ゴルフボールが当たる打球事故発生! 損害賠償の請求先はだれ?
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札幌近郊はもちろん、北海道内には多くのゴルフ場があり、週末には軽快なスイング音が鳴り響きます。
レジャーや接待で人気のゴルフですが、他の人が打ったボールが当たってしまえば、大きな怪我をしてしまう可能性があるスポーツです。一般的に損害賠償請求は、他人へ危害を加えた者に対して行うケースがほとんどですが、ゴルフのプレイ中に起きた事故では、どのように扱われるのでしょうか。
本コラムでは、さまざまな事故の事例を元に、ゴルフにおける損害賠償の内容を、札幌オフィスの弁護士が説明します。
1、ゴルフ場で起こる事故や過失
実際、ゴルフ場でどのような事故が起こり、損害賠償請求がされているのでしょうか。本コラムでは2つの事例を紹介します。
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(1)注意義務違反による過失
平成12年10月、千葉県のゴルフ場で打球事故が起こりました。これは、打ったゴルフボールが隣のホールでプレイしていた男性に当たり、肋骨を折るという事故になったのです。ボールを打った男性は隣のホールの被害者に全く気づかずに、キャディーの合図でスイングを行ったということです。
この打球事故について裁判所では、約200万円の損害賠償を認める判決を下しました(東京地方裁判所 平成18年7月24日判決)。
ここで多くのゴルファーが注目したのは、判決で「自分の技量で飛ぶ可能性の範囲を十分に確認すべき義務」があるとされたことです。つまり、事故を起こしたゴルファーは、その義務を怠ったとみなされたのです。
ゴルファーは当然誰もいないホールを目指してスイングを行います。そのときに意図しない方向に飛んでしまう可能性もあります。そうしたミスショットに対しても、注意義務があり、事故を起こした場合は損害賠償が認められるという判決が改めて示されたのです。 -
(2)被害者が過失を問われる場合も
ゴルフ場の打球事故では、ゴルフボールを打った側が加害者で、怪我を負った側が被害者とされることが多いのですが、過去には被害者の過失が問われた例もあります。
同じく平成12年に兵庫県で起こった事故で、同伴プレーヤーが打ったボールが約40m前方にいた被害者男性の側頭部に直撃したことによって後遺症をもたらしたというものです。被害者は治療費、後遺障害における逸失利益に慰謝料等を含めた損害賠償請求を起こしました。
加害者の男性は十分なゴルフ経験があり、自分のショットによるボールの衝突性などを予測できるとし、その注意義務を行ったと裁判で判断されました。しかし、ゴルフマナーの基本として、同伴プレーヤーのショット時に前に出てはいけないことがあり、マナーを守っていなかった被害者にも過失があると認定され、損害賠償請求のうち6割が過失相殺される結果となりました(大阪地方裁判所 平成17年2月14日判決)。
過失相殺とは、被害者にも過失が認められる場合、その割合に応じて損害賠償金額が減額されることです。
このケースでは、加害者も被害者もゴルフ経験が豊富で、打球事故が起こることが十分に予見できたという判断となったのです。
2、ゴルフ事故における損害賠償の基準、責任は加害者に?
ゴルフ場での事故において、その責任は事故を起こした加害者に降りかかることが多いといえます。一方で、ゴルフ事故だからとすぐに加害者の損害賠償責任を決めず、ショットを行った加害者に過失があったのかどうかの判断は個別に行われます。損害賠償責任の有無をはじめ、その損害賠償額はゴルフ事故のケースによってさまざまです。
平成25年に岡山地裁でこのような判決が下りました。
仲間数人でキャディーを付けてコースを回っていたところ、1人が打った打球が仲間の1人の左目に当たって失明してしまった事故が発生しました。原因は、被害者が自分の打ったボールを見に行こうと歩き始め、加害者の打つ場所よりも前に出ていたことでした。
岡山地裁の判決での過失割合は、十分な安全確認を怠った過失として加害者へ6割、前に人がいるのに注意喚起を怠ったとしてゴルフ場のキャディーに1割、被害者にも不注意が見受けられたとして3割の過失割合を認めました。また、この事故の損害賠償の金額は4000万円を超えることになりました(岡山地方裁判所 平成25年4月5日判決)。
他にも、プレーヤーが打ったボールがキャディーの目に当たった事故では、プレーヤーは安全確認や注意喚起の義務を怠った、キャディーにはゴルフの危険性を十分に熟知しているはずなので、プレーヤー以上に注意すべきだったとして、それぞれの過失割合をそれぞれ5割とする判決が、平成14年に名古屋地裁で下されました(名古屋地方裁判所 平成14年5月17日判決)。
過去の事例の多くは加害者の過失が多く認定される場合が多いのですが、スイングしたゴルフボールが、被害者の元まで届くとは予見できないケースでは、損害賠償責任が否定されたケースもあるのです。
また、前述した千葉で起きた事故の例にもあるように、被害者に一定のゴルフマナーを遵守する義務があり、それを怠ったために事故にあったという落ち度が認定される場合もあります。過失100%にはならないのですが、ある程度の過失相殺となってしまうのです。ゴルフ場における注意義務というのは、ゴルフをする人の技量や経験によっても大きく変わってきます。具体的な注意義務が判断材料とされるのはそのためなのです。
以上のことから、決まった損害賠償はそれぞれのケースの内容によって判断されることになります。そのため、過去の裁判事例を参考に判断されることが多くなっています。トラブルに遭ってしまった場合は一度弁護士に相談されることをおすすめいたします。
3、弁護士に依頼するメリット
前述でご紹介しました通り、ゴルフ場で起きた事故についてはケース・バイ・ケースとなり、当事者間での話し合い、いわゆる示談ではまとまらず、第三者に委ねる、つまりは裁判になるというケースは少なくありません。
そこで、民事事件や刑事事件などの解決実績が豊富な弁護士に依頼することで、両者の主張の落としどころをうまくまとめられる可能性が高くなります。
ゴルフ場ではひとつとして同じ事故は起こりえないことを考えると、加害者に落ち度があるのか、被害者に過失はあったのかという点を客観的に判断することになります。弁護士はそういった点も踏まえて、両者が納得できる形での解決方法をご提案します。
また、裁判の際には裁判所に提出する書類や手続きなどをすべて弁護士が行うことが可能です。煩雑で難しい準備や手続きを弁護士に依頼することで、精神的な負担も軽減されるはずです。
4、まとめ
ゴルフ場の事故については、その特殊性からさまざまなケースが考えられ、損害賠償の金額などに決まった基準はありません。加害者、被害者、ゴルフ場、キャディーがそれぞれどのくらい責任を負うべきか、賠償金を支払うべきかを当事者間だけで話し合って決めることは難しいといえるでしょう。
ゴルフ場の事故は示談で円満に解決したいと望む方は、まず弁護士へ相談することをおすすめします。どこに相談すればよいかわからない場合は、まずは近隣の弁護士事務所へ相談してみてはいかがでしょうか。ゴルフ場で相手を怪我させてしまったなどでお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています