スポーツ中の怪我の損害賠償をしてもらいたい! 札幌の弁護士が解説
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平成20年、北海道立高校の生徒が運動部の練習試合中に転倒。頭部を強打し、スポーツ中の怪我によって重篤な後遺症が残ってしまう大きな事故となりました。後日、札幌地裁で該当生徒とその親族が道立高校に対して部活動顧問の責任を問うとともに損害賠償請求を行う裁判が開かれました。
スポーツをしていると、思わぬ怪我はつきものです。互いに攻撃しあうような種目ではなくても、相手選手との接触など「他人が絡む事故」によって怪我をすることもあるでしょう。
もし、病院で治療を受けたり、今後の生活に支障をきたしたりする事態になれば、誰かに責任を取ってもらうことは可能なのでしょうか?
スポーツ中の事故を想定して、札幌オフィスの弁護士が相手に損害賠償を請求する方法を解説していきます。
1、スポーツ事故で損害賠償が発生した事例
まずは実際にスポーツ中に発生して、損害賠償が発生した事故事例を紹介します。
冒頭のスポーツ事故では、札幌地裁は該当の道立学校に対し、損害賠償責任があると認めています(平成24年3月9日判決)。控訴されていましたが、二審、札幌高裁でも損害賠償責任を認める判決が平成24年9月13日に出ています。
柔道や空手などの武道はもちろん、サッカー、バスケットボール・ラグビー・アメリカンフットボールなどのほか、子ども同士の鬼ごっこなどのように、競技者がひとつのフィールド内で活動する競技では、接触による事故が発生しやすい傾向があります。ボールの奪い合いや相手選手の進路をふさぐ場面がある競技では激しいボディコンタクトが生じるため、負傷の程度も重篤になる危険があるでしょう。
さらに、平成22年には、札幌市内で開催されたプロ野球の試合中に、打者が打ったファウルボールが観客の顔面に直撃し、観客の女性が眼球破裂によって失明した事故も起きています。この事故では、球団と球場運営側に対して4190万円の損害賠償が命じられています(札幌高裁 平成28年5月20日判決)。
ボディコンタクトがなくても、高速で飛ぶボールを扱う競技では競技者や観客にボールが直撃して負傷する事故が発生しています。野球・ソフトボール・ゴルフなどに多い事故形態です。
2、スポーツ事故は「不法行為」になる
結論から言えば、スポーツ協議中に発生する事故は「不法行為」という位置付けになると考えられます。
「不法行為」とは、相手の権利や利益を違法に侵害する行為を指していますが、このように説明すると「単にスポーツ競技を楽しんでいるだけでなぜ違法になるのか?」と感じる方が多いでしょう。
民法第709条では、故意または過失によって相手の権利や利益を侵害した場合は損害賠償義務を負うことが規定されています。これが不法行為の根拠となっているのです。つまり、「故意に怪我をさせた場合」は当然のこと、「誤って怪我をさせてしまった」場合でもその責任を負うことになるのです。
また「怪我をさせてやろう」という故意はなくても、「このままプレーすれば怪我をさせてしまうかもしれない」と認識していたケースを「未必の故意」と呼びます。未必の故意とみなされれば、故意が認定されるケースも少なくありません。故意が認定されると、純粋な過失と比べると賠償責任が重くなることがあるでしょう。
3、スポーツ事故で損害賠償を請求できる条件
スポーツ事故で相手に損害賠償を請求するのであれば、まず「損害賠償を請求できる条件に合致しているのか?」について考える必要があります。
一般的に、スポーツ事故における損害賠償請求には、次のような条件があると考えられています。
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(1)競技のルールを守っていたのか?
どのような競技にもルールがあります。ルールには、競技のゲーム性を高めるものと同時に、プレーヤー各位の安全を確保するためのものがあり、プレーヤーにはルールを遵守する義務が課せられています。
もし、ルールを守っていないプレーによって事故が発生すれば、事故発生の責任が発生するのは当然です。
ここで注意したいのは、怪我をしたプレーヤーにもルール違反があった場合です。たとえば、ルールを無視したプレーヤーが突進してきて接触事故が発生し、そのプレーヤーが負傷したとすれば、怪我をしたプレーヤーの責任が重くなります。重大な怪我を負ったとしても「相手が悪い」と主張することは難しくなるということです。 -
(2)負傷が発生することが予見できていたか?
ルールの範囲内であったり、そもそもルールに規定されていない内容であったりしても、そのままプレーすれば負傷の発生を予見できる場合があります。たとえば、剣道のように武器を持つスポーツでは、劣化によって相手の竹刀が折れてしまい刺さって怪我をすれば相手の責任が重たくなります。
「このまま突進すれば事故が起きるおそれがある」
「この道具を使っていれば、故障で事故が起きるかもしれない」
このように事故を予見できているのか、予見する余地があったのかによって、責任の度合いは変化します。 -
(3)プレーヤーが受忍すべき危険性を逸脱していないか?
スポーツでは、プレーヤーに対してある程度の危険に対する受忍義務を課しています。たとえば、野球ではバッターが打ったボールが身体にぶつかる「強襲」と呼ばれる攻撃が容認されています。ところが、これが客席の観客を襲えば先ほどの事例のように高額の賠償責任を負うことにもなります。
スポーツのフィールドプレーヤーには、通常のプレーの中にもある程度の危険が生じることを承知の上でプレーする義務を課していますが、この程度を超える危険が生じるプレーは損害賠償の責任を負うと考えられています。
4、スポーツ事故が発生したら弁護士に相談を
スポーツ事故が発生した場合は、まずは治療やリハビリが大切です。しかし、弁護士への相談も早急に行うことをおすすめします。
弁護士に相談すれば、まず責任の所在を法的に解釈することができます。相手の責任、自分自身の責任、競技主催者や競技場管理者の責任など、スポーツ事故は複合的な責任が絡み合っているため、一般的な知識や解釈だけでは正しい判断ができません。
損害賠償の知識や実務経験が豊富な弁護士に相談して、損害賠償請求が可能なケースなのかを判断してもらいましょう。もし損害賠償請求に踏み切れば、弁護士に委任することで相手との交渉を代理してもらうことができます。相手との交渉は1度や2度で終わらず、何度も交渉や話し合いを重ねるケースが少なくありません。裁判にもなれば、冒頭の事件でも二審判決が出るまで4年も経過していることから、さらなる長期化が予想されます。自分だけの力で交渉するには大きな手間や時間がかかってしまうでしょう。
弁護士に委任することによって、相手との交渉、訴訟の出廷など、全ての手続きを代理人として遂行してもらうことが可能です。また、弁護士に依頼すれば、より多額の賠償金を得ることが期待できます。
損害賠償請求では、今後の生活のためにもできる限り多くの賠償金を得ることを目標とするケースがほとんどです。しかし、相手は賠償額を減らそうと対抗してきます。お互いが主張を戦わせるのですから、より有利な結果を求めるためには有効な証拠集めなどが重要になります。損害賠償請求の経験が豊富な弁護士に依頼すれば、以後の治療や手厚い補償を得ることができるでしょう。
5、まとめ
スポーツにはある程度の危険がつきものです。しかし、ルールを逸脱したプレーや危険を顧みないプレーによる負傷には、相応の責任を取ってもらう必要があるでしょう。
スポーツ事故が発生した場合は、早急に弁護士に相談して賠償に向けた協議を進めましょう。場合によっては、訴訟による法的な手段も辞さない姿勢を見せることが大切です。
ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスでは、スポーツ事故に対する損害賠償請求の経験が豊富な弁護士が適切な対応についてアドバイスを行います。スポーツ事故に遭ってお困りの方は、家族だけで抱え込まず、まずは相談してください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています