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プライバシーの侵害? 職場から個人情報が流されたときにできる対応

2021年08月23日
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プライバシーの侵害? 職場から個人情報が流されたときにできる対応

人間誰しも他人には知られたくはない私的な事柄というものがあるでしょう。たとえば、職場の上司があなたの生い立ちをや年収を言いふらしていることが発覚したとします。その後、ネットの掲示板へ「○○は〇△で育って年収は○○」といったことが書き込まれていたことが判明したら、非常に大きなショックを受け、いわゆるプライバシーの侵害として相手を訴えたいとお考えになるかもしれません。

本コラムでは、どのような個人情報が流されたときプライバシーの侵害となりえるのかといった基本的な部分から、名誉毀損との違い、ネット上に個人情報が拡散したときにとるべき対処方法について、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。

1、プライバシーの侵害とは?

ここでは、プライバシー権の侵害とはどういうものかについて説明いたします。

プライバシー権自体やその内容について具体的に定めている法律というものはありません。

もっとも、社会の情報化が進み、裁判でプライバシー権が認められるようになりました。

プライバシー権の根拠や内容については、「宴のあと」事件判決(東京地判昭和39年9月28日判時385号12頁)において、以下のように判示されています。

まず、判決では「個人の尊厳は近代法の基本的理念の一つであり、また日本国憲法の立脚点であるが、この理念は相互の人格が尊重され、不当な干渉から自我が保護されることによってはじめて確実なものとなる」とされます。

そのうえで、「正当な理由がなく他人の私事を公開することが許されてはならないという意味のプライバシーが法的に尊重されるべきなのは言うまでもない」としています。

そして、「私事をみだりに公開されないという保障は、不法な侵害に対して法的な救済が与えられる人格的な利益であり、いわゆる人格権に包摂されるが、なおこれを一つの権利と呼ぶことを妨げるものではない」と結論付けています。

すなわち、プライバシー権は、私生活をみだりに公開されないという法的保障ないしは権利であるとされています。

なお、自己の容貌,姿態をみだりに写真などにされたり,利用されたりすることのない権利である肖像権もプライバシー権の一種とされています。

プライバシーの侵害は、刑法上の犯罪行為にはなりませんが、民法709条・710条の不法行為責任を負い、相手から慰謝料の請求を受ける可能性があります。

2、プライバシーの侵害と個人情報の基準

ここでは、プライバシーの侵害となる基準と、個人情報とはなにかについて解説します。

前提として、法律上、個人情報の定義については、個人情報保護法によって規定されています。
一例としては以下のとおりです。
●生年月日や氏名、顔写真など個人を特定できる情報
●購入履歴など、何らかの行動などを示すことで個人を識別できる情報
●指紋などのデータやパスポートなどの番号

これらの個人情報については、個人情報保護法によって保護されています。もし職場から流出した場合は職場に対して対応を求めることになるでしょう。

そのうえで、前述のとおり他人の私生活といわれても、さまざまな内容があります。したがって、私生活をはじめとした個人情報を公開する行為のすべてがプライバシーの侵害になるということではありません。

他人の私生活の公開がプライバシーの侵害となる基準というものがあり、その基準は「宴のあと」事件において判示されました。

具体的には、下記の4つの基準を満たせば、プライバシー-の侵害と判断されます。

  1. 公開された内容が、私生活上の事実らしく受け取られる恐れのある事柄であること。
  2. 一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められる事柄であること。
  3. 一般人に知られていない事柄であること。
  4. このような公開によって、当該私人が実際に不快、不安の念を覚えたこと。


①について
公開された内容が事実であった場合は、プライバシーの侵害に該当する恐れがありますが、一方で、公開された内容がフィクションであった場合、普通の人が事実と受け取るような内容である必要があります。

たとえば、ある人物が実は宇宙人であるということをネットなどで触れ回ったとしても、普通の人はその内容を事実とは思わないため、プライバシーの侵害とはなりません。

②について
普通の人からして、公開された内容がその人にとって公開されたくないと感じるものである必要があります。

たとえば、ある人物が車の免許を所持しているということを公開したとしても、その人物が特にその事実を隠しているといった事情のない限り、一般的には公開されたくないと感じる内容ではないため、プライバシーの侵害とはなりません。

③について
一般人がすでに知っている内容について公開したとしても、プライバシーの侵害とはなりません。

たとえば、不倫の事実を世間に公表している人物について、同様の不倫の事実を公開したとしてもプライバシーの侵害とはなりません。

④について
私生活を公開されたことによって、その人が実際に不快・不安といった感情を抱くことが必要です。

たとえば、ある人物が女好きであるということを公開しても、その人物がその内容を気にも留めていなかった場合、プライバシー侵害とはなりません。

3、プライバシーの侵害と名誉毀損との違いは?

プライバシーの侵害と似たような概念として、名誉毀損というものがあります。ここでは、プライバシーの侵害と名誉毀損との違いについてご説明いたします。

名誉毀損とは、事実を摘示することによって他人の社会的評価を低下させることです。

たとえば、ネット上の掲示板に、「あいつは職場の女性と浮気している不届きものだ」と書き込むと、その人物に対する社会的評価が低下するといえるので、名誉毀損になります。

不倫の公表などの場合、名誉毀損になると同時に、プライバシーの侵害になるということがあります。

住所の公開などのケースでは、名誉毀損にならないものの、プライバシーの侵害となります。

外見に対する誹謗中傷などは、名誉毀損となるものの、プライバシーの侵害とはならないといえます。

そして、他人の名誉を毀損すると、民法709条・710条の不法行為責任を負い、慰謝料請求を受ける可能性がありますし、刑法230条の名誉毀損(きそん)罪として刑罰が科されることにもなります。

4、ネット上に個人情報が拡散したときの対処方法は?

ここでは、ネット上に個人情報が拡散したときの対処方法についてご紹介いたします。

  1. (1)情報の削除を依頼する

    まず、これ以上ネット上に個人情報が拡散されないように、情報を削除する必要があります。

    個人情報が書き込まれたのがブログやネット上の掲示板である場合、専用の問い合わせフォームから管理者に削除依頼することがほとんどです。

    ブログや掲示板の「お問い合わせ」や「ヘルプ」といった項目から、フォーム画面へ進んで必要事項を間違いのないように正確に入力しましょう。

    ただし、削除依頼をしたからといって、その書き込みが必ず削除されるというわけではなく、削除するかどうかは管理人の判断に委ねられることになります。

  2. (2)犯人を特定する(発信者情報開示請求)

    個人情報を書き込んだ犯人が分からないままだと、情報が削除されたとしても、再び同じような事態が起きるということも考えられます。

    そこで、「発信者情報開示請求」という手続きによって、個人情報を書き込んだ犯人を特定する必要があります。

    発信者情報開示請求はプロバイダ責任制限法第4条に基づく請求です。

    この請求が認められると、サーバー管理者であるプロバイダから、ネット上でプライバシーを侵害した者の情報の開示を受けることができます。

  3. (3)不法行為責任に基づく損害賠償請求を行う

    犯人が特定できたとしても、相手が個人情報の拡散をやめるとは限りません。

    また、個人情報の拡散によって被った損害を相手に補填させる必要もあります。

    そこで、個人情報を書き込んだ相手に対し、損害賠償請求をするという方法があります。職場から流出したことが明確であれば、それについても証拠をそろえ、職場に対して責任を問うことも視野に入れることになる可能性も出てくるかもしれません。

    ご自身でも損害賠償請求や、会社に対して責任を追及することはもちろんできますが、複雑な手続きや法的な主張を行う必要があります。実際にできるのかどうかも含め、弁護士へ相談されることをおすすめします。

5、弁護士に依頼するメリットは?

ここでは、プライバシーの侵害について弁護士に依頼した場合のメリットをご紹介いたします。

  1. (1)法的観点や経験からスピーディーな解決が望める

    ネット上に悪質な書き込みがされると、圧倒的な速さで拡散してしまう恐れがあり、ご自身で削除するにしても、なかなか対応がうまくいかず、削除依頼しているそばから書き込みが広がってしまう可能性があります。
    また、ご自身が削除依頼を行うことにより、逆に拡散に火が付き、さらに書き込みがされることも懸念されます。
    弁護士に依頼すれば、法的観点やネットの削除について経験をもとに、より的確な削除対応が可能となりますので、ご自身で行うよりもスピーディーな解決が望めます。
    また、弁護士からサイト管理者や悪質な書き込みを行っている者に対して削除依頼を行うことにより、相手側が本気で受けとめて、書き込みや記事を削除してくれる可能性が高まります。

  2. (2)弁護士会照会を利用することが可能

    弁護士法23条の2に基づき、経由プロバイダなどに対して発信者特定のために必要な情報を請求することが可能です。ただしこちらは任意開示による請求となりますので、強制力はありませんが、弁護士会照会はもちろん弁護士しか利用することはできませんので、一度弁護士に相談していただくと良いでしょう。

  3. (3)裁判や損害賠償請求など法的手続きをスムーズに行える

    裁判を通して相手を特定するための情報を請求する「発信者情報開示請求」や、損害賠償請求をするためには、裁判所に対して、ご自身の権利が侵害されたことを法的に主張しなければなりません。そのためには、法的な専門知識が必要になりますので、ご自身のみで主張や立証を行うのはなかなか困難といえるでしょう。
    弁護士であれば、裁判で適切に主張や立証を行い、発信者情報開示請求や損害賠償請求が認められる可能性が高くなります。

6、まとめ

今回は、プライバシーの侵害や個人情報の基準から、プライバシーの侵害となるケース、名誉毀損との違い、ネット上に個人情報が拡散したときはどういった対処方法をとればいいのかなどについて解説しました。

インターネットの発達に伴い、個人が不特定多数の者に対して情報を拡散することが容易になりました。そのため、ご自身の個人情報が勝手に公開されてしまい、プライバシー侵害の被害者になってしまう可能性は低くありません。

そして、一度ネットに個人情報が公開されてしまうと、コピーとペーストが繰り返され、その被害がどんどん広がっていってしまいます。

被害を最小限に食い止めるためにも、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。ネットのプライバシー侵害でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所・札幌オフィスにご相談ください。札幌オフィスの弁護士が全力であなたをサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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