ネットショップ運営者が知っておくべき「特定商取引法」のこと
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平成29年10月、消費者庁は、札幌市内の仮想通貨のマルチ商法を行った企業に3ヶ月の一部取引停止命令を出しました。平成30年には、札幌の訪問販売会社に対して、不当な取引行為を繰り返していた業者に対して9ヶ月間、業務の一部を停止するように命じた上で、処分の内容や事業者名を公開しています。
このように、特定商取引法に違反すると、営業停止などの事業の継続に関わる重大な処分を受ける可能性がある上に、会社名などを公開されるという処分が下される可能性があります。
そこで、今回はネットショップ運営者が知っておくべき特定商取引法の概要や、対象業者、罰則などをベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。
1、特定商取引法とは? ネットショップに関係あるの?
特定商取引法とは、消費者を保護するために、事業者による違法な勧誘や悪質な勧誘を防止するための法律です。ここでは対象となる業種と、特定商取引法の概要を解説します。
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(1)特定商取引法の対象となる7つの業種
特定商取引法の対象となる業種は以下の7つです。
- 訪問販売
- 通信販売
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引(マルチ商法)
- 特定継続的労務提供(エステサロンや結婚相談所、語学教室など)
- 業務提供誘引販売取引(内職商法)
- 訪問購入(自宅を訪問して宝石等を買い取る)
ネットショップの運営は上記の「通信販売」に該当します。したがって、特定商取引法の対象となるのです。 -
(2)ネットショップ運営者が知るべき特定商取引法の概要
次に、通信販売をする際に知っておかなければならない、特定商取引法の内容を解説します。
- 氏名等の表示義務 特定商取引法では、ネットショップの運営者に、事業者名や連絡先、住所などの運営者の情報を掲載することを義務付けています。消費者庁は「個人事業主であっても、住所のすべてを表示する必要がある」と指導しています。
- 不当な勧誘行為の禁止 商品を売るために、価格や支払いの条件などで、うその説明をすることを禁止しています。
- 広告の規制 広告には重要事項を表示することを義務付けています。さらに、虚偽広告や誇大広告も禁止しています。
- 書面の交付義務 特定商取引法では、契約を締結した際に重要事項を記載した書面を交付することを義務付けています。
- 未承諾者に対して電子メール広告の送信を禁止 お客さまの許可を得ていないのに広告メールを送信することを禁じています。ただし、メルマガに付属している広告は禁止されていません。
- 損害賠償額の上限を設定 特定商取引法では、お客さまが中途解約する場合などに、運営者が請求できる損害賠償額に上限を設定しています。
自宅の代わりに私書箱の住所を記載することも認められていません。つまり、自宅が事務所の場合でも、マンションの部屋番号までのすべての住所を表示しなければならないということです。サイト上には、営業活動の拠点の住所を表示しましょう。
2、特定商取引法に違反するとどうなる? 罰則は?
特定商取引法に違反した場合は、業務改善命令、業務停止命令、業務禁止命令などの行政処分が下されます。さらに、違反内容によって「3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する」などの罰則もあります。 特定商取引法違反は、行政処分の営業停止処分だけがクローズアップされがちですが、場合によっては懲役刑や高額罰金刑もあり得ます。社名なども公表されるため、違反しないよう開業時から注意しなければなりません。 特に、広告に関する規制は知っていても、うっかり違反してしまう危険性があります。たとえば、お客さまの了承を得ずにメールで広告を送信してしまった場合は、100万円以下の懲役に処される可能性があります。
3、これをやったら特定商取引法違反
ここでは、わかりやすいように特定商取引法違反となる可能性が高い具体例を紹介します。ネットショップの運営で起こりやすい例をピックアップしていますので、参考にしてください。
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(1)返品方法を明確に記載していない
特定商取引法では、具体的な返品方法を表示しなければならないと定めているので、明確な返品方法が表示されていなければ、摘発される可能性があります。 具体的には、どういう場合に返品できるのか、何日以内に返品すべきなのか、返品する際の送付先、などの情報をわかりやすく表示する必要があります。
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(2)誇大広告
ネットショップで問題になりやすいのが誇大広告です。「飲むだけで簡単に痩せる!」などの事実と異なる広告や、実際のものよりも優れていると勘違いさせてしまう広告は禁止されているので、広告の文言に気をつけなければなりません。ネットショップで問題になりやすいのが誇大広告です。「飲むだけで簡単に痩せる!」などの事実と異なる広告や、実際のものよりも優れていると勘違いさせてしまう広告は禁止されているので、広告の文言に気をつけなければなりません。
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(3)運営者の住所を記載していない
インターネット上のサイトで物品を販売する場合は、運営者の住所を表示しなければならないと規定されています。住所を表示していない、正しい住所を記載していないなどの場合は特定商取引法違反となります。
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(4)お客さまの意思に反して購入させようとする
「詳しくはこちら!」とかいてあるボタンをクリックすると「購入完了」となってしまうような、お客さまの意思に反して購入や契約をさせてしまう行為は禁止されています。購入や契約のためのページにジャンプする際にはきちんと「購入はこちら」などと、お客さまが「購入ボタン」であることがわかるようにしなければなりません。
4、特定商取引法の不安は弁護士に相談すべき理由
特定商取引法について不安がある場合は特定商取引法の取り扱い実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
特定商取引法に違反すると、営業停止命令などネットショップ運営者にとっては致命的な行政処分を受けてしまいます。場合によっては懲役刑や罰金刑に処される可能性も否定できません。
ネットショップを運営する場合は、必ず守らなければならない法律です。しかし、特定の条件化に当てはまれば記載しなくてもよい内容もあり、理解した上で対応することが求められます。
特定商取引法についての情報はインターネット等で確認することができます。しかし、条文や消費者庁のホームページを読んでも、あなたの運営しているネットショップに関係がある部分がどこなのかも把握しづらいのではないでしょうか。また、あなたの業態にあった特定商取引法対策もわかりません。ポータルサイトなどの記述を読んでうのみにしてしまい、違反行為であると知らずに営業活動をしていたら、突如行政処分を受ける可能性もあります。
しかし、弁護士に相談すれば、あなたのやりたいこと、営業内容などに最適な特定商取引法対策をアドバイスできます。ネットショップをオープンするタイミングできちんとしたルール、枠組みを作ってしまえばあとは、それに従って運用するだけなので手間も時間もかかりません。法を順守するショップであることが周知されれば、お客さまの信頼を得ることもできるでしょう。
健全にネットショップを運営して、行政処分などで収入が途絶えないようにするためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。「やるべきこと」と「やってはいけないこと」、さらにはクレーム対策などの助言を受けられるだけでなく、万が一クレーマーに目を付けられてしまった際の削除請求などの相談もすることができるでしょう。
5、まとめ
ネットショップを運営する場合は、特定商取引法を理解し、ルールを守らなければなりません。特定商取引法に違反すると、営業停止などの行政処分を受けるだけでなく懲役刑や罰金刑を受ける可能性もあります。
突然処分を受けて、営業ができなくなると収益が上げられなくなり、事業が行き詰まってしまいます。また、知らない間に違反を重ねていると、懲役や罰金などの重い刑罰に処される可能性もあります。わからないことがある場合や、不安なことがある場合、初めてでどうしたら良いかわからないという場合は、特定商取引法の取り扱い実績豊富な弁護士に適切なアドバイスを求めましょう。
ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスでも、あなたの状況に応じた最適なアドバイスを行います。顧問弁護士サービスも提供しているため、まずはお気軽に相談してください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています