ストーカー行為をやめてほしい。誓約書に法的効力はある?

2022年09月21日
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ストーカー行為をやめてほしい。誓約書に法的効力はある?

令和3年に札幌市内で認知された刑法犯・重要犯罪・重要窃盗犯の総数は、9376件でした。前年は9422件となっており、若干の減少傾向となっています。

ストーカー行為の被害に遭われた方は、ストーカーから誓約書の提出を受けるケースがあります。しかし、誓約書に関するやり取りを行う際に、ストーカーとの間で何らかのトラブルが発生する場合があります。そのため、ストーカーに対応する際には、弁護士を代理人にすることをおすすめします。

本コラムでは、ストーカー行為に関する誓約書の法的効力や提出時の手続き、ストーカー規制法で禁止されている行為などについて、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。

1、ストーカーが提出する誓約書の法的効力

ストーカーに対して、さらなるストーカー行為をやめることを約束させるための方法として、「誓約書を提出させる」という対応があります。
誓約書に定められた内容は、提出者であるストーカーを法的に拘束して、義務違反が生じた場合には損害賠償責任が発生します。

ただし、誓約書を提出したにもかかわらず、ストーカー行為が続く場合もあります。
もし深刻なストーカー被害に遭った場合には、都道府県公安委員会に対して禁止命令等の申し出を行うことも検討してください

  1. (1)ストーカーが提出する誓約書の主な内容

    ストーカーが被害者に提出する誓約書には、以下のような内容を盛り込むことが一般的です。

    1. ① ストーカー行為に関する謝罪
    2. ② 今後の誓約事項(つきまとい等の禁止など)
    3. ③ 違反時の損害賠償
  2. (2)誓約書に違反したストーカーは、損害賠償責任を負う

    ストーカーは、「誓約書で約束した事項を遵守する」という法的な義務を負います。
    もし誓約書に違反した場合には、被害者に対して損害賠償を行わなければなりません。

    誓約書で損害賠償についてのルールを定めている場合には、原則としてその内容に従い、損害賠償の金額などが決定されます。
    これに対して、誓約書で明確な損害賠償のルールを定めていない場合には、民法上の債務不履行または不法行為に関する規定にしたがって、損害賠償の金額等を決めることになるのです(民法第415条第1項、第709条)。

  3. (3)深刻なストーカー被害を受けた場合は「禁止命令等」の申し出を

    誓約書は、違反時に損害賠償責任を発生させることで、ストーカー行為を再び繰り返すことについて一定の抑止効果が期待できます。
    しかし、悪質な相手の場合には、誓約書を提出してもなお、ストーカー行為を継続されるおそれがあります。

    もし誓約書を提出させるだけでは不安な場合は、都道府県公安委員会に「禁止命令等」の申し出を行いましょう
    申し出を受けた都道府県公安委員会は、以下の要件をすべて満たしていると判断した場合には、ストーカーに対して禁止命令等を発します(ストーカー行為等の規制等に関する法律第3条、第5条第1項)。

    1. ①「つきまとい等」または「位置情報無承諾取得等」(いずれも後述)が行われたこと
    2. ② ①により、被害者の身体の安全・住居等の平穏・名誉を害し、または被害者に行動の自由が著しく害される不安を覚えさせたこと
    3. ③ ①の行為が反復して行われるおそれがあること


    禁止命令等に違反したストーカーは、刑事罰の対象となります。
    そのため、単に誓約書を提出させるよりも、さらに強力な抑止効果が期待できるでしょう。

2、ストーカーに誓約書を提出させる際の手続き・注意点

ストーカーに誓約書を提出させる際には、警察署で書いてもらう場合もありますが、当事者だけの間で誓約書のやり取りを行うことのほうが一般的です。

適切で十分な内容の誓約書を作成したうえで、ストーカーからの不当な圧力などを回避するため、弁護士を代理人にすることをおすすめします。

  1. (1)弁護士に相談しながら案文を作成する

    まずは、誓約書の内容を決定する必要があります。
    ストーカーに内容を考えさせるのではなく、被害者の側で案文を作成して、そのままの内容で提出することを求めましょう。

    ストーカーに約束させるべき内容に漏れが生じないように、案分を作成する際には、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします

  2. (2)弁護士を通じてストーカーとやり取りする

    ストーカーとのやり取りを被害者本人が行うと、ストーカーから不当な圧力を受けたり、精神的なダメージを受けたりする可能性があります。
    そのため、被害者自身が矢面に立つのではなく、ストーカーとのやり取りは弁護士に代行を委任するほうがよいでしょう

  3. (3)弁護士が代理人として誓約書を受け取る

    誓約書の提出を受ける際には、代理人である弁護士に宛てて提出させることをおすすめします。
    対面で提出を受ける場合にも、代理人の弁護士が代わりに受け取れば、被害者本人はストーカーと顔を合わせずに済みます。
    郵送で提出を受ける場合にも、代理人の弁護士を宛先に指定しておけば、住所などをストーカーに知らせる必要がなくなります

3、ストーカー規制法で禁止される3つの行為

悪質なつきまとい行為は、ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)によって禁止されています。
誓約書を提出させるだけでなく、ストーカー規制法による禁止規定をふまえたうえで、都道府県公安委員会や警察にも助力を求めるとよいでしょう。

ストーカー規制法によって禁止されている行為は、主に以下の3つです。

  1. (1)つきまとい等

    「つきまとい等」とは、恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことに対する怨恨(えんこん)の感情を充足する目的で、相手やその近親者などに対してする行為です(ストーカー規制法第2条第1項)。
    具体的には、以下のような行為が当てはまります。

    1. ① つきまとい、待ち伏せ、進路上の立ちふさがり、住居等の付近での見張り、住居等への押し掛け、住居等付近のうろつき
    2. ② 行動を監視していると思わせるような言動
    3. ③ 面会、交際など、義務のないことの要求
    4. ④ 著しく粗野、乱暴な言動
    5. ⑤ 無言電話、拒否されているにもかかわらず、電話・手紙・ファクス・メールなどで連続して連絡する行為
    6. ⑥ 汚物・動物の死体など、著しく不快・嫌悪の情を催させるような物の送付・放置
    7. ⑦ 名誉を害する事項の告知
    8. ⑧ 性的羞恥心を害する事項の告知、記録媒体等の送付


    つきまとい等によって、被害者の身体の安全・住居等の平穏や名誉が害された場合や被害者に行動の自由が著しく害される不安を覚えさせた場合には、都道府県公安委員会による禁止命令等の対象になります(同法第3条、第5条第1項)。
    禁止命令等に違反した場合、「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されます(同法第20条)。

  2. (2)位置情報無承諾取得等

    「位置情報無承諾取得等」とは、恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、相手やその近親者などの位置情報を取得する行為です(ストーカー規制法第2条第3項)。
    具体的には、以下のような行為が「位置情報無承諾取得等」に当たります。

    1. ① 対象者に無断で、対象者所有のスマートフォンなどに記録された位置情報を閲覧・受診する行為
    2. ② 対象者に無断で、対象者の所有物にGPS装置を取り付けたり、紛れ込ませたりする行為


    位置情報無承諾取得等も、つきまとい等と同様に、都道府県公安委員会による禁止命令等の対象です(同法第3条、第5条第1項)。

  3. (3)ストーカー行為

    「ストーカー行為」とは、つきまとい等または位置情報無承諾取得等を反復してすることを意味します(ストーカー規制法第2条第4項)。

    ストーカー行為をした者には、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(同法第18条)。
    また、禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合には、さらに重い「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」が科されるのです(同法第19条)。

4、ストーカーの危険を感じた場合は警察に相談を

誓約書を提出させる、離れた地域に身を隠すなど、ストーカーに対して被害者が自衛するという対応も存在します。
しかし、それだけでストーカー被害を食い止められるとは限りません。

誓約書や示談書の作成などに関しては、弁護士もサポートすることができます。
しかし、ストーカー被害に対してもっとも効果を発揮するのは、警察や都道府県公安委員会による対応です。
もしストーカー被害によって深刻な身の危険を感じている場合には、すぐに、警察へご相談ください

5、まとめ

ストーカーに提出させた誓約書は、損害賠償などの観点から法的効力を有しますが、それだけでストーカー被害を解決できるとは限りません。
被害者がストーカー行為から身を守るためには、警察との連携が重要になります。

ベリーベスト法律事務所では、ストーカー被害者の方からのご相談を受け付けております。
ストーカー被害に遭い、どのように対処すべきかわからない方は、ベリーベスト法律事務所にご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています