2回目の自己破産はできる? 費用や注意点とは? 弁護士が解説
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北海道では新型コロナウイルスの感染が広がり、令和2年2月、全国に先駆けて独自の緊急事態宣言が出されました。
店舗の休業や生産活動のストップにより、いわゆる「コロナ破産」も出ています。
札幌市では同年6月、老舗のホテルが利用客の急減に伴う経営悪化により、閉館を余儀なくされました。市内には、個人で自己破産を検討している方もいらっしゃるでしょう。ただ、過去に自己破産を経験している方は「2回は利用できない」と思い込んでいるかもしれません。
では、そもそも自己破産には回数制限はあるのでしょうか? もし回数制限がない場合、2回目以降の利用の際、注意点はあるのでしょうか?詳しく解説します。
1、2回目の自己破産は利用できる?
自己破産は借金を帳消しにする、強力な解決手段です。そのため人生で一度しか利用できないというイメージがあるかもしれませんが、実際にはそうではありません。
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(1)自己破産は何回でも可能
自己破産は法律上、適用回数の制限がありません。つまり何回でも利用が可能なのです。ただし借金をゼロにしてもらうためには、裁判所に自己破産を申し立てた後、「免責許可決定」を受けなければいけません。申し立ては何回でも可能ですが、免責が認められるかどうかは別問題です。
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(2)利用できるかは免責不許可事由の有無で決まる
過去に自己破産をしていると、「裁判官に『反省していない』と思われて免責が認められないかもしれない」と不安に思うかもしれません。
しかし、免責の可否は、裁判官の気分で決まるわけではありません。「免責不許可事由」があるかどうかで決まります。免責不許可事由とは、破産法第252条1項に定められた免責が認められないケースのことです。ひとつでも該当するものがある場合、原則として免責はされません。 -
(3)審査は厳しくなる
自己破産で免責が認められれば借金はゼロになり、返済に追われることのない生活を始めることができます。しかし、自己破産を何度も利用することを簡単に許せば、乱用のおそれがあり、債権者が受ける不利益は無視できず、破産者が生活を立て直す機会を奪うことにもなりかねません。
そのため2回目以降の自己破産では、1回目に比べて免責可否の審査が厳しくなることがあります。
詳細は次の章で詳しくご説明します。
2、2回目の自己破産の注意点
2回目の自己破産は、1回目に比べて審査が厳しくなることがあります。その場合には手続きの流れや費用が異なりますので、注意してください。
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(1)管財事件になる可能性が高い
自己破産手続には次の2種類があります。
- 同時廃止事件
- 管財事件
自己破産では、破産者の財産を債権者に分配するのが通常の流れです。一定程度の財産がある場合には、破産管財人が選任されて財産の換価などをする「管財事件」という方法が採られることになります。
ただし、破産者に財産がほとんどないケースも少なくありません。その場合、破産管財人を選任して財産を精査しても意味がないため、破産手続きの開始と終了を同時に行う「同時廃止」になります。同時廃止の方が、手続きにかかる手間も時間も抑えられるのが特徴です。
2回目の自己破産では、自己破産に至った経緯などを慎重に判断する必要性があると考えられ、たとえ財産がなかったとしても管財事件になることがあります。 -
(2)管財事件の場合は、費用が高額になる
自己破産では、手続き費用として裁判所に「予納金」を払わなければいけません。
金額は裁判所によって異なりますが、同時廃止の場合には1万5000円程度です。一方、管財事件となる場合には、破産管財人への報酬などが必要となるため、数十万と高額になります。
もっとも、管財事件になったとしても、予納金を支払うだけの財産がない方もいるでしょう。
その場合に、管財事件ではあるが、手続きを簡略化して予納金をおさえた「少額管財」が適用されることがあります。ただし、少額管財はすべての裁判所で運用されているわけではありません。また申し立ては本人ではできず、代理人の弁護士が行わなければいけません。 -
(3)自己破産の理由を厳しくチェックされる
破産管財人は財産の確認や債権者への分配だけでなく、免責不許可事由に該当するかを調査する役割も有しています。
そのため管財事件になった場合には、財産資料を細かく調べられたり、借金の経緯を聞かれたりして、財産隠しや浪費など不許可事由に該当しないかを厳しくチェックされる可能性があります。なお、この調査に協力しなければ、免責不許可となるおそれがあります。 -
(4)破産審尋を受ける可能性がある
自己破産を申し立てた場合、裁判所から直接、事情を聴かれることがあります。この面談を「審尋」といいます。
1回目の自己破産では書類だけで審査されたり、代理人弁護士への面談で済ませたりするため、破産者本人が事情を聴かれることはあまりありません。
ですが2回目の自己破産の場合、破産者本人への聴き取りが行われることが少なくありません。あくまで話を聴くだけですが、本当に自己破産が避けられないのか、ギャンブルや浪費がないかなどを追及される可能性があります。
3、2回目の自己破産で気を付けるべき免責の要件・判断基準
免責を認めるかの判断は、「免責不許可事由があるかどうか」で決定されます。その中でも2回目の破産で特に注意しなければいけないのは以下の2点です。
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(1)前回の自己破産から7年以上たっているか
2回目の自己破産で最も気を付けなければいけない免責不許可事由は、「前回の免責許可から7年以内」であるかどうかです。
7年以上たっていなければ、原則として免責は許可されません。3回目の自己破産も同様で、2回目の自己破産から7年たっている必要があります。これは安易に自己破産できなくするための仕組みといえます。
そのほかの免責不許可事由には、主に次のようなものがあります。- 財産隠しや損壊、贈与で財産を減少させる
- 破産申立て前に高金利で借金、クレジットカードの現金化
- 浪費やギャンブルによる借金
- 裁判所や破産管財人の調査に協力しない
- 一部の債権者だけに返済
- 破産前1年間に返済の見込みがないのにうそをついて借金
- 財産に関する資料の改ざんや隠ぺい
自己破産をしようと思うなら、免責不許可事由に該当しないよう、特に慎重に行動する必要があります。
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(2)裁量免責が受けられない可能性がある
たとえ免責不許可事由があったとしても、免責を受けられる可能性もあります。その唯一の方法が「裁量免責」です。
裁量免責とは、免責不許可事由があったとしても、本人が反省していて生活の改善が期待できる場合、裁判官の判断で免責を認めるという仕組みです。
たとえば1回目の自己破産の原因がギャンブルであったとしても、常識の範囲内の支出や頻度であれば、裁量免責となることが多い傾向にあります。
ですが2回目ではそうはいきません。前回と同じ理由で再び借金をした場合、「反省していない」と判断され、裁量免責が受けられない可能性が高まります。さらにそれが前回の破産から7年以内の場合、裁判官の見方はさらに厳しくなります。
ただし、免責後に病気で医療費がかさんだなど、やむを得ない事情で借金をしてしまうこともあるでしょう。そういった場合にはきちんと考慮されます。
4、自己破産ができない時の対処法
自己破産の必要があっても、前回の自己破産から7年たっていなかったり、前回と同じ免責不許可事由があったりすると不許可になる可能性が高まります。その場合には別の方法で解決を目指しましょう。
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(1)個人再生、任意整理を活用する
借金問題の解決には、自己破産以外にも「個人再生」や「任意整理」という債務整理が利用できます。
個人再生とは、裁判所に申し立てて借金を大幅に減額してもらい、残額を原則3年で返済していく手続きです。住宅ローンが残っている持ち家を手放さずにすむというメリットがあります。任意整理とは、裁判所を介さず貸金業者などの債権者と直接交渉をして、借金を減額してもらう手続きです。
両方とも自己破産と違って借金はゼロにはなりませんが、返済の負担を軽くできます。
こういった方法を検討することも視野に入れておきましょう。 -
(2)ひとりで判断せず弁護士に相談を
「前回の破産から7年以内だから無理だ」「ギャンブルをしてしまったからダメかも」と、早々に2回目の自己破産を諦める必要はありません。
免責不許可事由があっても、裁量免責が受けられる可能性はあります。また自己破産が利用できなかったとしても、個人再生や任意整理で解決できるかもしれません
ひとりで判断せず、まずは弁護士に相談しましょう。
弁護士は借金の状況や前回の自己破産の経緯を聞き取り、2回目の自己破産が可能かどうかを判断してくれます。手続きや破産審尋のサポートも可能です。また、破産が難しい場合には、別の解決方法を探すこともできます。
5、まとめ
1回目の自己破産で「もう二度と借金はしない」と思っても、さまざまな事情から再び借金をし、返済に行き詰まってしまうことはあるでしょう。しかし、2回目の自己破産の場合、条件は厳しくなります。自己破産をお考えの場合には、まず弁護士への相談することをおすすめします。ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスでは、経験豊富な弁護士が全力でサポートいたします。どうぞお気軽にご連絡ください。
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