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女装自体が犯罪になることはある? 違法行為による処罰や逮捕事例

2023年01月31日
  • その他
  • 女装
  • 犯罪
女装自体が犯罪になることはある? 違法行為による処罰や逮捕事例

札幌市では平成29年から「性的マイノリティーに係るパートナーシップの宣誓制度」を開始しています。いわゆる「LGBTQ」の方々の性的指向・性自認の自由を受け止めるための取り組みであり、札幌市長に対して、お互いが日常生活において相互に協力しあう関係であることを宣誓して、宣誓書の写しなどが交付される制度です。このような取り組みからも、札幌市は性的マイノリティーについて寛容かつ積極的な姿勢を示している自治体であるといえます。

LGBTQの「T」とは、身体的な性別と性別に関するアイデンティティー(性自認)が異なる、トランスジェンダーの方々のことを指します。身体的には男性であるが性自認は女性である「トランスジェンダー女性」や、身体も性自認も男性であるが女性の服装を着る「異性装者(トランスヴェスタイト)」の方は、日ごろから「女装」して外出することがあるでしょう。

しかし、日本では、トランスジェンダーや異性装に関する理解が進んでいないこともあり、女装して外出すると、他の人々から奇異の目で見られたり批判されたりする場合があります。また、過度の露出や女子トイレ・女子更衣室への立ち入りは、犯罪に問われる可能性があるのです。

本コラムでは、「女装すること自体が犯罪になることはあるのか」「女装したうえでどのような行為をすると犯罪として扱われるのか」という問題について、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。

1、女装して外を出歩くのは犯罪? 女子トイレや女子更衣室の利用は?

まず、女装をすること自体が犯罪になるのかどうか、女子トイレや女子更衣室などの「女性専用スペース」に立ち入る行為は犯罪になるのかについて、解説します。

  1. (1)「女装」を罰する法律は存在しない

    「女装」とは、身体的には男性である方が、女性の服などを着て女性の姿になる行為です。
    反対に、身体的には女性である方が、男性の服などを着て男性の姿になる行為は「男装」といいます。
    日本の法律では、女装・男装という行為そのものについては、犯罪に問われません

    法律で禁止されているわけではないので、自宅で個人的な趣味として楽しむのはもちろん、「男性が女装している」と周囲の人に思われるような姿で外を出歩くことも、法律的には問題がないのです。

  2. (2)過度の露出や陰部の露出は犯罪になる

    上述した通り、単に女装しているだけの行為は犯罪にあたりません。
    しかし、過度に露出した服装をすることは「軽犯罪法」の違反になることがあります
    軽犯罪法とは、軽微な秩序違反行為を罰するための法律です。
    同法第1条には規制対象となる33類型の行為が明記されており、第20号として「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」を罰する旨が明記されています。
    軽犯罪法の刑罰は「拘留または科料」と軽微なものですが、身柄を拘束されたり、金銭を支払うことになるのです。

    また、女装しているかどうかに関係なく、公共の場で陰部を露出させる行為は刑法第174条の「公然わいせつ罪」の処罰対象です
    公然わいせつ罪の法定刑は6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料です。
    刑務所に収監されてしまうおそれもあるため、過度な露出行為はくれぐれも控えるようにしましょう。

  3. (3)女子トイレや女子更衣室、女性風呂に立ち入ると犯罪になる

    女装して外出した場合、「トイレ・更衣室・浴場は女性用のものを使用してもよいのか」という点に迷う方もいらっしゃるかもしれません。
    性自認が女性である方は、「自分は女性であるから女性用の施設を使用したい」と望まれるかもしれません。
    また、女装姿で男性用のトイレなどを使用すると、周囲の男性を驚かせてしまう可能性があるでしょう。
    しかし、身体的には男性である方が女子トイレ・女子更衣室・女性風呂に立ち入る行為は、軽犯罪法第1条23号の「のぞき行為」に該当して、罪に問われるおそれがあるのです

    また、トイレや更衣室などは、「男性は男性用を使用して、女性は女性用を使用する」ことを想定して設けられています。
    そのため、女性用の場所に身体的には男性である方が立ち入ると、管理者の意思に反した「侵入」ととらえられて、刑法第130条の「建造物侵入罪」が成立する可能性があるのです
    「建造物侵入罪」は、管理者の意思に反して他人が管理する建物や施設に侵入した者を罰するための犯罪です。
    法定刑は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。

    上述した通り、現在の日本では、公衆のトイレ・更衣室・風呂などでは、性自認よりも身体的な性別を優先した扱いがされます。
    身体的には男性である方が女性用の場所に立ち入れば犯罪が成立してしまうので、トラブルを避けるために、多目的トイレや男女の区別がない個室スペースなどを利用するようにしましょう。

2、女装をした男性が逮捕された実例

女装そのものが犯罪になるわけではありませんが、女性用のトイレや浴場などに立ち入りした場合には、逮捕される可能性があります。

以下では、女装した男性が逮捕された実際の事例を紹介します。

  1. (1)女装して女性風呂に立ち入って逮捕された事例

    令和4年3月、入浴施設でかつら・スカートを着用した女装姿の男が女性風呂の脱衣所に侵入して現行犯逮捕されました。
    被疑事実は建造物侵入罪ですが、スマートフォンを携帯していたことから、盗撮目的だった可能性が高いと判断されています。

    札幌市でも、平成30年1月に女装姿で女性風呂に侵入した男が現行犯逮捕される事例が起きています。
    この事件で逮捕された男は、事件の8年前にも東京都内で同様の事件を起こした経緯がありました。この事例については、必ずしも盗撮目的であるとは限定できず、単純に女装を楽しんでいただけだった可能性も否定できなかったそうです。
    しかし、この事例で示されている通り、のぞきなどのわいせつ目的ではなくても、女装して女性風呂に入れば犯罪になってしまう可能性があるのです

  2. (2)女装して女子トイレに立ち入り逮捕された事例

    平成25年4月、女装姿でショッピングセンターの女子トイレに立ち入った男が建造物侵入罪の容疑で現行犯逮捕されました。
    目撃者が「不審者が女子トイレに入った」と店員に伝えて警備員が取り押さえたという経緯です。
    逮捕された男は「女装で男子トイレを使うと怪しまれると思った」と主張して、事件前にも痴漢に間違えられないように女装姿で電車に乗っていたとも供述していました。
    このような主張を踏まえると、のぞきや盗撮などの目的はなく、単純に女装を楽しむ目的であった可能性が高いでしょう

  3. (3)女装して陰部を露出させ逮捕された事例

    平成27年5月、女装姿で陰部を露出させた男が、公然わいせつ罪の容疑で現行犯逮捕されました。
    下着を身に着けずにミニスカートを穿いていたために、陰部が露出してしまったのです。
    いわゆる露出狂のように故意に陰部を露出させて他人に見せつけたのではなく、身体への密着度が高いミニスカートを穿いていたため、歩くと裾が上がってしまい、自然と陰部が露出する状況でした。

    悪意なく女装していたとしても、男性の身体で女性用の衣服を着ていると、露出など、想定外の罪を犯してしまうこともあるようです
    しかし、悪意がなかったからといって容疑を避けられるわけではありません。
    逮捕されてしまうと、場合によっては、世間に実名で報道されてしまい、女装していることが周囲に知れ渡ったり、日常生活や仕事に悪影響を及ぼしたりするおそれがある点に、注意してください。

3、警察に逮捕されるとどうなる? 刑事手続きの流れ

以下では、警察に逮捕された後の、刑事手続きの流れを解説します。

  1. (1)警察署の留置場に収容されて取り調べを受ける

    警察に逮捕されると、警察署に連行されたのち、警察署の留置場において身柄が拘束されます。
    自由な行動は強く制限されるため、自宅へ帰ることも、仕事や学校に行くことも、自分から直接家族などに連絡を取ることも許されなくなるのです。

    逮捕後の警察の持ち時間は48時間以内です。
    この期間は、警察による取り調べなどの捜査が続きます。

  2. (2)検察官へと送致される

    逮捕後の捜査を終えた警察は、逮捕した被疑者の身柄を検察官へと引き継ぎます。
    この手続きを「送致」といいますが、ニュースなどでは「送検」という用語が使われるのが一般的です。
    送致を受理した検察官も、事実の確認を含めた取り調べを行います。
    検察官の持ち時間は、24時間以内です。

  3. (3)勾留による身柄拘束を受ける

    被疑者を取り調べた検察官は、捜査を進行する関係から、被疑者の身柄をこのまま拘束するべきか、それとも釈放するべきかを制限時間内に判断します。
    検察官が「身柄拘束を続けるべき」と判断すると、勾留が請求され、裁判官がこれを許可すると原則10日間の勾留が開始します。
    勾留中の被疑者の身柄は警察へと戻され、検察官による指揮のもとで警察が捜査を担当しますが、10日間で捜査が遂げられなかった場合はさらに10日以内の延長が認められています。

    つまり、勾留は原則10日間、最大で20日間となります。
    逮捕から数えると合計で最大23日間も社会から隔離されてしまうことになるため、家庭・仕事・学校といった社会生活への悪影響は避けられないでしょう

  4. (4)検察官が起訴・不起訴を判断する

    勾留が満期を迎える日までに、検察官は起訴・不起訴を判断します。
    起訴の場合は刑事裁判へと移行し、不起訴になれば即日で釈放されます。

    起訴された被疑者は「被告人」という立場になり、刑事裁判が開かれている間は被告人としての勾留が続きます。
    この段階からは一時的な身柄拘束の解除である「保釈」の請求が可能ですが、保釈許可が下りなかった場合には、再度保釈請求をして保釈許可が下りない限り、刑事裁判が終わるまで釈放されません。

  5. (5)刑事裁判が開かれる

    起訴からおよそ1カ月後に、初回の刑事裁判が開かれます。
    公訴事実に争いのない事件などは1回で結審となることも多く、結審から約2、3週間後に判決言い渡しがなされます。
    複数回の期日を設ける場合には、初回の公判期日以後、おおむね1カ月に一度のペースで刑事裁判が開かれ、数回の審理を経たのちに、裁判官が有罪・無罪の判断を下します。

4、女装で逮捕されたとき、弁護士に相談するべき理由

女装していたことで犯罪の容疑をかけられて逮捕されてしまった場合は、直ちに弁護士に相談してください。

  1. (1)素早い接見で取り調べに際するアドバイスが得られる

    身柄拘束を長引かせないためには、最大20日にも及ぶ勾留を回避することが必要になります。
    勾留の可否は逮捕後わずか72時間以内には決まってしまうので、逮捕直後の素早い面会や対策が必要になります。
    しかし、この期間はたとえ家族でも面会が許されないので、「なぜ逮捕されたのか」「どういった対策が必要なのか」もわからず、適切に対応することは困難でしょう。

    弁護士に依頼すれば、逮捕直後の72時間以内でも捜査に優先して接見することができます
    弁護士との接見を通じて状況を詳しく伝えて、どのような供述をするべきなのかなどの取り調べに際するアドバイスを得ることで、不利な状況に陥る事態を回避しやすくなります。

  2. (2)早期釈放に向けた弁護活動が期待できる

    身柄拘束の期間が長引いてしまうと、社会的にさまざまな不利益を被ってしまいます。
    そのため、早期釈放を目指しましょう。
    弁護士に依頼すれば、身元がはっきりしていて逃亡や証拠隠滅の危険がないことを主張して勾留を回避する、すでに決定した勾留について不服申し立ての手続きを取る、などの対策を採ることができます

    不服申し立ては一般の方でも申請できますが、そもそも勾留に対する不服申し立てが認められにくいことや、「勾留を取り消すべき理由を法的な角度から客観的に説明する必要があることを踏まえると、不服申し立ての対応は弁護士にお任せいただく方が安心です。

  3. (3)悪意のある犯罪ではない旨を主張する弁護活動が期待できる

    性自認が女性であることを理由として、トイレ・更衣室・風呂などのように男女の区別がある場所で「どちらを使用すべきなのか?」の判断に迷った末にとった行動が結果的に犯罪となってしまった方と、のぞきなどのわいせつ目的で罪を犯した人と同等に扱われることは、あってはなりません。
    しかし、現在の日本の捜査機関の対応をみると、性的な問題に対する理解や配慮が十分にできていない印象があります。
    そのため、逮捕された本人が犯罪目的ではなかったと主張しても、厳しい追及を受けてしまい、刑罰を科せられる可能性が高いのです。

    「悪意のある目的はなかったこと」を客観的に主張するためには、法律の専門家である弁護士のサポートが必須です
    性自認が女性であることや、日常的に女装せざるを得なかったことなどについて、医学的な要素も含むさまざまな方法によって主張・立証することで、有利な処分を得る可能性を高められます。

5、まとめ

女装すること自体は、犯罪ではありません。
しかし、女装したうえで女性用スペースに立ち入る・陰部を露出するなどの行為をすると、犯罪に問われて逮捕されるおそれがあります。
もし犯罪の容疑をかけられてしまった場合は、直ちに弁護士に連絡してください。

札幌市や近隣市町村にご在住である場合は、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスにご連絡ください
刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、起訴や刑罰を回避するためのサポートを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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