再雇用を拒否・解雇されたらどうすればいい? 法的な対処法を解説
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新しく仕事を探す以外には、定年前に勤めていた企業での再雇用という方法もあります。しかし、なかには再雇用を拒否されたり、解雇されてしまったりするケースがあるようです。
再雇用の拒否や解雇をされたとき、どのように対処したらよいのか、弁護士が解説します。
1、再雇用制度とは
定年後も働き続ける方法として、再雇用は広く利用されています。ではそもそもどういう制度なのでしょうか。詳しくご説明します。
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(1)65歳までの雇用確保は企業の義務
通常、企業の従業員の定年は60歳以上に設定されています。
これは「高年齢者等の雇用の安定に関する法律(高年齢者雇用安定法)」第8条において、定年を60歳未満に設定することが禁止されているためです。
また高齢化社会に対応するため、同法では年金受給が開始される65歳までは企業は雇用機会を確保するよう義務付けており、その方法として以下の3つを提示しています。- ① 定年の65歳までの引き上げ
- ② 希望者全員を対象とした継続雇用制度の導入
- ③ 定年制度の廃止
このいずれの措置もとらず、65歳までの雇用確保をしない場合は違法です。ただし、会社側が違反したとしても罰則はありません。
なお令和3年4月、国は希望に応じて70歳まで雇用することを企業の努力義務としています。 -
(2)再雇用では労働条件が変わることが多い
65歳までの雇用確保の方法として、よく利用されているのが継続雇用制度です。
継続雇用には次の方法があります。● 勤務延長
勤務延長とは、定年に達した従業員を退職させず、そのまま雇用し続ける仕組みです。中小企業で利用されることが多い傾向にあります。
● 再雇用
再雇用は定年でいったん退職とし、再度労働契約を結び直す仕組みです。高年齢者雇用安定法では継続雇用の際の労働条件について細かい定めはないため、再雇用では給与の引き下げや労働時間の短縮など、定年前と比べて待遇が悪くなりがちです。雇用期間も、1年更新の契約が一般的です。 -
(3)再雇用をめぐるトラブル
再雇用をめぐっては、次のようなトラブルが起こることがあります。
- 希望しても再雇用されない
- 同じ仕事をしているのに給与が大幅に引き下げられた
- 65歳前に解雇された・雇い止めになった
再雇用では定年前より待遇がよくなることはあまりありませんが、引き下げの度合いによっては労働者が受ける不利益が大きくなります。
また、理由なく再雇用されなかったり突然解雇されたりした場合には、企業側の対応に問題がある可能性は否定できないでしょう。
2、再雇用されないことは違法?
再雇用を希望していても「定年退職した社員のなかで、自分だけが再雇用してもらえなかった」ということがあるかもしれません。では企業が労働者を選んだり再雇用を拒否したりすることに問題はないのでしょうか?
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(1)希望者は全員再雇用が原則
かつては会社が再雇用者を選別できたため、希望したとしても再雇用されないことが珍しくありませんでした。しかし、法改正により、平成25年以降は原則として希望者全員の再雇用が義務となりました。
高年齢者雇用安定法第9条は、従業員が希望した場合、原則として全員を再雇用しなければいけないと定めています。つまり、再雇用の希望があったのに、会社がそれを拒否することは違法です。
なお再雇用先は必ずしも定年前と同じ会社、同じ職場でなければいけないという決まりはなく、子会社や別部署でも問題はありません。正社員ではなく、パートや嘱託社員での雇用であってもよいとされています。
一般的には定年前に従業員に退職後の勤務について聞き取りなどが行われるでしょう。そのうえで、65歳までの雇用方法について検討がなされます。 -
(2)再雇用拒否が認められるケースがある
法律上、企業は希望者を全員再雇用しなければいけませんが、例外があります。
厚労省の「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」では、次のようなケースにおいて、継続雇用しないことを認めています。- 心身の故障で業務に耐えられない
- 勤務状況が著しく不良で従業員としての職責を果たせないなど、就業規則の解雇・退職事由に該当する
つまり無断欠勤が多かったり、病気やけがで勤務が難しかったりする労働者に対して、会社は再雇用を拒否できるのです。
ただし、一般的な解雇と同様、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がない場合は違法となりえます。あきらめずに再雇用を拒否した理由を確認してください。心当たりがない場合は、弁護士に相談することもひとつの手です。
3、再雇用後の解雇・雇い止めは違法?
せっかく定年後に再雇用されたとしても、1年間の契約期間中に解雇や雇い止めになってしまうこともあります。ではこの企業の対応には問題はないのでしょうか?
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(1)解雇は「やむを得ない」場合以外は違法
契約期間中に再雇用者を解雇することは、原則として認められません。
これは再雇用に限らず、一般的な有期契約社員と同様です。
民法第628条では、有期雇用契約について次のように定めています。当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う
また労働契約法第17条でも次のように規定しています。
使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない
このように「やむを得ない」場合以外は、契約期間中の解雇は違法です。
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(2)原則65歳までは契約更新しなければいけない
高年齢者雇用安定法は65歳までの安定した雇用を確保することを目的としています。
また従業員も1年の雇用契約であったとしても、65歳までは契約更新されるものと期待しているでしょう。
そのため従業員が更新を希望しているにもかかわらず、会社が理由なく一方的に雇い止めをすることは認められません。 -
(3)解雇・雇い止めが可能なケースもある
契約期間中の解雇は基本的にできませんが、上記のように「やむを得ない事由がある」場合には、違法ではありません。
「やむを得ない事由」とは、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性に加えて、解雇を免れないほどの特別な理由があるケースとされており、かなり厳格です。
違法かどうかは個別に判断されますが、たとえば天災により経営が悪化して人員削減の必要がある場合や、従業員が病気で働けなくなった場合などがこれに当たるとみられます。
また雇い止めについても再雇用を拒否する場合と同様に、就業規則の解雇・退職事由に該当した場合には、契約を更新しないことは違法ではありません。
ただし、すでに1年以上勤務している場合には、契約満了の30日前までの通告が必要です。30日前までに通告がない場合は、不当解雇を争える可能性があります。
4、解雇・雇い止め、再雇用拒否への法的対処法
会社の一方的な都合や身に覚えのない理由での解雇や雇い止め、再雇用拒否にあった場合、そのまま泣き寝入りせず、次のような方法で対処しましょう。
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(1)証拠の収集
会社に解雇や雇い止め、再雇用拒否の撤回を求める場合、まずはそれが違法であることを証明するために証拠が必要です。
たとえば雇用契約書、就業規則などの契約条件や社内規定がわかるもの、勤務日報など勤務状況がわかるもの、解雇や雇い止めをめぐる上司とのやりとりメールや録音データなどを集めましょう。 -
(2)会社と直接交渉
解雇や雇い止めに納得できない場合、会社と直接交渉して撤回を求めましょう。
合意できないときは、会社が提示する書類などにサインをすべきではありません。そもそも、解雇などの明確な理由の説明がなかったり、身に覚えのないことを指摘されたりした場合には、違法な対応の可能性があります。
会社が交渉に応じてくれない場合には、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。 -
(3)労働基準監督署に相談
解雇・雇い止めに納得ができない場合、労働基準監督署に相談するという方法があります。
相談内容によっては、労基署が会社との交渉のサポートや解決のアドバイスをしてくれます。また、違法な対応の可能性がある場合は、会社を指導してくれることもあります。
ただし労基署はあなたの代理人として対応してくれるわけではないことを知っておきましょう。あなたの代わりに会社に対して交渉を行えるのは、弁護士に限られます。 -
(4)弁護士に相談
会社との直接交渉に不安がある場合や交渉が決裂した場合、弁護士に対応を依頼すれば、内容に応じて会社との交渉や裁判など、あらゆる方法で解決をはかります。
会社との交渉の代行も可能なため、従業員が直接会社と話し合いをする必要はありません。従業員では会社が取り合ってくれなかった場合でも、弁護士であれば応じるケースは多々あるのです。
解雇や雇い止め以外に賃金未払いなどの問題がある場合には、それらもまとめて対応してもらえます。
5、まとめ
老後資金への不安から、65歳まではしっかりと働き稼ぎたいと思っている方は多いでしょう。ですが再雇用拒否や解雇・雇い止めになっては、その目的は果たせません。再雇用という立場の弱さから受け入れてしまう方もいるかもしれませんが、それでは労働者だけが大きな不利益を被ります。すぐにベリーベスト法律事務所 札幌オフィスにご相談ください。
弁護士は詳細に経緯をお聞きし、会社にかけあったり裁判を起こしたりするなどすぐに対応します。一人で悩まず、まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています