従業員との法的トラブル解決法と弁護士に対応を依頼すべき理由

2024年09月26日
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従業員との法的トラブル解決法と弁護士に対応を依頼すべき理由

会社を経営していく上で、従業員とのトラブルは避けて通ることができないものです。

しかし、よくあることと軽視して、トラブルを放置していると、訴訟にまで発展するおそれがあります。多額の賠償金が命じられることや、会社の社会的信用性が低下するリスクもありますので、しっかりと対応することが重要です。

今回は、よくある従業員とのトラブルの種類や対策、弁護士に対応を依頼すべきケースについて、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。

1、従業員同士で起こりうるトラブルの種類と原因

従業員同士で起こりうるトラブルには、以下のようなものがあります。

  1. (1)従業員同士の喧嘩

    仲の悪い従業員がいる場合、ささいなことで衝突し、言い争いや喧嘩などが生じることがあります。

    従業員同士の喧嘩は、当事者だけの問題ではなく職場環境を悪化させ、他の従業員にも悪影響を及ぼす可能性が高くなります。そのため、そのまま放置するのではなく会社として適切な対応が必要になります。

  2. (2)セクハラやパワハラなどのハラスメント

    上司による部下に対するセクハラやパワハラなどのハラスメントも従業員同士の代表的なトラブルのひとつです。

    会社には、従業員の健康や安全に配慮しなければならない「安全配慮義務」があります。セクハラやパワハラは、加害者だけの責任ではなく、安全配慮義務を欠いた環境をつくったとして、会社の責任にもなりかねません。そのため、セクハラやパワハラ行為が発覚したときは、すぐに対処するようにしましょう。

  3. (3)職場いじめ

    職場では、さまざまな理由からいじめが起きることがあります。職場いじめの代表的なケースとして、以下のものが挙げられます。

    • 暴力や暴言
    • 無視や仲間外れ
    • 無理難題の要求
    • 過剰な注意や指導


    このような職場いじめが行われている職場では、従業員は安心して働くことができませんので、優秀な人材が離職などにより流出してしまうリスクがあります。

  4. (4)従業員同士の金銭トラブル

    従業員同士で金銭の貸し借りをしている場合には、「期限を過ぎてもお金を返してもらえない」、「給料日にいつもお金の無心をされて困っている」などの金銭トラブルが発生することがあります。

    このような金銭トラブルは、従業員個人の問題ですので、基本的には会社が関与すべき問題ではありません。しかし、トラブルが深刻化する前に会社が仲裁することで問題が解決する可能性もあります。状況をヒアリングするなどして、必要に応じて関与していくとよいでしょう

2、従業員同士のトラブルに対して会社がすべき対応

従業員同士でトラブルが生じた場合には、会社として以下の対応が必要になります。

  1. (1)事実関係の調査

    従業員同士でトラブルが生じたときは、その理由や原因を明らかにするために、まずは事実関係の調査を行います。トラブルが生じた当事者からの聞き取りだけでなく、目撃者からも聞き取りをするなどして、状況の把握に努めます。

    聞き取った内容については、時系列に沿って事実関係をまとめた報告書を作成しておきましょう。

  2. (2)従業員同士の関係改善に向けた支援

    事実関係の調査によりトラブルの理由や原因が判明したら、それを踏まえて従業員同士の関係改善に向けた支援を行います。お互いにトラブルを抱えた状態だと、安心して仕事をすることができず、周囲の従業員に対しても悪影響を与えてしまいますので、謝罪の場に立ち会うなど、状況に応じた適切な支援を行うようにしましょう。

  3. (3)配属先の変更などの検討

    トラブルが生じた従業員同士を引き続き同じ部署で働かせるのが不適当な場合には、配属先の変更などを検討する必要があります。配属先の変更が難しいという場合には、勤務時間をずらすなどして直接顔を合わせずに業務ができるよう配慮することも必要です。

    どのような措置が有効かは、会社の規模によっても異なりますので、自社の状況に応じた適切な対策を講じるようにしましょう。

  4. (4)労災申請への協力

    従業員同士のトラブルで従業員が負傷してしまった場合には、従業員の被害回復に向けて積極的に協力しなければなりません。業務上の怪我であれば労災認定を受けられる可能性がありますので、適切な補償が受けられるよう労災申請への協力を行うようにしましょう。

    なお、従業員が負傷したことについて、会社の安全配慮義務違反や使用者責任が認められる場合には、会社に対して損害賠償請求をされるリスクもありますので注意が必要です

  5. (5)問題のある従業員への処分の検討

    事実関係の調査により特定の社員の行為が原因でトラブルが生じたことが明らかになった場合には、当該社員への懲戒処分を検討する必要があります。

    懲戒処分には、軽い処分から順に以下の種類があります。

    • 戒告、譴責
    • 減給
    • 出勤停止
    • 降格、降職
    • 諭旨解雇
    • 懲戒解雇


    どの処分を選択するかは、トラブルの内容などを踏まえて慎重に選択しなければなりません。トラブルの内容と比べて重すぎる処分を選択してしまうと、懲戒処分が無効になるリスクもありますので注意が必要です。

3、弁護士に対応を依頼すべきケースとその理由

従業員トラブルが生じた場合には、弁護士に対応を依頼した方がよいでしょう。

  1. (1)会社の使用者責任が認められるケース

    使用者責任とは、従業員が他人に損害を及ぼした場合に、会社も従業員と連帯して損害賠償責任を負う制度です。

    たとえば、従業員同士が喧嘩して他の従業員に怪我を負わせたような場合、加害者となった従業員が被害者に対して賠償義務を負うのは当然ですが、加害者となった従業員を雇用する会社にも使用者責任に基づいて賠償義務が発生します。

    会社側が責任を免れるためには、事業の執行とは無関係なものであったことや選任・監督に相当の注意をしていたことを主張立証していかなければなりません。そのためには、専門家である弁護士のサポートが必要になりますので、弁護士に依頼した方がよいでしょう。

  2. (2)会社の安全配慮義務違反が認められるケース

    会社には、従業員の安全や健康に配慮する義務があります。このような義務を「安全配慮義務」といいます。会社が安全配慮義務に違反して労働者に損害を生じさせた場合には、安全配慮義務違反を理由に賠償義務が発生する可能性があります。

    たとえば、会社が適切なハラスメント予防策を講じていなかった、または、ハラスメント発生後適切な対応をとらなかったために従業員がうつ病になってしまったようなケースでは、安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求をされるリスクがあります。

    会社側の法的責任の有無やどの程度の賠償をすべきかについては、専門家でなければ正確に判断できませんので、従業員との対応を含めて弁護士に依頼した方がよいでしょう

  3. (3)懲戒処分をした従業員から訴えられたケース

    トラブルを起こした従業員に対して懲戒処分を行う際には、適切な処分を選択することが重要です。従業員に行った処分がトラブルの内容や経緯などを踏まえて重すぎると判断される場合には、懲戒処分が無効となり従業員から訴えられてしまうリスクがあります。

    万が一、従業員から訴えられてしまったときには、会社として処分の正当性を主張立証していく必要がありますが、それには専門家である弁護士のサポートが不可欠となります。
    懲戒処分をした従業員から訴えられてしまった場合には、早めに弁護士に相談するようにしましょう

4、顧問弁護士をつけるメリット

従業員トラブルの予防や対応を希望する場合には、顧問弁護士の利用がおすすめです。

  1. (1)法的トラブルについて気軽に相談できる

    会社経営にあたっては、従業員同士のトラブルや取引先との契約問題、顧客からのクレームなどさまざまな法的トラブルが生じます。このような法的トラブルが生じたときに気軽に相談できるのが顧問弁護士です。

    昨今であれば、相談方法は面談だけでなく、電話、メール、オンライン打合せなど柔軟な対応が期待できます。ささいな問題であっても気軽に相談できますので、大きなトラブルに発展する前に問題を解決することができるでしょう。

  2. (2)トラブルが生じたときに迅速に対応してもらえる

    従業員同士のトラブルなどが生じた場合、一般の弁護士に依頼するには、弁護士探し、面談、依頼という流れになるため、初めて相談する弁護士だと、事案を把握し、解決に着手するまで相当の時間がかかってしまいます。

    顧問弁護士は普段から企業の実情もよく把握していますので、説明に時間をとられず、本題のみに集中することができます。また、顧問弁護士であれば、顧問先企業のトラブルについては優先的に対応することができますので、迅速なトラブル対応が期待できます。

  3. (3)法務部を設置するよりもコストがかからない

    会社によっては、コスト的な理由から社内に法務部を設けていないところも少なくないでしょう。

    ベリーベスト法律事務所では、月額3980円からの顧問弁護士サービス「リーガルプロテクト」をご用意しています。不要なサービスや固定費を削減し、必要な分だけ弁護士に相談することができるため、法務部を設置するよりも低コストで利用することができます。まずは、お気軽にベリーベスト法律事務所までお問い合わせください。

5、まとめ

企業経営にあたっては、従業員同士の喧嘩やパワハラなど、さまざまなトラブルが発生します。トラブルの内容によっては、法的な対応が必要になりますし、トラブルを防止のため、日ごろからの対策も重要になります。

顧問弁護士であれば、法的トラブルの対応だけでなく、予防法務のための社内教育や契約書のリーガルチェック、法務管理なども任せることが可能です。安定的な企業経営を行っていくためにも顧問弁護士の利用がおすすめです

従業員同士のトラブルやモンスター社員の対応でお困りの経営者の方は、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスまで、まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています