札幌で夫(妻)からのDVにお悩みの方へ、DVの相談先と弁護士がお手伝いできることを解説

2021年03月11日
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札幌で夫(妻)からのDVにお悩みの方へ、DVの相談先と弁護士がお手伝いできることを解説

夫や妻などからの家庭内暴力(DV)に悩む方は少なくありません。しかしながら、DVは家庭という閉ざされた空間で発生するものであり、知人や友人などにはなかなか打ち明けられないのが実情ではないでしょうか。

そこで本コラムでは、配偶者からのDVに悩んでいる方、DVを理由に離婚することを考えている方がどこに相談すれば良いのか、相談窓口は具体的にどこにあるのかなどについて解説します。

また、DVに関しては弁護士がサポートできることもあります。具体的に弁護士に何ができるのか、弁護士に相談するとどんなメリットがあるのかなども併せて札幌オフィスの弁護士が解説します。

1、どのような行為がDVに当たるのか

DVとはDomestic Violenceの略で、配偶者や恋人など親しい者から受ける家庭内暴力のことを言います(以下では、DVと統一して記述いたします)。暴言を吐く、暴力を振るう、性行為を強制するなどといった行為がDVに当たります。

またDVは、主に下記の五つに分類されます。

  1. ①身体的暴力(殴る、蹴るなど)
  2. ②性的暴力(性行為や妊娠・中絶を強要するなど)
  3. ③精神的暴力(「俺が飯を食わせてやっているんだぞ!」と侮辱したり「離婚するならお前と子どもを殺してやる」と脅したりするなど)
  4. ④社会的暴力(電話やメールを逐一チェックする、仕事をさせないなど)
  5. ⑤経済的暴力(適切な生活費を渡さないなど)


すぐに刑法に違反するような重大な犯罪行為もあれば、違法とまでは言うことのできないグレーな行為もあり、一口にDVと言ってもその幅は広いのです。

DVが犯罪行為に該当すれば、刑法で処罰されます。殴る蹴るといった行為は暴行罪(刑法208条)に該当しますし、傷害(ケガ)が生じれば傷害罪(刑法204条)となります。なお、暴力による精神的衝撃などから、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症してしまう場合があります。目に見えるケガではありませんが、判例は傷害罪の成立を肯定しています(最高裁判所平成24年7月24日刑集66巻・8号・709ページ参照)。

また、配偶者等(配偶者や内縁関係にある者、同居する恋人関係にある者も含まれます)から過去に身体に対する暴力や脅迫を受けたことがあり、生命や身体に対してさらなる重大な危害を受けるおそれが大きい場合には、DV防止法の保護命令制度(DV防止法10条1項)の利用を検討すべきです。
(さらに、当該制度の利用にあたっては、配偶者等の過去の暴力や脅迫について、配偶者暴力相談支援センターの職員または警察職員に対して相談・援助・保護を求めた事実も原則として必要となることにもご留意ください)。

これは、被害者が裁判所に申し立てをすることにより、当該配偶者等に対して保護命令(接近禁止命令・退去命令)を出してもらうことができます。発令から6か月間、被害者の住居その他の場所において被害者の身辺につきまとったり、被害者の勤務先付近等ではいかいしたりしてはならないというのが接近禁止命令です。

一方の退去命令は、被害者と配偶者が共に生活している場合において、発令から2か月間、住居からの退去と住居付近のはいかい禁止を命じるものです。そのほか、面会の要求や無言電話、連続しての電話やメール、夜間の電話やメールなどを禁じる命令もあります(同法10条2項)。また、被害者の子や親族等への接近禁止命令(同法10条3項、4項)の規定もあります。

2、札幌ではどこにDVの相談ができるのか

では、札幌市内でDVを受けている被害者が相談できる窓口を紹介します。

●配偶者暴力相談支援センター
配偶者暴力相談支援センターは、北海道が運営しているものと市(札幌市、旭川市、函館市)が運営しているものがあり、道内の各地に窓口があります。

道や市の職員との相談だけでなく、弁護士による法律相談や臨床心理士によるカウンセリングが受けられるセンターもあります。女性だけでなく、DVに悩んでいる男性専用の電話相談もあります。

●DVシェルター
道や市など行政が運営しているシェルターと民間のシェルターもあります。こちらでは、DV被害に遭っている被害者を保護してくれます。

身の危険を感じているが、身を寄せられる知人や親せきがいないなどといった場合には、まずは最寄りのシェルターに入れてもらうこともひとつの手です。

一時的に保護してもらう形になりますので、保護してもらっている間に今後のことを相談したり、新居や別居先を見つけるサポートをしてもらえます。

●DV相談ナビ
どこに相談すればよいのかわからないという方は、内閣府男女共同参画局の「DV相談ナビ」に電話相談すると、最寄りの相談機関窓口を紹介してもらうことができます。

●法律事務所
離婚をしたいけどどうすればいいか分からない、なかなか相手に離婚を切り出せないなどのお悩みを抱えている方は、弁護士に法的なアドバイスをもらうことも、ひとつの手です。

弁護士は加害者との間に入って話を進めていくことが可能ですので、スムーズに離婚することが期待できます。無料相談を行っている事務所もありますので、まずは無料相談して料金を相談すると良いでしょう。具体的なメリットについては、以降でご説明いたします。

これらの相談窓口はいずれも秘密厳守で相談に乗ってもらえます。打ち明けることで気持ちが楽になることもありますし、適切な対処方法も教えてもらえることでしょう。

3、DVで離婚するときの流れや注意事項

DVを理由に離婚する場合の手順や注意事項について、説明いたします。

  1. (1)離婚の手順や流れについて

    配偶者からのDVを理由に離婚する場合は、通常「話し合い(協議離婚)」→「離婚調停」→「離婚裁判」という流れで進みます。

    離婚裁判とは言っても、いきなり裁判をするわけではありません。裁判を提起する前には、必ず離婚調停を行うことになります(このことを、調停前置主義といいます)。

    調停では、調停委員が双方の主張を別々に聞いた上で、話し合いによる合意解決ができないかどうかを探ります。調停室では同意なく双方が同席させられることはありません。また、もしも身の危険を感じる場合には、相手方に自分がどの部屋で待機しているかを知られないように裁判所に配慮してもらうこともできます。さらに、調停を終えて帰宅する際も、同時ではなくタイミングをずらしてどちらかが先に帰るようにする配慮も可能です。

    調停で話がまとまらない場合には、裁判を行うことになります。家庭裁判所に対して離婚訴訟を提起します。DV案件で相手方に自分の現住所を知られたくない場合には、現住所秘匿が認められることが通常ですので、提出する全ての書面を入念にチェックする必要があります(この点は離婚調停でも同様です)。

    裁判では両当事者が出廷することになりますが、代理人弁護士に依頼すれば原則として裁判所に出廷する必要もなく、また、当事者尋問のように本人の出頭が必要な場合であっても、希望すれば「ついたて」を用意してもらえるので、相手方の顔を見ずに尋問を行うことができます。

    裁判の結果、離婚を認める判決が確定すれば、法律上は離婚したことになります。その後、判決謄本と判決確定証明書を持って市町村役場に行くことによって、離婚したことが戸籍上も反映されます。

  2. (2)離婚の際の注意事項

    DVを理由に離婚する際には、以下の点に注意が必要です。

    ●DVを受けた証拠
    なるべく離婚を優位に進めるためにも、下記のようなDVを受けた証拠をひそかに集めておくことが重要です。

    • 殴るなどの暴力を受けていた場合には、暴行を受けた部位の写真や医療記録など
    • 相手から暴言を受けていた場合には、録音データなど
    • 生活費などを渡さない経済的暴力を受けていた場合には、通帳など金銭のやり取りが分かる書類など


    ●子どもがいる場合
    子どもがいる場合、通学先の学校などで相手が待ち伏せしている可能性も考えられますので、離婚が成立までの間や離婚が成立した後も注意が必要です。

    転居をする場合には、転居先が相手に知られないように注意しましょう。
    またDVを受けている様子を見ている子ども精神的なケアも必要となりますので、一度専門家に相談することをおすすめいたします。

    しかし、DVを理由に離婚する場合、ひどいDVを受けていて被害者が萎縮してしまい、なかなか離婚を持ちかけられない、加害者が離婚に同意してくれないなど、離婚したくても離婚できないケースは少なくありません。また、離婚については合意できたとしても、親権や養育費、慰謝料、財産分与などに決める際に、相手側の要求をしかたなくのんでしまうケースもあるでしょう。

4、弁護士に相談するメリット

一般に、裁判は必ずしも弁護士を付けなければならないわけではありません。自らがすべての手続きを行うことでも構いません。

しかしながら、裁判手続は複雑で、提出する書面が多数あり、尋問でどのような応答をするかが判決に影響することもあるため、弁護士に依頼する方が安心です。また、法的なアドバイスに加えて、現住所などの相手方に知られたくない情報の流出を漏れなく防止するなど、細かい点に関するケアも行えるため、弁護士に依頼されることをおすすめいたします。

またDVを理由に離婚をしたい方は、なるべく早い段階から弁護士に相談することをおすすめします。DVの被害から逃れる方法や、今後を優位に進めるために必要な証拠の集め方など法的なアドバイスのみならず、相手方との連絡も代わりに行うことができるため、不安な思いや恐怖心を軽減することができます。

5、まとめ

DVの被害に遭われている方の相談先や、離婚を考えている場合にはどのような手続きによって離婚することができるのかなどを解説いたしました。

DVには殴る蹴るなどの暴力だけでなく、精神的なものや経済的なものなどさまざまです。DVに関することは人に話しにくいかもしれませんが、なるべく早めに適切な機関や弁護士に相談することが重要です。「こんなささいなことで相談しても良いのだろうか」と思う必要はありません。配偶者からDVの被害に遭っていて離婚をされたい方は、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています