不倫相手と示談するときに知っておくべき示談書の書き方や作成手順とは
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札幌市では、札幌弁護士会離婚相談センターをはじめ、各区役所などで、離婚にまつわる財産分与や慰謝料についての無料相談を受け付けています。これらの相談機関では、配偶者が不倫していたと知り、離婚を考えているときは有用なアドバイスを受けることができるでしょう。
しかし、何とかやり直したいと考える方も少なくありません。配偶者との関係を再構築するためには、不倫相手との関係を解消することが必要不可欠です。しかし、ひとりで立ち向かうことに不安を感じるのではないでしょうか。
そこで、不倫相手と今後の関係を断ち切り慰謝料を請求するための示談書の作成手順を札幌オフィスの弁護士が解説します。
1、不倫における示談の役割とは
そもそも「示談(じだん)」とは、当事者同士で話し合い事件を解決しようとすることを指します。不倫相手との示談を成立させるということは、次の内容を認め、納得する必要があるでしょう。
- 不倫相手がトラブルの発端となった不倫行為を認める
- 双方が「不倫相手が損害賠償金を支払うことでこのトラブルは解決したこととして、今後は一切金銭等の請求をしない」と納得する
民法では不法行為による精神的損害について慰謝料等を請求できることを規定しています。結婚している男女との性交渉は民法で禁じられているため、不倫の相手方は不法行為をしたことになり、浮気された側が損害賠償請求をすることができるのです。したがって、争いになったとしても、調停や裁判では慰謝料請求については認められるといえます。
しかし、民法には「不貞行為を働いた相手と2度と接触してはならない」などの規定はありません。調停や裁判で争ったとしても、配偶者と不倫相手の関係を法的に断ち切ることはできないのです。
しかし、示談であれば「当事者同士が納得すればよい」とされているので、「2度と会わないこと」を示談の条件にすることが可能です。つまり、示談交渉を行う最大のメリットは、法律では認められていない、「今後は2度と会わないこと」などの内容を盛り込むことができる点であるともいえるでしょう。さらに、相手が納得しさえすれば相場より高い慰謝料を請求することも可能です。
調停や裁判などの法的手続きと異なり、双方が納得しさえすれば早期に不倫問題を解決することもできます。「相手に慰謝料を請求するだけでは、今後も関係が続くのではと不安で結婚生活を継続できない」と考えている方にとって、示談交渉での解決は有効な解決方法といえます。
2、示談書に盛り込むべき内容
示談交渉の末、示談内容が決定したら、示談書を作成しましょう。法律的には示談書がなくても口約束だけで、示談は成立します。しかし、将来的に「言った」「言わない」の水掛け論になってしまうケースが多々あり、新たなトラブルを誘発してしまいかねません。したがって、必ず示談書を作成しておきましょう。
ここでは、不倫の示談書に盛り込むべき内容を紹介します。示談書作成の参考にしてください。
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(1)慰謝料の金額と支払い方法
まずは、「不倫相手が慰謝料を支払う」という文言と、「慰謝料の金額」を明記してください。金額だけでなく、「支払い方法」や「期日」も必ず記載しておきましょう。
分割で支払う場合には分割回数や各回の支払期日も盛り込んでおいてください。また、慰謝料の振込先も示談書に記入する必要があります。 -
(2)配偶者と不倫相手の接触禁止
示談で解決する最大のメリットが「接触しないこと」を盛り込めることです。二度と不貞行為をしてほしくないと願うのであれば、記載したほうがよいでしょう。
ただし、再び接触した場合に違約金を求めるなどの文言を入れる場合は、示談交渉の実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。法的に無効な示談書を作成してしまうと、示談全体が無効になる可能性があるためです。 -
(3)謝罪条項
不倫相手からの謝罪を望んでいる場合は、謝罪文言も盛り込みましょう。
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(4)清算条項
示談書に記載されている項目以外は双方に支払い義務などがないことを確認するために必要な条項です。清算条項がなければ、解決後に再びトラブルが発生してしまう可能性があります。
この他にも、不倫相手から個人情報の秘密保持などの文言を入れるように求められたときは、応じるとよいでしょう。不倫していたことが事実であっても第三者に吹聴して、不倫相手の社会的地位を失墜させてしまうと、名誉毀損(きそん)罪に問われる可能性があります。不倫の事実はむやみに口外しないようにしましょう。
3、不倫相手と示談交渉を行う2つの方法
不倫相手との示談交渉は電話や面談での交渉か文書での交渉の2通りがあります。
一般的には、不倫相手と示談交渉をスタートする前に、不貞行為の証拠を集めて「確実に不倫していたこと」を確かめます。その上で、不倫相手に内容証明郵便で、慰謝料を請求する旨を通知します。その際にはあなたが納得できる形の示談書も作成しておくとよいでしょう。
不倫相手が慰謝料の請求に応じるようであれば、そのまま示談交渉に入ります。不倫相手が電話をかけてきたり、訪問してきたりした場合は直接交渉することになります。文書で回答してきた場合は、文書で示談内容をすり合わせていきます。
どちらの場合も、あなたが作成した示談内容に相手が納得すれば、示談書に双方の署名捺印を行い、示談が完了します。相手が納得しない場合は、電話や文書で話し合うことになります。
しかし、不倫相手と直接示談交渉することはおすすめできません。一般の方にとって、示談交渉は初めての体験ですし、相手は配偶者の不倫相手という憎しみの対象です。不倫相手も、あなたにはよい印象を持っていないので双方の交渉は友好的には進みません。冷静な話し合いどころかさらに事態がこじれてしまうケースの方が多いものです。あなた自身、示談が完了するまでの間、大きなストレスを抱えることになるかもしれません。また、個人同士が話をしても、押さえるべきポイントを知らないため、いくら交渉しても解決しない可能性が高まります。
したがって、不倫相手と示談交渉する前に、まずは弁護士に相談することをおすすめします。その上で、自分で示談交渉を進めるのか、弁護士に交渉を一任するのか判断しましょう。
4、不倫相手との示談交渉をする際に注意すべき7つのポイント
不倫相手との示談交渉は、原則、不倫をされてしまったあなたが強い立場にあると考えられます。しかし、強引に交渉を進めてしまうと逆に訴えられてしまう事態に陥りかねません。
示談交渉する際に注意すべき点をあらかじめ知っておきましょう。
●「不倫の事実を公にすること」を交渉材料に使わないこと
不倫していたことが事実であっても、それを第三者に話して不倫相手の社会的地位を失墜させれば、名誉毀損罪に問われます。また、公にすることを材料に示談を迫る行為は「脅迫罪」に問われる可能性があることを忘れないようにしてください。
●交渉場所に無理やり連れてこない
不倫相手を無理やり交渉場所に連れてくる行為も犯罪になる可能性があるのでやめましょう。お互い合意の上で、第三者の目がある場所で話し合いを行ってください。
●示談交渉は第三者がいる場所で
示談交渉の際は、密室や自宅などではなくある程度プライバシーが保護されている喫茶店や飲食店を活用しましょう。アルコールを提供することが前提のお店では、どちらかが酔ってしまい交渉にならない可能性があるので避けることをおすすめします。
●あなたの味方を大勢連れて行かないこと
不倫相手との示談交渉は非常に不安が多いものです。自分の友人知人や親族などを大勢連れて行きたいと思う方もいるでしょう。しかし、圧倒的な人数差があると不倫相手が「脅されて示談書に署名されたから無効だ」と主張したときに対抗できません。
できれば、どちらとも利害関係がない人物や、法律を熟知した弁護士に立ち会ってもらうことをおすすめします。
●ボイスレコーダーで録音すること
示談交渉の場では、ひとつひとつの発言が非常に重要となります。話している中で、「想定しているよりも交際期間が長かった」などの慰謝料を増額できる可能性がある発言が飛び出す可能性があるためです。その場合は、その発言をもとにさらに慰謝料を請求できる可能性もあります。以降に「言った」「言わない」という事態に陥らないためにも、会話を録音してください。
●証拠は必ず写しをとっておく
不倫相手に、不貞行為があったことを認めさせるために証拠が必要です。そのため、示談の席で証拠を見せるよう求められることもあるでしょう。しかし、逆上した相手が証拠を破損したり捨てたりする可能性があるので、必ず写しをとっておきましょう。
示談書も書き損じた場合や破られた場合を想定して複数枚用意しておくと安心です。
●相手が弁護士に依頼した場合はあなたも依頼すること
当事者同士で示談交渉を進めていたものの、相手が弁護士に依頼した場合はあなたも弁護士に交渉を一任しましょう。
いくら相手が不倫をしていたとはいえ弁護士がついてしまうと、あなたにとって不利な条件で示談が進んでしまう可能性があります。それはなんとしても避けなければならない事態でしょう。示談交渉の経験が豊富な弁護士にまずは相談してください。
5、まとめ
不倫相手と示談交渉をするメリットは、接触禁止を求めることができることや、早期に解決できること、また相場よりも高い慰謝料を請求できる可能性があることです。
ただし、不倫相手との示談交渉はトラブルに発展する可能性も高く、スムーズに進まないことも少なくありません。できるかぎり、示談交渉に臨む前に不倫の慰謝料請求実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所・札幌オフィスでも、あなたの状況をきちんと確認した上で、親身になってアドバイスを行います。ひとりで悩まず、まずは相談してください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています