公職選挙法違反で家族が逮捕された! 逮捕されうる行動や刑罰の内容とは
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令和5年5月、北海道函館市長選挙において、市内に住む有権者になりすまして投票した女性が、公職選挙法違反の疑いで書類送検されました。
そもそも公職選挙法は、選挙を公正かつ適正に行うために定められた法律です。一般市民には関係ないと思うかもしれませんが、一般の人でも公職選挙法違反に問われてしまう可能性があるのです。
そこで今回は、公職選挙法とは何か、罰則や具体的にどんな行為が選挙違反となるのか、逮捕後の流れや弁護士に依頼するメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が紹介します。
1、公職選挙法違反とは、どのような罪?
公職選挙法とは、「選挙運動」に関するルールだけでなく、選挙権・被選挙権、選挙期日、投票・開票の方法などについて定めた法律です。
「選挙運動」とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的に、投票を働きかける行為」を指します。国会議員をはじめ、知事や市長など各地方自治体の首長、県会議員など各地方自治体の議会における議員選挙など、詳細かつ幅広く規定されていて、公職選挙法に違反すると、公職選挙法違反として逮捕される可能性があります。
法改正により、インターネットを利用した選挙運動が解禁になったことや、選挙権が18歳に引き下げられたことなどから、一般の人でも知らないうちに選挙違反をしてしまう可能性が高くなっているといわれています。
2、公職選挙法違反にあたる行為とは?
一般の人が公職選挙法違反に問われる可能性がある行為には、次のようなことがあげられます。
●報酬を受け取りもしくは支払う行為(買収)
買収とは、有権者などに対して、金銭や相応の商品提供、接待などをして、候補者に対する投票や投票の取りまとめなどを依頼する行為が該当します。
また、運動員としての届けを行わず、選挙活動を手伝った報酬を支払う、もしくは受け取ると、公職選挙法違反に問われる可能性があります。報酬を受け取れる選挙運動は、いわゆる「ウグイス嬢」や選挙カーの運転手など、一部の行動に限られていて、かつ届出が必要です。
買収した場合はもちろん、買収された場合でも、罰せられることがあります。買収や利益誘導の容疑で逮捕され、有罪となると、3年の以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金が科される可能性があるでしょう。
●事前運動
選挙運動は、公示日に立候補の届け出をしてから投票日の前日までに限りすることができます。それ以外の期間の選挙運動は禁止されています。
定められている罰則は1年以下の禁錮または30万円以下の罰金です。
●戸別訪問
候補者への投票依頼や、特定候補者へ投票しないことを依頼することを目的に、有権者の自宅や会社などを戸別に訪問することは禁止されています。罰則は事前運動同様、1年以下の禁錮または30万円以下の罰金です。
●18歳未満の選挙運動
18歳未満の人は、選挙運動はできません。TwitterなどのSNSを利用した運動も禁止されています。
●飲食物の提供
選挙運動においては、お茶や通常用いられる程度のお茶菓子や果物、選挙運動員に渡す一定数の弁当を除く飲食物の提供が禁止されています。また、有権者が候補者や選挙運動員に対して、差し入れとして飲食物を提供することも禁止されています。
違反し、有罪になれば、2年以下の禁錮または50万円以下の罰金が処されます。
●電子メールを利用した選挙運動
候補者など以外は、電子メールを利用した選挙運動が禁止されています。また、候補者などから受信したメールを、他者に転送することも禁止されています。
●選挙の自由を妨害する
選挙活動をしている人に対して暴行を加えたり、拡声器などを利用して演説を妨害したりすることはもちろん、選挙ポスターなどを破ったり、落書きをしたりなどの行為は、選挙の自由を妨害する行為とみなされ、自由妨害罪として罰せられます。
有罪になれば、4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が処されることになります。
●特定の候補者に対するデマを流す行為
「特定の候補者を落選させたい」という目的で、候補者に関する虚偽や事実をゆがめた情報を拡散させる行為も処罰の対象です。公職選挙法違反として罪を問われなくても、名誉毀損(きそん)罪などに問われる可能性もあります。
定められた罰則は、4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
3、公職選挙法違反で逮捕されないためには?
場合によっては、一般の人でも意識せず行った行為によって嫌疑をかけられることがあるでしょう。平成15年には、アルバイト募集に応募し、実際に選挙活動にかかわってしまった学生が公職選挙法違反の容疑で書類送検されたという事件もありました。選挙運動に携わるときや、選挙期間中に候補者や支援者とかかわりを持つ可能性があるときは、じゅうぶんに注意して行動する必要があるといえます。
公職選挙法違反で逮捕された場合は、他の刑事事件と同じように、最大23日間も身柄を拘束されてしまうケースもあります。たとえ身柄の拘束を受けなくても、報道されてしまう可能性もあり、仕事や学業など、社会生活に大きな支障をきたすことになる可能性は否定できません。
公職選挙法違反容疑で逮捕されそうな場合、逮捕されたときには、早急に弁護士を依頼することをおすすめします。警察と交渉することで容疑が晴れたり、逮捕を防ぎ在宅捜査となったり、早い段階で取り調べに対するアドバイスを受けたりすることができます。
4、公職選挙法違反を犯したらどうなるのか
公職選挙法違反に限らず、警察から罪を犯した嫌疑を受けると、刑事訴訟法に基づいた取り調べが行われます。
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(1)警察による取り調べ
もし逮捕されたときは身柄を拘束され、警察による取り調べが行われます。警察は逮捕から48時間以内に検察へ送致するか、釈放するかを決定します。
ただし、逃亡や再犯、証拠隠滅の可能性がなく、身元引受人がいるときなどは、逮捕されることはありません。「在宅事件扱い」として警察からの呼び出しに応じる形で取り調べを受けることもあるでしょう。 -
(2)検察による勾留請求
警察での取り調べが終わって嫌疑が晴れないときは、検察へ送致されます。検察によって身柄を拘束して引き続き取り調べをする必要があると判断した場合は、24時間以内に裁判所に勾留を請求します。請求する必要がないと判断した場合は、在宅事件扱いとなります。勾留が決定した場合、まずは10日間、延長されれば最大20日間勾留されることになります。
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(3)起訴・不起訴
検察は、勾留中は勾留期間が終わるまで、在宅事件扱いのときは取り調べが終わり次第、起訴するか、あるいは不起訴処分にするかどうかを決定します。起訴された場合は99%以上の確率で有罪となります。有罪になれば前科がついてしまうということです。
5、逮捕された家族のためにできることは
公職選挙法違反では、逮捕されずに在宅捜査となるケースが少なくありません。しかし、万が一逮捕された場合は、勾留請求が認められて長い間拘束されるケースもあります。
公職選挙法違反では、組織的に行われることが少なくありません。逮捕者が多数におよぶこともあり、取り調べは厳しいものとなる傾向があります。家族や知り合いとの面会は制限され、たとえ無実であっても、誘導により自白や虚偽の供述をしてしまうケースも想定できます。
そのようなリスクを避けるために、逮捕されたという情報が届いたら、すぐに弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士であれば、時間制限なしに逮捕後すぐにでも接見でき、取り調べに対するアドバイスや家族からのメッセージを伝えることができます。また、不当な身柄拘束であれば早急に抗議したり、在宅事件扱いにするよう働きかけたりすることもできるでしょう。これらの行動は、弁護士だからこそできる活動のひとつです。
逮捕された時点で、身柄を拘束されるだけでなく、犯罪者として実名で報道される、前歴・前科がつくという社会的制裁を受けてしまうこともありえるでしょう。反面、送致されたとしても不起訴となる場合があり、その情報が拡散されることはほとんどないと考えられます。逮捕後、72時間の対応によって、将来に及ぼす影響の大きさを左右する可能性があります。まずは弁護士を依頼し、長期にわたる身柄拘束を回避できるよう働きかける必要があるでしょう。
6、まとめ
今回は、公職選挙法違反について、罰則の内容や選挙違反となる行為、逮捕から裁判までの流れなどについてご紹介しました。
もし、家族が公職選挙法違反の容疑をかけられ、逮捕された場合は早急に弁護士に相談しましょう。早期に弁護士に依頼すれば、身柄の拘束や起訴を回避できるよう、いち早く積極的な弁護活動を行うことができます。
公職選挙法違反で家族が逮捕されてしまったり、ご自身が逮捕される可能性があったりするときは、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスへご相談ください。
また政治家や議員の方におかれましても、公職選挙法違反で逮捕されてしまうと、政治家にとって致命傷ともなりえますので、慎重かつ速やかな対応がとても重要です。
ベリーベスト法律事務所では、政治家や議員の方の公職選挙法違反や予防法務についても取り扱っております。地方議員・国政での議員秘書経験のある弁護士が在籍している「議員法務専門チーム」と連携して、お悩みやトラブル解決に向けてサポートいたしますので、法務に関することでお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
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