飲酒運転の量刑は? 逮捕されたらどうなるのかを弁護士が解説
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平成30年11月札幌地方裁判所で、飲酒死亡事故の初公判が開かれました。平成29年11月に飲酒運転で赤信号を無視した男性が、歩行者の少年をはねて死亡させた事件です。運転者は、危険運転致死と、道路交通法違反の罪に問われています。
飲酒運転による悲惨な交通事故が後をたたないことから、飲酒運転の罰則は年々強化されています。交通安全週間には、必ずと言ってよいほど飲酒検問が実施されていますよね。
そこで、今回はベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が、飲酒運転で逮捕された場合の量刑や逮捕後の流れについて解説します。
1、飲酒運転とは? 基準は?
飲酒運転とは、道路交通法に定められた基準値を超えるアルコール値が検知される状態で運転することです。正確には「酒気帯び運転」や「酒酔い運転」と言います。
アルコールを摂取すると、理性や判断を司る大脳皮質をコントロールする器官が麻痺してしまうため、安全運転に必要な能力が低下してしまいます。その状態で運転をすると、スピード超過をしてしまったり、危険回避の動作が遅れたり、など非常に事故が起きやすくなるので、飲酒運転が禁止されているのです。
酒気帯び運転は、呼気中のアルコール濃度が0.15mg/l以上で適用されます。酒酔い運転は、アルコールの影響により車両等の正常な運転ができない状態と判断されると適用されます。酒気帯び運転と酒酔い運転の差は、アルコール濃度ではなく、「どれだけ酔っているか」で判断されます。したがって、アルコール濃度が高いから酒酔い運転になる……というわけではありません。アルコール濃度がさほど高くない状態でも、線の上をまっすぐ歩けるか、まともな受け答えができるか、などの状態を見て判断されることになります。
飲酒運転で有罪になると、運転手だけでなく運転手が飲酒していることを知っていて車に乗った同乗者や、アルコールを提供した方、運転手であることを知りつつ酒を提供した店舗も罪に問われることになるでしょう。
2、飲酒運転の量刑は? 事故を起こすとどうなる?
飲酒運転で逮捕された場合の、量刑はアルコール濃度等によって異なります。
●酒酔い運転
酒酔い運転で逮捕されると、5年以下の懲役、または100万円以下の罰金に処されます。さらに行政罰として、違反点数が35点加算され免許取り消しとなり、3年間は新たに免許を取得することはできません。
●酒気帯び運転、呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上0.25mg/l未満
酒気帯び運転は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。呼気中アルコール濃度が0.25未満の場合は、点数は13点加算され、90日間の免許停止となります。
●酒気帯び運転、呼気中アルコール濃度0.25mg/l以上
呼気中アルコール濃度が0.25以上あったときの酒気帯び運転は、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金刑に処されることになります。呼気中アルコール濃度が0.25を超えた場合は、0.25未満よりも重い行政罰を課されることになります。運転免許の点数に25点加算されて免許取り消しとなり、2年間は免許を取得できません。
さらに、飲酒運転で人身事故を起こした場合は、上記の罪に加えて下記の罪に問われる可能性があります。
●自動車運転過失運転致死傷罪
●危険運転致死傷罪
自動車運転過失運転致死傷罪は「7年以下の懲役または禁錮、100万円以下の罰金」と規定されています。危険運転致死傷罪は、相手が怪我をすれば15年以下の懲役、死亡したら1年以上20年以下の懲役と定められています。危険運転致死傷罪が成立すると、懲役刑のみとなり、罰金刑はありません。
上記のうちどちらが成立するかは、どれだけアルコールの影響下にあったかによって判断されます。泥酔状態で、正常な運転ができないとみなされると危険運転致死傷罪に問われる可能性があるでしょう。
さらに、人身事故の被害者の症状に応じて2点から20点の違反点数が加算されます。ひき逃げの場合はプラス35点です。酒酔い運転ではなくても酒気帯びの状態で運転をして、人身事故を起こせば免許取り消しは免れないでしょう。
3、飲酒運転で後日逮捕される可能性はあるのか
飲酒運転で当日逮捕されなくても、後日逮捕される可能性があるのではないかと考えるかもしれません。しかし、結論から申し上げると、現行犯逮捕以外で逮捕される可能性は極めて低いでしょう。
なぜならば飲酒運転をしていた証拠が非常に少なくなるためです。たとえば、飲酒をしている映像や飲食点でアルコールを注文した店員の証言、レシートは残されていて、証拠とすることはできるでしょう。しかし、酒気帯び運転や酒酔い運転に該当するかどうかを判断するために欠かせない、呼気アルコール濃度の数値を正確に出すことができません。よって、酒気帯び運転や酒酔い運転に該当するかどうかが、わからないためです。状況証拠で、お酒を飲んで運転したことは確実視されたとしても、肝心のアルコール濃度がわからなければ、逮捕することはできないのです。
ただし、たとえ死亡事故でなくとも、事故を起こした、ひき逃げをした、などの重大な事件に発展すれば、入念に捜査が行われて後日逮捕される可能性はあります。しかし、飲酒運転単体で逮捕することは現実的には難しいでしょう。
4、飲酒運転で逮捕後の流れと裁判
飲酒運転で逮捕されると、48時間以内に、検察官に身柄が送致されます。その後24時間以内に検察官が「勾留」すべきかどうかを判断します。勾留とは、捜査のために引き続き身柄を拘束することを指します。
検察が勾留が必要と判断すると、裁判所へ勾留請求を行い、裁判所が最終的な判断を下します。勾留されれば最大20日間、拘置所に身柄を拘束されることになります。勾留が不要と判断されれば「在宅事件扱い」となり、帰宅が許されます。しかし、無罪放免となったわけではなく、呼び出しに応じて捜査を受ける必要があるでしょう。
その後、勾留されているときは勾留期間が完了するまでに、検察が、起訴するのか不起訴にするのかを判断します。在宅事件扱いのときは、捜査が終わり次第起訴か不起訴化を決定することになります。不起訴と判断されると、裁判は行われず前科がつくことはありません。
起訴されると、刑事裁判が行われることになります。日本の司法制度では、起訴されれば99%が有罪判決となる統計があります。特に飲酒運転の場合、呼気検査の結果があるからこそ起訴に踏み切っているので、飲酒していることが明らかであれば、無罪になることは少ないでしょう。
ただし、有罪となった場合でも、事故を起こしていなかったり、示談が成立していれば執行猶予がついたり、罰金刑のみだけだったりと、軽い刑罰で済むケースもあります。
飲酒運転のうち交通事故を起こしていなければ「略式裁判」と呼ばれる、検察官が作成した書類をもとに裁判を行う方式がとられる可能性もあります。略式裁判では原則、懲役刑を科されることはありません。ただし、略式裁判の場合は、運転者が自分の主張をすることはできないので、略式裁判となった時点で有罪が確定すると考えたほうがよいでしょう。たとえ罰金刑でも有罪となれば、前科がつくことになる点に注意が必要です。
なお飲酒運転で人身事故を起こした場合は、該当する法律に罰金刑が設定されていないため、略式裁判ではなく正式な刑事裁判が行われます。状況によっては、判決が下るまで身柄が拘束され続ける可能性もあります。できるだけ早いタイミングで弁護士に依頼することで、長期にわたる身柄拘束を回避できる可能性が高まります。できる限り弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
飲酒運転で逮捕されると、懲役や罰金刑に加えて、運転免許取り消しなどの行政罰にも処されることになります。逮捕されれば、起訴か不起訴化が決まるまでのあいだだけでも、最大23日間勾留される可能性がある点に注意が必要です。飲酒運転の末、人身事故を起こしていて、起訴されることになれば、保釈手続きが認められない限り身柄の拘束はそれ以上の長期に至るケースもあるでしょう。
少しでも早く身柄の拘束を解かれ、重すぎる処罰を受けないようにするためには、被害者に対する示談をはじめとした対応を行う必要があります。できるだけ早いタイミングで弁護士に相談して、適切な対策を行うことをおすすめします。ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士へ、まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています