借金を保証したら、債務整理された! 保証人である自分はどうなる?

2022年09月21日
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借金を保証したら、債務整理された! 保証人である自分はどうなる?

親族や友人などから頼まれて、借金の保証人になることを依頼される場合があります。借金をした本人が返済を続けていれば、保証人になったとしても特に問題は生じません。

しかし、借金をした本人が返済を怠った場合や債務整理をした場合には、債権者から保証人に対して請求がいくことになるのです。したがって、借金の保証人になることを承諾するかどうかは、よく考えてから判断するようにしましょう。

もし主債務者が債務整理をしてしまった場合には、保証人としてはどのように対応すればよいのでしょうか? 本コラムでは、主債務者が債務整理をした場合に保証人がとれる対応について、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。

1、まずは自分が保証人か、連帯保証人か確認

保証人には、「保証人」と「連帯保証人」という2種類の形態があり、どちらであるかによって責任の重さが異なってきます。
そのため、まずは、どちらの形態の保証人であるかを確認することが重要になります。

  1. (1)保証人と連帯保証人とは?

    保証人とは、お金を借りた本人(主債務者)がお金の返済ができなくなった場合に、主債務者に代わって債権者への返済を行う義務を負う人のことをいいます。

    連帯保証人も保証人の一種であるため、「保証人と同様に主債務者が返済をすることができなくなった場合に、主債務者に代わって返済を行う義務を負う」という点では共通します。しかし、以下で説明するとおり、連帯保証人の方が保証人よりも責任が重くなっています。
    そのため、連帯保証人になる場合には、特に注意が必要となるのです

  2. (2)保証人と連帯保証人の違い

    保証人と連帯保証人では、以下のような違いがあります。

    ① 催告の抗弁の有無
    催告の抗弁とは、債権者から請求を受けた際に、「主債務者に先に請求してください」と主張することができる権利です。
    保証人には催告の抗弁がありますが、連帯保証人には催告の抗弁はありません

    ② 検索の抗弁の有無
    検索の抗弁とは、返済を拒んでいる主債務者に資力がある場合に「主債務者の財産を差し押さえてください」と主張することができる権利です。
    保証人には検索の抗弁がありますが、連帯保証人には検索の抗弁はありません

    ③ 分別の利益の有無
    分別の利益とは、複数の保証人がいる場合に、各保証人の責任が保証人の人数に応じて案分されることをいいます。
    保証人には分別の利益がありますが、連帯保証人には分別の利益はありません。
    そのため、複数の連帯保証人がいたとしても、各連帯保証人は、債務の全額を返済する責任を負うのです

2、借金の保証を受けた人がどの債務整理を選ぶかでその後が変わる

主債務者が債務整理をしたとしても、債務整理の種類によっては、保証人のとるべき対応が変わってきます。

  1. (1)主債務者が任意整理をした場合

    「任意整理」とは、債権者との交渉によって、借金の減額や支払い回数の変更などを求めていく方法です。
    自己破産や個人再生とは異なり、裁判所を介さない債務整理の方法であるため、比較的柔軟な対応が可能であるという特徴があります。
    たとえば、任意整理では「特定の債権者を除外する」という対応をとることができます。

    主債務者が任意整理をしたとしても、保証人付きの債権を除外して任意整理をしてもらうことができれば、債務整理をした事実は債権者には知られることはありません。
    そのため、債権者から保証人に対して請求がいくということもないのです。
    ただし、任意整理であっても保証人付きの債権を含めた任意整理が行われた場合には、債権者から保証人に対して請求がいくことになる点に注意してください。

  2. (2)主債務者が自己破産または個人再生をした場合

    「自己破産」とは、裁判所に申し立てをして、免責決定を受けることによってすべての借金をゼロにすることができるという方法です。
    また、「個人再生」とは、裁判所に申し立てをして、再生計画の認可を受けることによって、借金の総額を大幅に減額して、3年(最長5年)での分割払いをしていく方法です。
    どちらも任意整理に比べて借金減額の効果が大きい方法となりますので、借金の返済に苦しんでいる主債務者としては、これらの手段を選択することもあるでしょう。

    自己破産と個人再生は、裁判所を介して行う法的な債務整理の手段であるため、債権者の平等が強く要請されることになります。
    そのため、特定の債権者だけを除外して自己破産や個人再生を行うことはできず、すべての債権者を対象にして行わなければならないのです。
    その結果、保証人付きの債権がある場合には、債権者から保証人に請求がなされます。

3、一括請求を受けた場合の対処法

主債務者が保証人付きの債権を債務整理の対象にした場合には、債権者から保証人に対して一括返済を求める請求がなされることになります。
保証人が債権者から一括請求を受けた場合には、以下のような対応を検討しましょう。

  1. (1)一括返済

    債権者から一括返済を求められたとしても、返済総額が少なかったり、保証人に一括返済に応じることができるだけの資力があったりする場合には、債権者に一括返済を行うという対応が考えられます。
    一括返済を受けることは債権者にとってもメリットがありますので、一括返済をする条件として返済額を減額するように交渉してみることも、有効な手段となるでしょう。

    また、主債務者が自己破産または個人再生ではなく任意整理を選択した場合には、保証人は求償権を行使することによって、一括返済をした金額を主債務者に対して請求することができます。
    もっとも、基本的に、任意整理をした主債務者には、求償権の行使に応じるだけの資力がありません。そのため、実際に回収することは難しいといえるでしょう

  2. (2)一括返済が難しい場合には債務整理

    保証人に一括返済に応じるだけの資力がないという場合には、保証人も保証債務についての債務整理を検討する必要があります。
    「一括返済は難しいものの、分割であれば返済ができる」という場合には、債権者と交渉して、分割払いに応じてもらうように求めてみるとよいでしょう。
    債権者としては、保証人も自己破産や個人再生をしてしまうと、貸したお金を回収することが難しくなってしまいます。そのため、「期限の利益」(期限が来る前に債務の履行を請求されないという債務者の利益)が喪失した後でも、分割払いに応じてくれる可能性があるのです。

    他方で、「分割払いでの支払いも難しい」という場合には、自己破産や個人再生を検討することになります。
    自己破産を選択すれば借金をゼロにすることができますが、一定以上の資産を有している場合には、それをすべて手放さなければならないというデメリットがあります。
    個人再生であれば、たとえば住宅ローン付きの自宅がある場合には、自宅を維持したまま住宅ローンを除く借金の総額を減額することが可能になります。
    どちらの手段が最適であるかは、保証人の保有する資産状況、収支状況、他の借金の有無などによって異なってきます
    具体的な対応は、専門家である弁護士に相談をしながら決めていくとよいでしょう。

4、債務整理なら弁護士に相談を

債務整理をご検討中の方は、早い段階から弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)最適な債務整理の方法を提案してもらえる

    保証人の方は、「それまでは借金とは無縁の生活をしていたにもかかわらず、主債務者の債務整理によって突然借金問題に巻き込まれてしまった」という状況になってしまった場合多いでしょう。
    主債務者とは異なり、ある程度の資産がある状態で債務整理を行うことになるため、債務整理の方法を選択する際に考慮する要素も複雑になります。

    弁護士であれば、最適な債務整理の方法を提案することができます
    そのため、大切な資産を残しながら借金問題を解決することができる可能性もあるでしょう。

  2. (2)債権者から直接取り立てをされることがなくなる

    弁護士に債務整理の依頼をした場合には、弁護士から債権者に対して「受任通知」という書面を送ります。
    受任通知が債権者に届いた後は、債権者から本人への連絡や取り立てが禁止されますので、依頼された方は債権者からの取り立てによるストレスから解放されます。

    債権者とのやり取りも、弁護士がすべて代行しますので、債権者と交渉することによる精神的な負担も軽減されるでしょう

  3. (3)面倒な事務手続きも弁護士がサポート

    自己破産や個人再生を行うことになった場合には、裁判所に提出する申立書の作成や必要書類の収集をしなければならず、慣れない方にとっても大きな負担となります。

    弁護士に依頼をすることによって、このような面倒な事務手続きをすべて弁護士に委任することができます
    したがって、事務作業による労力や時間的な負担を大幅に軽減することができるのです。

5、まとめ

親族や知人・友人から借金の保証人を頼まれたとき、断り切れずに、保証人になることを応じてしまう方もおられます。
しかし、借金の保証人は、主債務者に不履行があった場合に主債務者に代わって返済を行っていかなければならないという重い責任を負うことになるのです。

もし主債務者が債務整理をしてしまったという場合には、保証人としても、早い段階から対応を開始することが重要になります
札幌市や近隣市町村にご在住の方は、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスにご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています