権利が発生します。

    なお、非嫡出子が嫡出子と同等の相続権を得るための要件は、事実上の父親による認知だけです。父母の婚姻を原因として非嫡出子を嫡出子とする「準正」は、要件ではありません。

2、非嫡出子の相続分

  1. (1)認知された非嫡出子の法定相続割合は?

    前述のとおり、非嫡出子は事実上の父親が認知していることにより、当該非嫡出子の母親と事実上の父親が法律上の婚姻関係になかったとしても、相続において嫡出子と同等の権利が認められます。

    すなわち、非嫡出子は認知されることで事実上の父親の第1順位の法定相続人となり、事実上の父親の配偶者や他の嫡出子と共同相続人になることができるのです。たとえば、事実上の父親の法定相続人が配偶者とその嫡出子1名、そして認知された非嫡出子であれば、当該非嫡出子の法定相続割合は嫡出子と同じ4分の1となるのです。

    改正前の旧民法第900条4号では、「非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1」とされてきました。しかし、その考え方が憲法第14条に規定する法の下の平等に反すると考えられること、非嫡出子の相続格差を撤廃する諸外国の動き、親の行為の不利益を子どもが負うべきではないとする考えのもと、平成25年12月の民法改正により嫡出子と非嫡出子の相続割合は平等になっています。

  2. (2)遺産分割協議に注意

    遺産分割協議とは、被相続人(死亡した人のこと)の遺産を、誰が・何を・どの割合で相続するのか、共同相続人で話し合って決めることです。

    遺産分割協議は共同相続人全員の協議で行われることが原則です。したがって、非嫡出子であろうと認知されている場合は共同相続人であるわけですから、遺産分割協議に参加する権利があります

    そして、共同相続人のうち1人でも参加していない遺産分割協議は、無効になります。ただし、民法第910条では遺産分割協議後に認知の訴えが認められた場合、他の相続人は価額賠償義務を負うものと規定されていますので、訴えが認められ認知された子どもを除いた遺産分割協議は有効とされます。

  3. (3)非嫡出子が行方不明の場合は?

    非嫡出子が被相続人の共同相続人に該当するか否かについては、戸籍謄本を取得して確認します。戸籍謄本に共同相続人に該当する非嫡出子がいる場合、他の相続人は遺産分割協議への参加を呼びかけなくてはなりません

    しかし、戸籍謄本に記載されているものの当該非嫡出子と面識がなく、いくら手を尽くして探したとしても行方不明で、そもそも生きているのかすらわからないことがあり得ます。ただし、行方不明であったとしても、それを理由に行方不明の非嫡出子を遺産分割協議から除外することはできません。

    このような場合、民法第30条以下に定める「失踪宣告」という制度があります。失踪宣告とは、行方不明の不在者を家庭裁判所が「死亡したものとみなす」制度のことです。家庭裁判所から失踪宣告を受けるためには、当該非嫡出子の生死不明の状態が7年間継続していることが必要です。

    また、民法第25条以下では「不在者財産管理人」という制度もあります。これは行方不明の共同相続人がいる場合に、家庭裁判所が選任した不在者財産管理人が一時的に遺産を管理するというものです。不在者財産管理人の権限は、遺産の保存行為に限られます。

    また、不在者財産管理人が選任されたとしても、民法遺産分割協議をするためには家庭裁判所の許可が必要であり、一定期間の財産管理を経たあとでなければ許可されないというのが通例です。

3、非嫡出子が認知されていなかった場合

前述のとおり、認知されていない非嫡出子は法定相続人ではないため、嫡出子と同様の法定相続割合は認められていません。しかし、「遺贈」によって当該非嫡出子は遺産を相続することと同じ効果を得ることができます。

遺贈とは、被相続人が遺言で財産を自分の死後無償で譲り渡すことをいいます。このとき、遺言で財産の遺贈を受ける方を受遺者といいますが、受遺者は基本的に法定相続人以外の誰でもなることができ、認知を受けていなかった非嫡出子でも受遺者として財産の遺贈を受けることができます。

遺贈には、大きく分けて包括遺贈と特定遺贈があります。包括遺贈とは、誰々に遺産のすべてを譲る、あるいは2分の1を譲るというように、遺贈する財産を特定せず、割合のみを指定する方法です。これに対して特定遺贈とは、遺産の中から〇〇銀行の定期預金〇千万円、あるいは自宅不動産というように、特定の財産を指定して行う遺贈のことです。

なお、遺贈は遺言によってなされます。遺言は法律行為ですから、法律行為の無効・取り消しの規定が適用されます。たとえば、受遺者がまったくの赤の他人を自分の非嫡出子と勘違いして遺贈した場合、それは民法第95条に規定する錯誤によって無効となることがあります。

また、民法は遺贈に特有の無効原因として、以下の3つを規定しています

  • 遺言者の相続発生前に受遺者が死亡したとき(民法第994条1項)
  • 停止条件付の遺贈について、受遺者がその条件が成就する前に死亡したとき(同第994条第2項)
  • 遺贈の目的である権利が、遺言者の死亡時点で相続財産に属しなかったとき(同第996条)

4、非嫡出子との相続争いを避けるために

非嫡出子との相続争いを避けるためにできることは、これから相続が発生しそうな人に認知された非嫡出子がいないかどうかをしっかりと調査し、もしいる場合は事実を確認のうえ生前に遺言を作成してもらうことでしょう。

そのとき、弁護士があなたの心強いパートナーとなります。相続問題の解決に実績と経験のある弁護士であれば、相続争いの原因となる事象についても知見を有しているものです。あなたの代わりに戸籍謄本を取り寄せて非嫡出子の存在を調査し、相続争いの可能性を極力排除できるような遺言の作成をサポートするなどのサービスを提供し、いずれ来るべき相続への準備をお手伝いします。

5、まとめ

相続にはトラブルが付き物ですが、しっかりとした対策をとっておくことでトラブルが発生する可能性を大きく減少させることができます。特に非嫡出子の存在などのように遺産の取り分でトラブルとなることが予想される事態が判明しているときは、お早めに弁護士に相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスでは、相続全般に関するご相談を承っております。ぜひお気軽にご連絡ください。あなたのために、ベストを尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています