消防法違反をするとどのような罰則が適用される? 概要と規定を解説

2022年05月02日
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消防法違反をするとどのような罰則が適用される? 概要と規定を解説

札幌市の統計によると、令和2年中に札幌市内で発生した火災件数は376件であり、前年に比べて31件の減少となりました。

建築物に対して消防法上の規制や監督が行われている場合、建築物の所有者・管理者・占有者は、その内容に従わなければなりません。消防法違反に対しては、罰則が科される可能性があります。建築物の所有者・管理者・占有者である個人や企業の担当者は、必要に応じて弁護士に相談しながら、消防法の遵守に努めましょう。

本コラムでは、消防法の規制対象となる建物や、消防法に違反した場合の罰則などについて、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。

1、消防法とは?

消防法とは、国民の生命・身体・財産を火災から保護するために、建築物の防火や消防体制や危険物の取り扱いなどについて、必要な規制を行う法律です。

建築物との関係では、消防法のなかでも、火災の予防に関する規制が特に問題となります。

消防法では、建築物の種類や規模に応じて、所有者・管理者・占有者が遵守すべき防火や消防上のルールが規定されています。
建築物の所有者・管理者・占有者は、消防法上のルールについて正しく理解して、防火や消防のために必要な措置を講じなければなりません。

2、消防法の規制対象となる建築物は?

消防法の規制は、建築物一般に広く及んでいる一方で、建築物の種類や規模によって適用される規制内容が分かれています。

  1. (1)すべての建築物が消防法の規制対象

    消防法上の規制対象となるのは「防火対象物」と「消防対象物」です。
    それぞれ、以下のとおり定義されています。

    消防法第2条
    第2項 防火対象物とは、山林又は舟車、船きょもしくは埠頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物をいう。
    第3項 消防対象物とは、山林又は舟車、船きょもしくは埠頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物又は物件をいう。


    上記のとおり、防火対象物・消防対象物のどちらの定義にも「建築物」が含まれています、特に種類や規模についての制限は設けられていません。

    あらゆる建築物は、発火および延焼によって、火災の被害に遭うおそれがあります。
    そのため、すべての建築物について、消防法の規制を及ぼすことができるようにしてあるのです

  2. (2)消防用設備等の設置義務は一部の建築物に限られる

    消防用設備等を設置する義務については、防火対象物である建築物のなかでも、「消防法施行令別表第1」というリストに挙げられている建築物に限って課されています(消防法第17条第1項)。

    具体的には、以下のような建築物に、消防用設備等の設置が義務付けられているのです。

    • 劇場、映画館、演芸場、観覧場
    • 公会堂、集会場
    • キャバレー、カフェ、ナイトクラブ
    • 遊技場、ダンスホール
    • 性風俗関連特殊営業を営む店舗
    • カラオケボックス
    • 待合、料理店
    • 飲食店
    • 百貨店、マーケット
    • 旅館、ホテル、宿泊所
    • 寄宿舎、下宿、共同住宅
    • 病院、診療所、助産所
    • 老人ホーム、養護施設
    • 幼稚園、特別支援学校
    • 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、専修学校
    • 図書館、博物館、美術館
    • 公衆浴場
    • 車両の停車場、船舶や航空機の発着場
    • 神社、寺院、教会
    • 工場、作業場
    • 映画スタジオ、テレビスタジオ
    • 自動車車庫、駐車場
    • 飛行機や回転翼航空機の格納庫
    • 倉庫
    • 上記以外の事業所
    • 地下街
    • 文化財
    • 延長50メートル以上のアーケード


    基本的に、上記に該当しない建築物については、消防用設備等の設置は義務付けられていません。
    ただし、住宅用建物については、住宅用防災機器(火災報知器)の設置が義務付けられています(消防法第9条の2)。

3、消防法違反に当たる行為のパターンと罰則

罰則が設定されている消防法違反の行為は、「各種の命令違反」と、「防火対象物の点検や管理に関する義務違反」とに、大きく二分されます。
以下では、それぞれについて、消防法違反に該当する具体的な行為と罰則の内容を解説します。

  1. (1)各種の命令違反

    消防法に基づき、消防長や消防署長から建築物の所有者・管理者・占有者に対して、防火または消防のための措置命令等が発せられることがあります。
    措置命令等に違反した場合には、以下のような刑事罰が科される可能性がある点に注意してください

    命令違反の内容 罰則
    • 防火対象物に対する使用禁止、停止、制限等の措置命令違反
    3年以下の懲役または300万円以下の罰金
    • 防火対象物に対する改修、移転、除去等の措置命令違反
    2年以下の懲役または200万円以下の罰金
    • 防火対象物に対するその他の措置命令違反
    • 防火管理業務適正執行命令違反
    • 防災管理業務適正執行命令違反
    • 消防用設備等または特殊消防用設備等の設置命令違反
    1年以下の懲役または100万円以下の罰金
    • 防火管理者選任命令違反
    • 防災管理者選任命令違反
    6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金
    • 屋外の火災予防措置命令違反
    • 立ち入り検査の拒否
    • 資料提出命令、報告徴収命令違反
    • 防火対象物点検の特例認定の表示に係る虚偽表示除去、消印命令違反
    • 防災管理点検の特例認定の表示に係る虚偽表示除去、消印命令違反
    • 消防用設備等または特殊消防用設備等の維持命令違反
    30万円以下の罰金または拘留
  2. (2)防火対象物の点検・管理に関する義務違反

    消防長や消防署長からの措置命令等が発せられていなくても、以下のような消防法違反行為をした場合には、直ちに罰則が科される可能性があります

    消防法違反の内容 罰則
    • 防火対象物点検または特例認定の表示に係る虚偽表示
    • 防災管理点検または特例認定の表示に係る虚偽表示
    • 防災対象物品の表示違反
    • 消防用設備等または特殊消防用設備等の検査受忍義務違反
    • 防火管理者の選解任に関する届出義務違反
    • 防災管理者の選解任に関する届出義務違反
    • 圧縮アセチレンガス等の貯蔵、取扱いに関する届出義務違反
    • 消防設備士の工事整備対象設備等の着工に関する届出義務違反
    • 防火対象物点検報告義務違反
    • 防災管理点検報告義務違反
    • 消防用設備等または特殊消防用設備等の設置届出義務違反
    • 消防用設備等または特殊消防用設備等の点検報告義務違反
    30万円以下の罰金または拘留

4、消防法違反について弁護士に相談すべきケース

建築物を所有・管理・占有して事業を営んでいる方は、消防設備等の設置をはじめとして、消防法上の規制を遵守するように努める必要があります。

特に、以下のいずれかに該当する場合には、適切な対応を検討するために、お早めに弁護士にまでご相談ください。

  1. (1)古い建物について、消防法への適合性をチェックしたい場合

    消防法に基づく防火や消防に関する規制は、法改正によってたびたびアップデートされています。
    そのため、築年数が古い建築物については、現行の消防法による規制に対応が追い付かず、基準違反の状態となっているケースも多いのです。

    もしご自身が所有・管理・占有する建築物が古く、消防法への適合性をチェックしたい場合には、弁護士へのご相談をおすすめいたします

  2. (2)消防法上の命令を受け、対処法がわからない場合

    消防長や消防署長から消防法上の措置命令等を受けた場合、命令に従わなければ、罰則が科されるおそれがあります。

    弁護士にご依頼いただければ、行政の担当者とやり取りを行い、講ずべき措置等についての担当者と意思疎通しながら、依頼者が消防法上の罰則等を受けないように適切な処理を行います。

  3. (3)建築物等の使用禁止命令等を受け、納得がいかない場合

    消防法に基づき、建築物の使用禁止・停止・制限等の命令を受けた場合、建築物からの収益がストップして、所有者やテナントは大きな不利益を被ることになります。
    もしこれらの命令に納得がいかない場合には、ぜひ、弁護士にまでご相談ください。

    建築物等の使用禁止等の命令の効力を争う方法としては、審査請求の申し立てや取消訴訟の提起などが考えられます。
    弁護士であれば、これらの手続きに関する事前検討から実際の手続きの遂行までを、一括してサポートすることができるのです

5、まとめ

消防法では、防火や消防に関するさまざまなルールが定められています。

特に事業所を開設している方などは、消防法に基づいて、消防用設備等の設置義務を負います。
また、建築物が古い場合には建築後の法令改正に対応できておらず、防火体制等が現行の消防法令に適用していないケースがあるため、注意が必要です。

もし消防長や消防署長から、消防法に基づく措置命令等を受けた場合には、建築物の所有者・管理者・占有者には何らかの対応が求められます。
措置命令等の内容に納得がいかない場合には、弁護士にご相談いただき、審査請求や取消訴訟の可能性についてご検討ください

ベリーベスト法律事務所では、事業者を対象とした、消防法その他の規制法に関するアドバイスも行っております。企業関係者が留意すべき事項について、弁護士がさまざまな角度から検討と助言を行い、事業の運営をサポートいたします。

北海道札幌市や近隣市にご在住で、消防法の規制に関して不明点がある方や、消防長や消防署長から受けた命令に納得できない方は、まずはベリーベスト法律事務所 札幌オフィスにまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています