太陽光発電の運用でトラブル発生! 法的に有効な対応策を弁護士が解説
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太陽光発電は、平成26年7月から運用が開始された固定価格買い取り制度によって、日本中に普及しました。北海道ではメガソーラーが多数稼働しており、再生可能エネルギーの普及が進んでいます。
一方で、太陽光発電に用いられるソーラーパネルの設置や運用に関するトラブルが起きるのではと問題視する向きもあります。太陽光発電オーナーにとっては、自然災害や火災などのリスクは見過ごせません。
そこで、本記事では、札幌オフィスの弁護士が太陽光発電の運用でトラブルが発生した場合の対処法を解説します。起きやすいトラブルの事例も説明しますので、太陽光発電のオーナーのお役に立てると幸いです。
目次
1、太陽光発電システムを運用する上で発生しやすいトラブル
太陽光発電装置を設置している場合に、発生しやすい代表的なトラブル事例を解説します。
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(1)落雪トラブル
札幌のような多雪地帯で懸念されるのが、落雪によるトラブルです。降雪地帯の屋根には雪止め金具が設置されており、屋根から雪が落下しにくいようになっています。
ソーラーパネルを平たんな地面に設置していればよいのですが、自宅や工場、会社の屋根等に設置している場合、落雪の危険性があります。太陽光パネルの設置を前提として建物を建築している場合、屋根が急勾配になっており、さらに落雪のリスクが高まります。
札幌の業者が施工していれば、雪止め金具を設置していない可能性は低いですが、施工に不備があれば落雪してしまいます。落雪が周囲の建物や自動車等を直撃して、損害を与えれば損害賠償義務を負わなければならないおそれがあります。また、人の上に落ちてけがを負わせた場合も同様です。
また、これは近隣とのトラブルではありませんが雪によってパネルが覆われてしまい、想定よりも発電できずに、収入が減ってしまうリスクもあります。 -
(2)騒音トラブル
太陽光発電装置のひとつ、パワーコンディショナーによる騒音がトラブルの原因になることがあります。パワーコンディショナーの音はそれほど大きくはなく、法令や条例等に違反するレベルではありませんが、パワーコンディショナーが民家の近くにある場合は、苦情が申し入れられることがあるのです。
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(3)光のトラブル(光害)
ソーラーパネルは太陽光を反射することから、「まぶしい」、「家の中が暑くなった」などの苦情が申し入れられることがあります。
太陽光パネルの反射光が住居内に差し込み、まぶしさや室内の高温化などの被害をもたらしたことによるトラブルは、何例も発生しています。
●ソーラーパネルの反射光で生活に支障をきたしたとして訴訟になった裁判例
住宅地に設置されたソーラーパネルの反射光が、自宅に差し込みまぶしく日常生活に支障が出たとして、施工した住宅メーカーと住宅の所有者を訴えたという事例では、一審ではパネルの撤去と慰謝料22万円の支払いが命じられました。ところが、二審では、撤去を求めた側の請求が棄却されています(横浜地裁H24/4、東京高裁H25/3)。
この裁判例のように、ソーラーパネルの設置によって、隣人トラブルから裁判に発展するリスクもあります。裁判になってしまうと、数年という月日をかけて争うことになる可能性が高いでしょう。 -
(4)風による飛散トラブル
太陽光発電オーナーが、最も神経をとがらせるといってもよいのが風によってパネルが飛散したことによるトラブルです。飛散したパネルが、建物や自動車、人などに衝突した場合、オーナーが損害の賠償を求められることになります。
実際に台風の暴風によって、太陽光パネルが飛散して、近隣の住宅に被害を与えた事例もあります。札幌が位置する北海道は、台風が直撃することはあまりありませんが、暴風警報が出されるような強風が吹くことはありますので注意が必要です。
2、投資用太陽光発電と自家消費型太陽光発電の違い
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(1)投資用太陽光発電とは
投資用太陽光発電は、電力会社に発電した電気を売ることを目的に設置された太陽光発電です。あらかじめ、電力会社と売電契約を結んでおきます。固定買い取り制度によって、一定期間は電気の購入価格を大幅に上回る高い単価での売電が可能となったため、投資目的で多くの事業者や個人が投資用太陽光発電を導入しました。
「投資用太陽光発電」という場合は、主に発電量が10kwHを超える全量売電型の産業用太陽光発電を指します。産業用太陽光発電は原則として全量売電型ですが、一定の条件を満たせば余剰売電型といって、自家消費できなかった分を電力会社に売却することも可能です。 -
(2)自家消費型太陽光発電とは
自家消費型太陽光発電は、全量自家消費型と、余剰売電型の2種類に分類されます。全量自家消費型の場合、固定買い取り制度は必要ありませんので、国の認定を受ける必要はありません。
固定買い取り制度には、自家消費をして余った分を売却する余剰売電型も存在します。10kwH未満の家庭用太陽光発電や10kwH以上50kwH未満の産業用太陽光発電は、自家消費して余った電気を売却可能です。
3、太陽光発電トラブルを事前に防ぐ方法
太陽光発電のトラブルを事前に防ぐためには以下の対策が求められます。
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(1)アフターメンテナンスの内容を明確化し、契約を結んでおく
太陽光パネルの飛散トラブルを防止するためには、定期的にメンテナンスを行う必要があります。昨今では、ドローンを使ったメンテナンスを提供している業者も出現しており、飛散トラブルリスクを大幅に軽減可能です。
経済産業省でも、飛散を防ぐためのメンテナンスを呼びかけており、オーナーの自主的な保守点検、管理が求められています。業社にメンテナンスを依頼する場合は、メンテナンスの範囲や頻度、責任の所在などを明確化した上で、契約書を交わしておきましょう。 -
(2)太陽光発電の保険に加入しておく
太陽光発電設備にはメーカー保証がついていますが、この保証は不良や欠陥があった場合の保証です。したがって、飛散等のトラブルには対処できません。
飛散等の損害賠償に備えるためには、損害保険に加入する必要があります。保険の種類によっては、賠償金だけでなく、飛散したパネルの修理費等が支払われますので、事業のリスクヘッジにもなりえます。
また、札幌特有の落雪に関する損害賠償請求についても、保険で対応できる可能性があります。ただ、施行に不良があった場合は、業者の責任として保険の支払い対象にならないおそれがあるでしょう。落雪による被害が生じた場合は、まず加入している保険会社に保険の対象になるかどうかを確認することをおすすめします。 -
(3)近隣に説明を行っておく
太陽光発電に関するトラブルの内、騒音や光害に関するトラブルは周辺住民への説明で回避できる可能性があります。設備を設置する前に説明していなければ、稼働後でもかまいません。
4、太陽光発電に関するトラブルが発生した場合の対処法
太陽光発電に関するトラブルが発生したら、トラブルの内容によって以下の対応を検討します。
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(1)メーカーや施工業者に連絡をする
トラブルの原因が、パネル自体や施工不良にある場合は、パネルメーカーや業社に連絡をします。それぞれの保証や保険で補償を受けられる可能性があります。
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(2)保険会社に連絡をする
パネルの飛散によって、他者の身体や財産に損害を与えた場合で、損害保険や賠償責任保険に加入しているのであれば、保険会社に連絡をします。
保険に示談交渉サービスが付属している場合は、保険会社が示談交渉を行いますが、付属していなければ自分自身で交渉しなければなりません。 -
(3)弁護士に対応を依頼する
他者とのトラブルが、オーナーによる交渉で解決できない場合は、弁護士に交渉を一任するのも有効な手段です。
弁護士であれば、法的に適切な範囲の賠償金での示談の成立が見込めます。トラブルの早期解決も期待できますので、損害の規模が大きい場合や、先方に納得してもらえない場合は早い段階で弁護士に交渉を一任することをおすすめします。
5、まとめ
太陽光発電施設によって、落雪や騒音、飛散や光害などのトラブルの発生が多く報告されており、オーナーにはトラブルを発生させないための対策が求められています。
トラブルを発生させないためには、設備のメンテナンスだけでなく保険への加入や周囲への説明が重要です。また、トラブルが発生した際は、問題を激化させないために速やかに弁護士に相談するなどの対処も必要となります。
ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスでは、太陽光発電に関するトラブルのご相談を受け付けております。すでにトラブルが発生している場合も、これからのトラブルを未然に防止したいという場合も、対応が可能ですので、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています