逮捕から釈放までの5つのケースと、保釈や仮釈放などの違いについて
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家族や知人を逮捕されたと連絡が入れば、本人をどうすれば釈放してもらえるのか、いつまで本人と連絡が取れないのかなど、不安に思うことがたくさんあるでしょう。
家族や知人が逮捕されたら、何よりも大切なのは逮捕された本人が少しでも早く釈放されることです。少しでも早い釈放を目指すことは、何らかの容疑をかけられ、逮捕された事実を多くの人に知られることを防ぎ、周囲への影響を最小限にとどめることにつながります。
そこで今回は、逮捕された被疑者が釈放されるケースや釈放のタイミングについて解説します。
1、何よりも重要なのは早期釈放
警察に逮捕されたら、被疑者本人が早く釈放されることが何よりも大切だとお考えください。
なぜなら、なるべく早く釈放された方が被疑者本人の社会復帰がスムーズにいきやすいからです。
実は、逮捕後の被疑者の身体拘束の制限時間は72時間で、72時間以内に釈放されれば被疑者は家に帰れます。
ところが、72時間以内に釈放されるよう弁護士が働きかけなければ原則として10日間、勾留延長が認められた場合は20日(最大25日間)勾留 され、その期間身体拘束を受ける可能性が高いです。
勾留が決定して拘束されてしまうと、その間は仕事を休むことになります。しかも、接見禁止を裁判所が決定した場合は、職場はおろか家族への連絡さえできずに無断欠勤をせざるを得ない状況になりかねません。
長期間の無断欠勤をしたとなれば、勤務先が心配して本人の行方を探し始めることもあるでしょう。職場に逮捕の事実が知られてしまうと、最悪の場合は解雇されてしまうかもしれません。また、場合によっては無断欠勤の事実だけで解雇される可能性もあります。
原則では、勾留期間中は接見禁止にされません。ところが、証拠隠滅を図る可能性が高いと判断された場合や共犯者の存在が疑われている場合 などには接見禁止とされてしまうことがあります。
なお、逮捕されてから勾留が決定されるまでの72時間は接見禁止です。
つまり、弁護士による釈放に向けた活動だけが頼みの綱ということになります。
被疑者本人のスムーズな社会復帰のためにも、逮捕の事実を知ったら一刻も早く弁護士へ相談しましょう。
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(1)似ているけれど意味の違う用語
ここで、先ほどから出ている釈放や勾留などの専門用語について解説します。
・釈放とは
釈放(しゃくほう)とは、身柄を拘束されている人の拘束を解いて自由の身にすることです。
・保釈とは
保釈(ほしゃく)とは、起訴された後の勾留期間中に保釈金を裁判所に納めることで一時的に釈放されることです。
被疑者の住所や氏名が不明で逃亡を図ることが容易な場合や証拠隠滅を図る可能性の高い場合など、保釈を認められないケースも多くあります。
・仮釈放とは
仮釈放(かりしゃくほう)とは、判決を受けて刑期満了前に釈放されることです。
つまり、服役していた容疑者が刑期満了前に出所し、刑期満了までは保護観察を受けながら生活することを指します。
・勾留とは
勾留(勾留とは)、刑事事件において判決を受ける前に身柄を拘束されることです。勾留には、被疑者に対するものと被告人に対するものがあります。
本記事で取り上げているのは、被疑者に対する勾留です。被疑者に対する勾留は、逮捕の後に引き続き身柄を拘束することで、適正な捜査活動を行うためになされます 。
勾留は検察官によって請求され、裁判官によって決定されます。
2、釈放される5つのケースとタイミング
逮捕後に被疑者が釈放されるのはどのような場合でしょうか? ここからは、被疑者が釈放される5つのケースと具体的なタイミングをご紹介しましょう。
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(1)微罪処分による釈放
微罪処分(びざいしょぶん)とは、事件が検察に送られることなく釈放となる処分を指します。
警察が逮捕をした場合、警察は逮捕から48時間以内に被疑者を釈放するか勾留請求するかを決めなくてはいけません。もし警察が勾留請求は不要と判断した場合、事件は検察に送られることなく被疑者も釈放となります。
このように、被疑者を釈放した後に書類のみを検察に送ることを世間では書類送検と呼びます。(書類送検は法律専門用語ではない)実際に逮捕をされて警察による捜査がされた場合、基本的に書類送検をまぬがれることはできません。(全件送致主義)
ところが、あまりに軽微(けいび)な犯罪の場合は書類送検をまぬがれることのできるケースもあります。それが、微罪処分です。
微罪処分となる軽微な犯罪には、- 窃盗
- 暴行
- 詐欺
- 賭博
などが含まれます。
微罪処分となるには初犯であることがポイントで、前科や前歴がある場合に微罪処分とされるケースは非常にまれです。
微罪処分となれば起訴もされないため、前科にはなりません。ただし、捜査の履歴は前歴として警察や検察庁のデータベースに残ります。
・微罪処分による釈放のタイミング
微罪処分の場合は、逮捕から48時間以内に釈放されます。法律上、警察は被疑者を逮捕してから48時間以内に身柄の送検を行わなければいけないと決まっているためです。被疑者の身柄を検察に送らないなら、警察は48時間以内に釈放するしかありません。
中には、被害者との示談が成立することによって微罪処分となり釈放されるケースもあります。
なお、釈放されるときに身元引受人がいることが絶対条件です。身元引受人は、法律により「親権者、雇い主そのほか容疑者を監督する地位にある者、またはこれらの者に代わるべき者」と定められています。ですので、被疑者の友人や立場の同等な知人などは身元引受人として認められない確率が高いです。 -
(2)不起訴処分による釈放
不起訴処分(ふきそしょぶん)とは、検察官が「起訴をしない」と判断することです。
検察官が不起訴処分と判断するケースには、- 罪とはならない(正当防衛など)
- 証拠がない、証拠が不十分
- 被疑者の特別な事情による検察官の配慮
などがあります。
不起訴処分による釈放でも、捜査の履歴は前歴として警察や検察庁、本籍のある市区町村のデータベースに残ります。
・不起訴処分による釈放のタイミング
検察官の判断により不起訴処分あるいは処分保留で釈放となった場合、その時点で被疑者は釈放されます。また、被害者との示談が成立したタイミングで釈放されるケースも多いです。
警察から検察へ身柄が送致された後、勾留請求された場合は内乱等の例外的な犯罪を除き最大で20日間の勾留期間が設けられます。検察官は、この期間内に捜査結果を受けて起訴するかどうかを決めます。 -
(3)略式起訴による釈放
略式起訴(りゃくしききそ)とは、書面による審理のみが行われる起訴のことです。罰金刑が制定されている場合に限り、検察官により請求されます。
通常は、起訴されれば正式に裁判が開かれます。一方、略式起訴は正式な裁判を開かれることなく罰金を払って終了となります。罰金額は、起訴状に添付する検察官の意見書に記載された金額どおりになることが多いようです。
略式起訴は名前に略式とは付いているものの、有罪判決で罰金刑を受けることです。よって、略式起訴となった場合は前科が残ります。
この手続は、裁判手続によらずに被疑者が有罪となることが前提となり、上記したように被疑者に前科もつくことになります。そのため、この手続を行うためには被疑者の同意が必要になります。
・略式起訴による釈放のタイミング
略式起訴になった場合、略式起訴の請求をされた時点で被疑者は釈放されます。 -
(4)保釈
先ほどご説明したように、保釈(ほしゃく)とは起訴された後の勾留期間中に保釈金を裁判所に納めることで一時的に釈放されることです。
保釈は被告人に対して認められている制度のため、起訴前の段階では認められません(被疑者の場合は準抗告、勾留取消しといった別の手段を講じることが考えられます。)。検察官により起訴されると被疑者ではなく被告人となるため、保釈請求を行うことができるようになります。
保釈請求できるのは、被告人本人や弁護人、親族などの保釈請求権者です。
保釈請求権者が保釈を請求すると、裁判所により検察官の意見が聴取されます。裁判官が当該被告人について保釈するのを相当と判断した場合、保証金や居住地などの条件を決めた後、裁判所によって保釈が決定されます。
保釈の保証金(保釈金)は、被告人が逃亡を図ったり裁判の期日に出頭しなかったりした場合には没収されます。そのようなことがなく、無事に刑事裁判が終了すれば返還されるので安心してください。
多くの場合、保釈金には100万円単位のお金が必要になります。この金額の準備が難しい場合には、10分の1程度の実質的な出費で済む援助制度もありますので、弁護人に相談してみてください。
・保釈のタイミング
保釈の決定後、保釈金を納付すれば数時間後には被告人が解放されます。
なお、保釈を請求した後は保釈の決定までに3日ほど要するケースが多いです。 -
(5)執行猶予つき判決による釈放
執行猶予(しっこうゆうよ)とは、有罪判決ではあるものの一定の猶予期間を用意される制度のことです。
一般的には、有罪となると実刑判決か執行猶予つき判決のどちらかを言い渡されます。
実刑判決を言い渡された場合は、刑務所に服役するなどの刑罰を執行されることになります。つまり、執行猶予つき判決を言い渡されない限りは、一度も釈放されることのないまま服役するということです。
仮に保釈中だったとしても、実刑判決が言い渡された時点で身柄を拘束されます。
一方、執行猶予つき判決を言い渡された場合は、執行猶予期間中に別の刑事事件を起こさなければ刑罰を執行されません。要するに、有罪ではあるが刑務所には入らないということです。
ただし、もし執行猶予期間中に別の刑事事件を起こし、有罪判決となれば、前に確定していた事件の執行猶予は取り消されます。さらに、別の事件で言い渡される刑罰と執行猶予つき判決が出た事件の刑罰を合わせて受けることになります。(ただし、刑の重さによっては再度の執行猶予が付される可能性もあります。)
たとえば、執行猶予つき判決で「懲役3年執行猶予2年」と言い渡された場合、「新たに起こした事件で言い渡される懲役期間+3年」が実際の服役期間となるのです。
・執行猶予つき判決による釈放のタイミング
釈放のタイミングは、執行猶予つき判決が出たときです。釈放された後は、執行猶予期間が終わるまで保護観察がつく場合もありますが、逮捕される前と同じ生活を送れます。
3、一刻も早く弁護士へ相談しましょう
逮捕されてから最短で釈放されるためには、弁護士の力は必要不可欠です。身近な人が逮捕されてしまったら、すぐに弁護士へ相談してください。
検察への送致が決定されるまでの48時間、もしくは勾留が決定されるまでの72時間がカギとなります。また、この72時間は接見禁止となり弁護士の面会しか許されません。この72時間以内に弁護活動を始めるかどうかは、被疑者本人の人生にかかわる大きな分かれ道となります。弁護士の活動による一日も早い釈放を目指しましょう。
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