子どもの認知手続きと養育費について|過去分の請求方法は?
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婚姻していない男性との間に子どもが生まれた場合、そのままでは、その男性と子どもの間に法律上の親子関係(父子関係)が発生しません。法律上の親子関係を発生させるには、父親である男性に子どもを認知させる必要があります。
また、父親が子どもを認知しているかどうかは、父親による養育費の支払いにも影響を与えます。
本コラムでお伝えすることは、大きく以下の3つです。
・認知とは? 養育費をもらうためには認知は必須なのか
・父親に子どもを認知させる方法や手続き
・過去分の養育費の請求は可能なのか
子どもの認知や養育費についてお悩みの方に向けて、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。
1、養育費をもらうには、父親に子どもを認知させることが必須なのか?
婚姻外で生まれた子どもについては、父親との間に法律上の親子関係を発生させるには「認知」が必要となります。
また、養育費の支払いを受けるに当たっても、父親が養育費の支払いを拒否している場合には、認知が必要となるのです。
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(1)認知とは|任意認知・強制認知
「認知」とは、自らと嫡出でない子(非嫡出子)との間に、法律上の親子関係を発生させる手続きをいいます(民法第779条)。
「非嫡出子」とは、結婚していない夫婦の間に生まれた子です。
非嫡出子については、当初は父親との間に法律上の親子関係が存在しません。
そのため、父親と非嫡出子が法律上の親子となるには、認知の手続きが必要となります。
認知には、「任意認知」と「強制認知」の2種類があります。● 任意認知
親が自発的に行う認知です。
生前に行う場合のほか、遺言による認知(民法第781条第2項)も認められています。
● 強制認知
家庭裁判所の審判または認知の訴えにおける判決に基づき、強制的に効果が生じる認知です。
親が死亡した場合でも、死後3年以内であれば強制認知を求めることができます(民法第787条)。 -
(2)認知によって生じる親子間の主な法律関係
親が子を認知することで、親子の間に法律上のさまざまな関係が発生します。
財産などの関係において特に重要であるのが、「扶養義務」と「相続権」です。● 扶養義務
法律上の親子は「直系血族」として、互いに扶養をする義務を負います(民法第877条第1項)。
養育費の支払い義務は、親の子に対する扶養義務の一環です。
● 相続権
法律上の親子関係があれば、親が亡くなった場合は子が相続人となります(民法第887条第1項)。
また子が亡くなった場合、その子に子がいないことを条件として、親が相続人となります(民法第889条第1項第1号)。
逆にいえば、認知がされない限り、血のつながった親子であっても扶養義務や相続権は発生しないのです。
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(3)合意があれば認知がなくても養育費を受け取れる
原則として、子の養育費の支払い方法は、両親の間の協議によって決定されます。
また、前述のとおり、非嫡出子と認知をしていない父親の間には、法律上の親子関係が存在しません。
この場合、法律上、父親は子の養育費を支払う義務を負いません。
しかし、両親の間で養育費の支払いを合意すれば、合意内容に基づいて養育費を支払う契約上の義務を負うのです。
したがって、父親が子を認知していなくても、父親との間で合意すれば、養育費を受け取ることが可能になります。 -
(4)父親が拒否している養育費の支払いを受けるには、認知が必要
父親が養育費の支払いを拒否する場合、最終的には審判手続きを通じて、裁判所に養育費の支払いを命じてもらう必要があります。
しかし、裁判所が父親の養育費の支払い義務を認めるのは、父親と子の間に法律上の親子関係が存在する場合のみです。
したがって、父親が拒否する養育費の支払いを受けるには、その前に認知の効力を発生させる必要がある点に注意してください。
2、父親に子どもを認知させるための手続き
任意認知・強制認知は、それぞれ以下の手続きによって行います。
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(1)任意認知の手続き
任意認知は、生前であれば戸籍法上の届け出によって行います。
認知をする親(父親)の本籍地の市区町村の窓口へ、認知届を提出しましょう。
また、認知をする旨と併せて養育費の支払いについても取り決め、公正証書の形で合意書を締結しておくことをおすすめします。
なお、子が成年(18歳以上)である場合には、子の承諾がなければ任意認知をすることができません(民法第782条)。
また、胎児を認知する場合には母の承諾が必要であり(民法第783条第1項)、この場合は母の本籍地が届け出先となります。
一方で、任意認知は遺言によって行うこともできます(民法第782条第2項)。
遺言による認知があった場合、被相続人の本籍地の市区町村役場へ、認知があった旨を相続人が代理で届け出ましょう。 -
(2)強制認知の手続き
親が認知を拒否している場合、子と、子の直系卑属またはこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができます(民法第787条本文)。
また、認知の訴えは、親が死亡した場合でも死亡後3年以内であれば提起できます(死後認知。同条ただし書き)。
ただし、認知の訴えには「調停前置主義」が適用されるため(家事事件手続法第257条第1項)、まずは家庭裁判所に「認知調停」を申し立てなければなりません。
認知調停においては、当事者間で親子関係がある旨の合意がされて、家庭裁判所が調査のうえでその合意を正当と認めれば、合意に相当する審判を行われます(同法第277条第1項)。
これに対して、認知調停で合意に相当する審判が行われなかった場合には、改めて認知の訴えを提起して、判決による認知を求めることになるのです。
審判または判決によって認知が確定したら、確定日から10日以内に、親の本籍地の市区町村役場に対して認知届を提出してください。
3、養育費は過去の分も請求できる?
子の父親に対して養育費を請求する場合、いつの時点までさかのぼって請求できるかが問題となります。
一般的な離婚の事例は、請求時以降の養育費しか認められないことが大半です。
しかし、認知に伴う養育費の請求の場合には、離婚のケースとは事情が異なってくる点に注意してください。
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(1)一般的な離婚のケース|請求時以降の養育費しか認められない
夫婦の離婚に伴い、非同居親から同居親に養育費を支払うケースでは、請求を行った時点以降の養育費に限って支払いが認められるのが原則です。
「扶養義務は抽象的な義務であり、具体的な請求権は協議等によって内容が確定した後に初めて発生する」という考え方から、このような取り扱いがなされています。 -
(2)認知のケース|出生時までさかのぼって養育費の支払いが認められた裁判例あり
これに対して、認知に伴い養育費を請求する場合、子の出生時にさかのぼって養育費の支払い義務を認定した裁判例があります(大阪高裁平成16年5月19日決定)。
認知のケースでは、認知の効力を確定させてから養育費を請求するという手順をふまなければなりません。
認知によって法律上の親子関係が発生した時点で、初めて養育費の支払い義務が発生するためです。
また、認知の効力は出生時にさかのぼって発生します(民法第784条)。
大阪高裁は、上記の法律上のルールを前提として、出生時にさかのぼって養育費の支払い義務を認めました。
大阪高裁が出生時以降の養育費の支払い義務を全面的に認めたのは、母親が迅速に認知・養育費の支払いを求める請求を行ったためであると考えられます。
養育費をできる限り長い期間受け取るには、早期に認知・養育費の支払いを求める手続きを取ることが大切といえるでしょう。
4、認知や養育費の請求について弁護士に相談するメリット
婚姻外で生まれた子どもについて、認知や養育費の支払いを請求する場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、請求に伴う協議や家庭裁判所での手続きを全面的にサポートすることができます。
弁護士に依頼することで、手続きの準備や対応にかかる時間・労力・ストレスを大幅に軽減できるでしょう。
また、両親の収入バランスや子の人数・年齢などに応じて、適正額の養育費を支払ってもらいたい場合も、弁護士に詳細を相談してください。
弁護士であれば、法的な根拠に基づいて養育費の金額を適切に算定したうえで、請求をサポートします。
5、まとめ
婚姻外で生まれた子について、父親に養育費を請求したい場合には、父親との間で支払いにつき合意するか、または子が父親の認知を受けることが必要です。
特に父親が認知も養育費の支払いも拒否している場合には、認知調停・認知の訴え・養育費調停などの法的手続きを通じて請求を行う必要があります。
ベリーベスト法律事務所の弁護士は、これらの手続きを全面的に代行し、適正な養育費の獲得に向けて親身にサポートいたします。
離婚や養育費に関してお悩みの方は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています