ストーカー行為で慰謝料請求をされたら? 起訴を回避するためにできること
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自分がよかれと思ってした行為が、相手にとっては嫌な行為だったというすれ違いも起こります。場合によっては、行き過ぎた行為がストーカー規制法の対象となることもあります。実際に、平成29年1月には、チャットアプリの「LINE(ライン)」を用いてわいせつな音声やメッセージを連続で送信した容疑で、札幌市の男性が逮捕されています。
男女の恋愛関係においては特にこの傾向が顕著ですが、逮捕されてしまってから、「誤解だ」「行き違いだ」と弁解しても通用しません。もし、ストーカー行為で慰謝料請求をされた場合や逮捕されてしまった場合にどのように対応すべきなのでしょうか。札幌オフィスの弁護士が回答します。
1、ストーカー行為と示談の重要性
ストーカー行為では被害者との示談が非常に重要だと言われています。それはどうしてなのでしょうか。
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(1)ストーカー規制法の改正と被害者の告訴意思
かつて、ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)は、被害者が告訴しなければ取り締まりを受けない親告罪でした。しかし、平成29年1月3日からの改正法が施行され、非親告罪となっています。すなわち、被害者からの告訴がなくても検察官が起訴できるようになりました。
しかし、ストーカー事件に限らず、被害者が存在する刑事事件の多くが、被害者のプライバシーや被害状況などと密接な関わりを有する性質があります。そのため、起訴するかどうかや裁判として公開の法廷で事件を取り扱ってよいかどうかは、現在でも被害者側の処罰感情が尊重される法運用となっているのです。
つまり、ストーカー行為で起訴されるかどうかは、被害者の告訴意思の有無が大きく影響すると言えます。被害者との示談が重要なのは、このためです。 -
(2)ストーカー行為と示談
示談とは、被害者と加害者(代理人を含む)が話し合いをすることで、裁判によらず争いを解決することです。
もちろん、警察に告訴されれば事件化する可能性もある以上、子ども同士のけんかのように誤れば終わることは難しいものです。相手が受けた被害を顧みて、示談金として支払う必要があるでしょう。
示談金とは、具体的には以下のものが含まれます。- 相手の精神的苦痛に対する慰謝料
- 汚損したものなどの弁償金
- 相手を傷つけたなら治療費
被害者の損害のすべてを金銭に換算して、「これなら争いを治めてもよい」とお互いが合意した賠償額を「示談金」と呼ばれています。
加害者は被害者に対して示談金を支払い、被害者は加害者に対して「罪を許す」「処罰は求めない」などの「宥恕(ゆうじょ)」の意志を示すことで、刑事事件の示談は成立します。ストーカー事件では、そのほかに接近禁止などの約束を取り交わすこともあるでしょう。 -
(3)示談金の相場
お金を支払うことになったとき、示談金の相場が気になるかもしれません。しかし、前段で解説したとおり、示談金とはすべての損害を金銭に換算して算出するものです。よって、ストーカー行為の具体的な態様や被害状況によっても金額が異なります。
たとえば、相手にケガを負わせていたら治療費が掛かりますし、私物を大量に盗んでいたら弁償の費用もそれだけ高額となるでしょう。そのため、一律に金額を出せるものではありません。
なお、ストーカー規制法に定められた罰則のうち、罰金刑に処されることになれば、それぞれ判決が下った金額を国に支払うことになります。具体的には、もし禁止命令が出されていたのにストーカー行為などをしていたことで有罪となれば、200万円以下の罰金を支払わなければならないのです。
しかし、罰金刑による罰金はあくまでも国に支払うお金です。そのほかに損害賠償請求をされれば、別途応じなければなりません。そのような意味でも、逮捕などに至る前に示談を行い、事件を収束させたほうがあなたの将来にとって有効なものとなるでしょう。
2、ストーカー行為の例
恋愛感情や好意のもつれからストーカー行為に至るケースが少なくありません。そこで警察などから連絡が来て、いきなり「それはストーカー行為だ」といわれても納得できないという場合もあるでしょう。
そこで、ストーカー規制法によれば、具体的にどのような行為が規制されているのか、確認しておきしょう。
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(1)つきまとい等(ストーカー規制法第2条1項)
ストーカー規制法で規制しようとする「つきまとい等」の行為は、次のとおりに定められています。
●行為の目的
特定の相手に対し、恋愛や好意の情が満たされなかったことに対する怨みを満たす目的
●行為の対象
恋愛や好意を満たしてくれなかった相手やその配偶者、親族や相手など密接な関係を有する者
●具体的な行為- つきまとい、待ち伏せ、立ちふさがり、見張り、押し掛け、うろつき行為
- 行動の監視を匂わせる行為
- 会ったり付き合ったりすることを要求する行為
- 著しく粗野、乱暴な言動
- 無言電話、連続電話、連続でのFAXや電子メールの送信
- 汚物や動物の死体などを送りつける行為
- 名誉侵害行為
- 性的な嫌がらせとみなされる行為
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(2)ストーカー行為(ストーカー規制法第2条3項)
次に「ストーカー行為」の定義は、「同一の者に対し、つきまとい等を反復してすること」と定めています。
つまり、(1)で解説したつきまとい等の行為を反復して行うことが、ストーカー行為とされているわけです。
3、ストーカー規制法による警告と罰則
ストーカー規制法の対象となる行為があった場合、加害者への警告や禁止命令、罰則によって被害者が保護されることになります。
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(1)警告と禁止命令
警視総監、道府県警察本部長、警察署長(警察本部長等)は、被害者などから警告の申出を受けた場合、さらに反復してつきまとい等の行為をしないように加害者へ警告することができます(ストーカー規制法第4条)。
また、つきまとい等の行為に対して禁止命令を出すこともできます(ストーカー規制法第5条)。
禁止命令の内容は、つきまとい等の行為を反復して行ってはならないこと及び反復しての行為を防止するために必要な事項です。 -
(2)罰則
以下のとおり、懲役刑または罰金刑が科されます。
●ストーカー行為をした者(ストーカー規制法第18条)
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
●禁止命令等に違反してストーカー行為をした者(ストーカー規制法第19条)
2年以下の懲役又は200万円以下の罰金
(禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、ストーカー行為をした者も同様)
●そのほかの禁止命令等に違反した者(ストーカー規制法第20条)
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
4、ストーカー行為で起訴されないために
起訴されて有罪となり、刑罰を受けると前科がつきます。前科がつくと、一定の公的な職業に就けなくなることがあります。また、実名報道をされれば、就職活動に不利となったり、あるいは結婚の際に調べられて破談となったりする可能性は否定できないでしょう。
起訴されることを防ぐためには、すでに解説したように、被害者との示談交渉が重要となります。
しかし、加害者本人や加害者の家族が直接示談交渉に臨もうとすることは、被害者の感情を逆なでするようなものです。特に禁止命令が出ている状況下であれば、禁止命令に違反したとして逮捕されてしまう可能性が高まります。
法律と交渉の専門家である弁護士に一任しましょう。あなただけではなく相手方にとっても安心して交渉を行える環境を整えられるはずです。
万が一、相手が法外な額を請求した際は、弁護士であれば交渉したり、その旨を警察や検察で伝えたりすることで、情状を酌量してもらえるよう働きかけることも可能です。万が一成立しなくとも、示談すること自体は無意味ではありません。ひとりで抱え込まず、弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
ストーカー行為をしてしまった場合、被害者との示談の際や逮捕された際、裁判となった際にも、弁護士のサポートは有用です。
たとえあなた自身がつきまとい等やストーカー行為はしていないと思っていたとしても、すでに相手は、あなたと顔を合わせて話ができる状態ではないことを理解しましょう。「話せばわかる」という段階は過ぎてしまったのです。
ストーカー行為として相手方に慰謝料を請求された場合、なるべく速やかに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士があなたの代理となって、告訴や裁判を回避することを目的に交渉を行います。
こじれた紛争をできるだけ穏当に解決したいときは、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスで相談してください。ストーカー事件の解決実績が豊富な弁護士が、誠心誠意対応します。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています