未成年の子どもがストーカーで逮捕! 警告や禁止命令、示談との関係について
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平成29年1月、元交際相手の女性にLINEのメッセージを連続送信したとし、ストーカー規制法違反の容疑で、北海道札幌市の男が逮捕されました。同月のストーカー規制法改正では、SNSを利用したつきまとい等が規制対象として追加されており、改正後全国初の逮捕者となったと報道されました。
警視庁によれば、令和5年のストーカー行為者の年齢は20代がもっとも多く、20歳未満は約2.7%と低い割合です。しかし、未成年のインターネットとの関わりが強まる昨今、無知や精神的な未熟さを含め、加害者になるリスクを多分にはらんでいます。
この記事では、未成年の子どもが加害者になったケースを想定し、ストーカーの概要や逮捕、示談との関係などを、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。
1、規制対象となるストーカー行為
ストーカーとは、特定の人やその家族に対して、「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する」ことを目的とし、つきまとい等を行うことです。
これらの定義は、悪質なストーカーから被害者を守るために作られた、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」で定められています。
本法律は「ストーカー規制法」と呼ばれ、「つきまとい等」と「ストーカー行為」を規制しているほか、被害者の救護措置、罰則などを定めています。たとえば、ストーカー行為をした者に対する罰則は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」など、詳細に定められています。
規制対象となる「つきまとい等」行為は、次のような行為が該当します。
- 相手のあとをつけまわす、待ち伏せする
- 相手の自宅に押しかける
- 交際や復縁など義務のないことを要求する
- 一方的に大量のLINEを送り続ける
- SNSで頻繁にメッセージを送る
- 相手の職場や学校に名誉を害するチラシをまく
- 性的な嫌悪を催す画像や、汚物などを送りつける
2、逮捕と警告、禁止命令の違い
ストーカー事件では、悪質なケースを除き警察から即座に逮捕されることは少なく、まずは警告または禁止命令を受けることが一般的です。警告や禁止命令は逮捕ではありませんが、すでに逮捕の手前にいると認識しなくてはなりません。この時点で子どもの行動を見直し、改善することが非常に重要です。
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(1)警告とは
警察は被害者からの申し出を受けて、加害者に警告することができます。通常、警告書の交付をもって行われ、ストーカー規制法に規定されている行為を禁止する旨が書かれています。
警告自体に法的効力はありませんが、そもそもストーカー行為をした者への罰則が規定されている以上、違反すれば事件化される可能性がさらに高まります。 -
(2)禁止命令とは
多くの人が警告の段階でストーカーをやめると言われていますが、中には警告を無視して同様の行為を繰り返す人もいます。警告を無視したり、行為が悪質だと認められたりしたケースでは、被害者の申し出や公安委員会の職権によって禁止命令が出されることがあります。
禁止命令には法的な拘束力があり、禁止命令を無視すると、罰則として「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」が処されます。
通常、禁止命令の前に、禁止命令の必要性を判断する聴聞の機会が設けられています。加害者は調査結果などの閲覧を求めて説明を受けるほか、質問や弁明をすることができます。
なお、被害者に危険がおよぶ状況が認められる場合などは、警告を経ずに禁止命令が出ることもあります。
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3、ストーカーで前科がつく?
未成年の場合も14歳以上であれば成人と同様に責任能力があるとみなされ、逮捕されることがあります。逮捕されれば、成人が刑事事件で逮捕されたときと同様、逮捕から最大72時間は家族であっても面会が制限されます。その後、必要に応じて身柄を拘束したまま捜査を行う「勾留(こうりゅう)」が行われることもあるでしょう。勾留は最大20日間に至る可能性もあります。
成人がストーカー事件を起こして逮捕・勾留されたときは、勾留期間中に起訴か不起訴が決定し、身柄が釈放されることもあります。しかし、14歳以上の未成年者のときは、捜査終了後、すべての事件が家庭裁判所に送られるという違いがあります。
未成年者が起こした事件は「少年事件」と呼ばれ、少年法に定められているとおり、未成年者自身の更生を目指した調査や少年審判を経て処分が決定します。殺人などの重大事件で刑事裁判とならない限り、未成年は刑事罰を受けることはなく、前科がつきません。
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(1)未成年の処分内容
ストーカー規制法違反容疑で逮捕され、捜査の結果、罪を犯したことが明らかになった未成年の処分は、次のいずれかとなります。
- 審判不開始
- 保護観察(家庭内で更生をはかる措置)
- 少年院や児童自立支援施設、児童養護施設への送致
- 都道府県知事または児童相談所長への送致
- 検察官送致(重大事件の場合)
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(2)前科はつかないが前歴は残る
未成年者がストーカー規制法違反を犯したことが明らかとして何らかの処分を受けたとしても、前科はつきません。ただし、殺人などの重大事件につながってしまったケースでは、前科がつく可能性もあるでしょう。
また、前科はつかなくても、警察に逮捕され、捜査を受けた「前歴」は残ることになります。前科とは異なり、市区町村の犯罪人名簿などには載るものではありませんが、捜査機関のデータベースには残ります。
子どもが未成年の場合は今後の就職や結婚などが心配な場合もあるでしょうが、一般の会社や市民が前歴を調べる術はありません。もっとも、逮捕の事実が被害者側から漏れ伝わったり、家庭裁判所の調査段階で学校へ知られたりする可能性はあるでしょう。
前歴があるからと言って日常生活が直接制限されることはありませんが、うわさをされる、インターネット上で実名などが流されるなどの影響は考えられます。万が一のときは、できるかぎり早いタイミングで対応する必要があるでしょう。
4、未成年のストーカーと示談
加害者が未成年の場合に示談が有効なのか、示談をどのように進めていけばよいのかを解説します。
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(1)逮捕されたら示談が有効?
すでに子どもが逮捕されたのであれば、警告や禁止命令を無視して禁止行為を繰り返した、悪質なストーカー行為をしたなどの状況にあると考えられます。この時点では子どもの行動を制御することはできませんが、事態を悪化させない方法として示談を検討することがあるでしょう。
成人事件においては、示談が量刑に影響を与えることが多々ありますが、未成年の場合、示談成立のみをもって即座に処分が軽くなることはありません。未成年に対しては、あくまでも更生を目的として処分をくだす必要があるからです。
しかし、示談によって本人が深く反省をし、示談金を支払っていく中で事件と向き合い、更生を目指していくことができます。示談が成立すれば、本人の反省や、被害者の処罰感情が緩和されたと認められ、少なからず処分に影響を与えることも考えられるでしょう。成人事件と同様に、示談が重要な役割を果たすといえます。 -
(2)示談は親ではなく弁護士に依頼するのが望ましい
逮捕されている以上、子ども自身が直接示談を行うことはできないため、親が示談をするべきか悩むことがあるでしょう。
ストーカー事件は、被害者が加害者に対して嫌悪感情を抱いていることがほとんどです。加害者の親であっても、面会を拒否される可能性が高いと考えておいたほうがよいでしょう。被害者との示談は難航することが予想されるため、事件の第三者であり、法律に詳しい弁護士に依頼することが望ましいといえます。
被害者側が不当に高い示談金を請求してきた場合にも、弁護士であれば要求を丸のみすることはありません。事件の様態や過去の事例などをもとに、適切な示談金の支払いで済むように働きかけることができます。また、万が一示談が成立しなくても、その過程を警察や裁判所に報告するなどの対応ができるため、無駄にはなりません。
弁護士は状況を見極めて適切に対応できます。特に逮捕直後は、家族との面会は制限されるため、自由な接見を行える弁護士に依頼することで、精神的な支えになることもできるでしょう。
5、まとめ
未成年が罪を犯しても、凶悪事件を除いて、逮捕されても刑事罰を受けて前科がつくことはありません。しかし、更生施設などへ送られ、家族と離れ離れになってしまう可能性は十分に考えられます。
親としては、逮捕前の段階で本人を諭し、ストーカー行為をやめさせるほか、生活環境を整えるなどの努力が求められます。とはいえ、親の力だけでは難しいものです。弁護士や医師などの専門家を頼ることも大切になります。
ひとりで抱え込まず、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士へご相談ください。未成年の子どもにとってよりよい将来を迎えられるよう、状況に適した弁護活動を行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています