未成年の家族が暴行罪で逮捕!少年事件の流れを札幌オフィスの弁護士が解説

2018年11月26日
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未成年の家族が暴行罪で逮捕!少年事件の流れを札幌オフィスの弁護士が解説

平成29年11月、北海道札幌市内の路上で帰宅途中の女性が何者かによって刃物で刺される通り魔事件が発生しています。防犯カメラの映像から判明した犯人は、なんと12歳の男子中学生だったことから、世間を大きく騒がせました。

未成年の子どもを取り巻く社会環境は大きく変化しています。とはいえ、未成年者が起こした事件そのものは平成20年を境に年々減少しているのですが、ニュースなどで報道される機会も増えているのでしょう。罪を犯せば、たとえ実名報道されない未成年者でも、インターネットを通じてさまざまな情報が流出する可能性があることを否定できず、将来へ及ぼす影響は年々大きくなりつつあるように思います。

広い北海道の中でも特に人口流入が著しい札幌では、ささいなトラブルから少年が「暴行」を起こし、警察のお世話になってしまう可能性があるでしょう。未成年の子どもが暴行事件を起こしたら、どのような処分が下されるのかをご存じでしょうか。

今回は、暴行罪の概要や罰則などを解説したうえで、未成年の少年が暴行事件を起こした場合の処分の流れや家族が担う役割などを、札幌オフィスの弁護士が解説します。

1、暴行罪の概要

冒頭にご紹介した事件では、犯人自身が「殺意があった」ことを認めたため、殺人未遂として補導され、処分が下されました。未成年の子どもが他人に暴行を加えた場合もまた、成人の事件と同じく「暴行」容疑で補導もしくは逮捕されることになります。

ここで示される「暴行」行為は、日常で一般的に暴行だと受け止められる行為だけにとどまりません。そのため、大人はもちろん、子どもでも同様に、思いがけない行為によって警察のお世話になってしまう可能性があるのです。

まずは、「暴行罪」について、定義や罰則などを見ていきましょう。

  1. (1)暴行罪の定義

    暴行罪は、刑法に規定されている粗暴犯罪のひとつです。刑法第208条には「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」と規定されており、暴行の結果、負傷がなかった場合は暴行罪が成立することが明記されています。

    暴行罪にいう「暴行」とは、殴る・蹴るなどの、明確な暴力行為だけでなく、次のような行為も含まれます。

    • 首を絞める
    • 髪の毛を切る
    • えり首や胸ぐらをつかむ
    • 相手の着衣を強く引っぱる
    • 水をかける
    • 塩を投げつける
    • 脅すつもりで当たらないように石を投げつける


    なお、上記の行為の結果、相手が負傷したときは、さらに罪が重い「傷害罪」に問われることになります。

  2. (2)暴行罪の罰則

    成人が暴行事件を起こし、有罪になったときは「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」が科せられます。

    未成年の子どもが刑法に触れる事件を起こした場合の扱いは、原則、刑法ではなく「少年法」に基づいた処分を受けることになります。なお、少年法で示す「少年」は、男女問わず、すべての未成年者を指します。ただし、同じ未成年の子どもでも、実際の年齢によって、処分へ至るプロセスが異なります。

    14歳以上の子どもが法律上の罪を犯したとき「犯罪少年」と呼ばれます。一方で、冒頭の事件のように、14歳未満の子どもが法律上の罪を犯したときは「触法少年」と呼ばれます。触法少年に関しては、刑法第41条にて「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と規定しています。よって、刑罰が下されることはありません。冒頭の事件を起こした少年も、逮捕ではなく補導され、「要保護児童」として札幌市児童相談所に通告されています。

    つまり、未成年の子どもは暴行事件だけで刑罰が下されることはないと考えてよいでしょう。しかし、14歳以上の「犯罪少年」が、被害者を死亡させたなど、一部の凶悪・重大な事件にかかわっていたケースでは、成人と同じく刑罰が科せられることもあるといえます。

  3. (3)暴行罪と逮捕の関係

    暴行事件の多くは、「事情聴取」、もしくは「通常逮捕」「現行犯逮捕」によって検挙されています。「検挙」とは、警察用語で、警察が事件の犯人の可能性が高い「被疑者」を特定し、被疑者に対する直接的な捜査に着手することを指します。報道では「摘発」と称されることもあるでしょう。

    なお、「通常逮捕」とは、逮捕状が発行され、逮捕に至るケースを指します。被害者によって被害届が提出され、防犯カメラなどの証拠があり、事情聴取に応じないなど、逃亡・証拠隠滅の危険性があるときに行われるものです。

    一方、「現行犯逮捕」とは、事件が発生した現場に居合わせた関係者や周囲の目撃者の通報によって警察官が駆けつけ、暴行行為をしているその場で身柄を拘束されることを指します。

    なお、未成年の少年であっても、14歳以上であれば、逮捕の要件に準じて逮捕されます。「少年だから」という理由で逮捕しない・逮捕できないということはありません。ただし、身柄を確保した時点で身分証明書などから14歳未満であることが判明していれば、逮捕せずに「保護」することになります。冒頭の事件では、捜査員が、防犯カメラに残っていた映像に酷似している少年を商業施設で発見。事情聴取を行った結果、少年が罪を認め、保護に至ったと報道されています。

2、少年が暴行容疑で逮捕された場合の流れ

14歳以上の未成年者が暴行容疑で逮捕されたとき、少年法に基づいた処分を受けることは前述のとおりです。具体的に、どのようなプロセスを経て、処分を下されることになるのかを解説します。

まず警察に「被疑者」として逮捕されると、警察署の留置場に留置され、取り調べを受けることになります。取り調べを行う警察は、容疑があることを確認できれば、逮捕から48時間までの間に検察庁へ、事件と被疑者の身柄を送致します。

警察からの送致を受けた検察官は、24時間以内に捜査を継続するため引き続き少年の身柄を拘束する「勾留(こうりゅう)」の必要性を判断します。身柄拘束の必要があれば、検察官は裁判所に「勾留請求」を行い、許可が下りれば、原則10日間、延長によって最長20日間の身柄拘束が続きます。

また、勾留に代えて少年鑑別所における「観護措置」をとる場合もあります。少年鑑別所における観護措置の場合は、10日間のみの身柄拘束となります。

勾留がなかった場合はもちろん、勾留もしくは観護措置の期間が満期を迎えると、検察官は事件を家庭裁判所に送致します。送致を受けた家庭裁判所は、成人事件における刑事裁判と同じ位置付けの「審判」を行うか否かを判断します。

成人事件の場合、検察官が起訴・不起訴を判断することになりますが、少年事件の場合は必ず家庭裁判所に送致されます。これは、少年犯罪はすべて「少年の更生のため」を目的としているからこその措置です。この制度を「全件送致主義」と呼びます。

もし家庭裁判所が審判を開くまでもなく更生が可能と判断すれば、審判不開始とすることもあります。「審判開始」が決定したとき、審判は必ず非公開の場で開かれます。

審判の結果によって、以下の処分が下されます。

  • 保護観察
  • 少年院送致
  • 児童自立支援施設等送致
  • 知事または児童相談所長送致
  • 検察官送致
  • 不処分

3、少年事件において示談は有効か?

成人が起こした暴行事件の場合、被害者に謝罪し示談を交わすことで、被害届の取り下げを乞い、早期釈放や刑罰の軽減を目指すことができます。しかし、前述のとおり、少年事件では「全件送致主義」をとっていることもあり、示談が成立したからといって釈放が早まることや、送致を取り留めることはありません。

成人が罪を犯したときは「処罰を与えること」が目的であるのに対し、少年事件の処分においては、少年自身に反省を促し、更生させることを目的としているためです。そこで、少年事件では、必ず少年の資質や特性を熟知した専門家がそろう、家庭裁判所がその処分を判断することになっています。

このことから、被害者との示談を成立させることがムダだと感じる方もいるかもしれませんが、それは誤りです。加害者と被害者の間で行われる示談では、加害者が謝罪を行うとともに賠償金を支払います。それを受けた被害者が「加害者を許す」という文言を示談書にしたためてもらうものです。

つまり、示談では、事件を起こした少年自身が、自らが起こした事件と向き合い、真剣に反省する必要があります。その結果、示談が成立すれば、少年自身が反省し、更生に向けた行動を行ったことを証明する材料となるでしょう。

4、少年事件で弁護士を選任するメリット

少年が暴行事件を起こして逮捕された場合でも、成人が刑事事件を起こした場合と同じく、できるだけ早いタイミングで弁護士を選任することをおすすめします。

特に、逮捕から勾留、もしくは観護措置が決まるまでの最大72時間の間は、たとえ親や保護者でも、子ども自身との接見が制限されます。弁護士を選任することで、まず逮捕直後から逮捕された少年と接見し、少年に対して適切なアドバイスを与えることが可能になります。さらには、反省を促したり、家族から預かった着替えを差し入れたり、家族の気持ちを伝えるなど、精神的なサポートを行うこともできます。

また、事件捜査が進む中で、少年に対する処分が過剰なものにならないよう、さまざまな弁護活動を行います。そのほかにも、少年自身が作成した反省文や、家庭環境に問題がないことの調査結果などを家庭裁判所に提出することや、学校や勤務先と調整をして、退学や解雇にならないように働きかけるのも弁護士の仕事のひとつです。

さらに「審判」の場において、選任された弁護士は、成人事件の場合の弁護人のように「付添人」として参加することになります。付添人は、弁護人と同じく裁判官に意見を述べることで少年の処分が軽くなるように働きかけるため、逮捕された少年の帰宅が早まることが期待できます。

5、まとめ

今回は、未成年の少年が暴行事件を起こして逮捕されてしまったケースを想定し、暴行罪の概要や少年事件の処分の流れを解説しました。

少年事件は、成人事件と違って「処罰を与える」という目的ではなく、少年の健全育成と更生を目的としています。そのため、成人事件とは異なった対処が必要となり、保護者が直接的に行えるサポートは、非常に限られてしまいます。少年事件のサポートは、法律に精通し、少年事件の取り扱いを通じて少年の資質や特性を見抜く力を持った弁護士に一任するべきでしょう。

ベリーベスト法律事務所・札幌オフィスでは、少年による暴行事件の対応経験が豊富な弁護士が、将来に受ける可能性がある影響を最小限に抑えるため、状況に適した弁護活動を行います。お困りの際は、早急にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています