車上荒らしはどんな罪? 量刑や逮捕後の流れ、示談の重要性を弁護士が解説

2019年02月14日
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車上荒らしはどんな罪? 量刑や逮捕後の流れ、示談の重要性を弁護士が解説

車上荒らしは直接被害者と対面せずに多額の金品を手に入れることができる犯罪です。

札幌でも、過去に連続して車上荒らしが発生したというニュースがありました。

それでは、友人に誘われるがまま車上荒らしをし、現金を盗んでしまったという場合、どのような罪になるのでしょうか。

また、いつか逮捕されてしまうのか、逮捕されたらどんな刑罰を受けるのかなど疑問に思うことも多いでしょう。

そこで、この記事では、車上荒らしはどのような罪になるのか、どのように逮捕されそのあとの流れはどうなるのか、車上荒らしでの示談などについて解説いたします。

1、車上荒らしはどのような罪になる?

ここでは、車上荒らしはどのような罪になるかについてご説明させていただきます。

刑法上、車上荒らしという罪名はどこにも存在しません。

車上荒らしは駐車されている車両内の金品を奪うことです。

車上荒らし事件は窃盗容疑などで犯人が逮捕されたとニュースで報道されますが、刑法上は以下の犯罪に該当することになります。

  1. (1)窃盗罪

    刑法第235条によれば、「他人の財物を窃取した者」は、窃盗罪で処罰されると規定されています。

    「他人の財物」とは、他人が占有(管理)している物のことをいいます。

    「窃取」とは、占有者(管理者)の意思に反して財物の占有(管理)を取得することをいいます。

    車上荒らしは、車両内にある金品という他人が占有している物について、その者の意思に反してその占有を奪取するものですから、窃盗罪が成立するということになります。

  2. (2)器物損壊罪

    刑法第261条によれば、「他人の物を損壊し…た者」は器物損壊罪で処罰されると規定されています。

    「損壊」とは、物の効用を害する一切の行為をいいます。

    車上荒らしは、車両内にある金品を奪うため車のロックや窓を破壊するところ、このような行為は車の効用を害する行為であるといえるため、器物損壊罪が成立するということになります。

2、車上荒らしの量刑は?

ここでは、車上荒らしの量刑についてご説明いたします。

  1. (1)複数犯罪が成立する場合の処理

    車上荒らしには、刑法上の窃盗罪と器物損壊罪が成立します。

    このように2つの犯罪が成立する場合の量刑については、①観念的競合、②牽連(けんれん)犯、③併合罪といういずれかの処理によることが考えられます。

    ①観念的競合
    観念的競合とは1個の行為が2個以上の罪名に触れることをいい、そのもっとも重い刑によって処断されます(54条1項前段)。

    たとえば、警察官を蹴りつける行為はひとつの行為であるものの、暴行罪と公務執行妨害罪という2つの犯罪が成立します。

    暴行罪の量刑は、「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。

    公務執行妨害罪の量刑は、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」です。

    そうすると、警察官を蹴りつける行為は、量刑のもっとも重い公務執行妨害罪によって処罰されるということになります。

    ②牽連犯
    牽連犯とは犯罪の手段または結果である行為が別個の罪名に触れることをいい、そのもっとも重い刑によって処断されます(54条1項後段)。

    たとえば、他人の家に忍び込んで金品を奪う行為には、他人の家に忍び込むという住居侵入罪と、金品を奪うという窃盗罪が成立します。

    そして、住居侵入と窃盗は通常目的と手段の関係にあるといえます。

    したがって、住居侵入罪と窃盗罪は牽連犯とされ、重い窃盗罪の量刑である「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」で処罰されます。

    ③併合罪
    併合罪とは確定裁判を経ていない2個以上の罪のことをいい(45条)、そのもっとも重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものが長期とされます(47条)。

    たとえば、一度万引きをしてその数日後再び別の万引きをした場合、確定裁判を経ていない窃盗罪2罪が成立していることになるので、併合罪として処理されます。

    したがって、窃盗罪の量刑の長期にその2分の1を加えた「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」で処罰されます。

  2. (2)車上荒らしの量刑

    車上荒らしには、窓やロックを破壊するという器物損壊罪と金品を奪うという窃盗罪が成立します。

    器物損壊と窃盗は通常目的と手段の関係にあるといえるので、車上荒らしは牽連犯として処理されるものと考えられます。

    窃盗罪の量刑は、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と規定されています。

    また、器物損壊罪は、「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」と規定されています。

    したがって、車上荒らしは、重い窃盗罪の量刑である「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」で処罰されるということになります。

3、車上荒らしで逮捕されるパターンと後日逮捕される可能性はある?

ここでは、車上荒らしで逮捕されるパターンと後日逮捕される可能性があるかどうかについて解説いたします。

  1. (1)逮捕されるパターン

    逮捕には、①後日逮捕(通常逮捕)と②現行犯逮捕の2つのパターンがあります。

    ①後日逮捕(通常逮捕)
    車上荒らしの後日逮捕(通常逮捕)は、車上荒らしをしてからしばらく時間がたってから逮捕されるというものです。

    後日逮捕(通常逮捕)の流れとしては、まず捜査機関が裁判官に逮捕状を請求します。

    裁判所が相当な理由と逮捕の必要性があると判断した場合は、逮捕状が発布されます。

    捜査機関は容疑者のもとへ行って逮捕状を呈示し、経緯を説明してから逮捕するということになります。

    ②現行犯逮捕
    車上荒らしの現行犯逮捕は、車上荒らしの最中かその直後に逮捕されるというものです。

    現行犯逮捕は通常逮捕とは異なり誤認逮捕のおそれが低いことから、逮捕状がなくても逮捕することができるとされています。

    捜査機関だけではなく一般人でも車上荒らしの犯人を現行犯逮捕することができます。

    なお、車のロックや窓を壊して車両内に侵入したものの、金品を奪わずに現行犯逮捕された場合は、器物損壊罪、窃盗未遂罪が成立することになります。

  2. (2)後日逮捕される可能性

    車上荒らしで後日逮捕される可能性はあり、実際にも車上荒らしで後日逮捕されるケースは存在します。

    車上荒らしで後日逮捕されるのは、後日逮捕するに足りる証拠が存在している場合です。

    たとえば、駐車場に防犯カメラが存在していて、そこに犯行の様子や犯人の姿が映されている場合です。

    また、車上荒らしの現場に残されていた犯人の指紋や遺留物から犯人の特定に至るといった場合もあります。

4、車上荒らしで逮捕されたあとの流れ

ここでは、車上荒らしで逮捕されたあとの流れについて解説いたします。

車上荒らしをして逮捕されてしまった場合、以下のように刑事手続きが進行していきます。

  1. (1)逮捕~送致

    逮捕されたあと、警察は48時間以内に事件の証拠や被疑者の身柄などを検察官に引き継がなければならないとされています。このことを送致といいます。

  2. (2)送致~勾留

    事件が検察に送致され、引き続いて被疑者の身柄を拘束して捜査をする必要がある場合、検察官は24時間以内に裁判所に対して勾留請求をしなければなりません。

    勾留請求が認められると、10日間身柄を拘束されることになります。

    さらに、勾留の延長が認められると、最大で20日間身柄を拘束されることになります。

    車上荒らしは複数回行われることが多く、余罪の捜査に時間がかかる場合は勾留延長がされることは少なくありません。

    そして、検察官はこれまでの捜査から被疑者を起訴するかしないかを判断します。

  3. (3)起訴~裁判

    起訴されれば、裁判のためにさらに勾留されるということになります。

    その後、裁判が開かれて、冒頭手続き、証拠調べ手続き、検察官による論告・求刑と弁護側からの最終弁論、判決言い渡しという手続きを経て刑が確定されます。

5、車上荒らしの示談の重要性

ここでは、車上荒らしの示談の重要性について説明いたします。

示談とは、車上荒らしの加害者と被害者が話し合いをもつことによって、問題の解決を図ろうとするものです。

示談を成立させるためには、被害弁償をして深い謝罪の意思を被害者に伝えることが必要です。

車上荒らしのように被害者が存在する犯罪の場合、警察や検察官は示談が成立しているかどうかを重視します。

示談が成立していれば、身柄の早期解放や不起訴処分の可能性が高くなります。

また、裁判官も示談が成立しているかどうかを重視するため、起訴されてしまっても量刑が軽くなったり、執行猶予付きの判決を得ることができる可能性も高くなります。

ただし、車上荒らしの加害者が直接被害者の連絡先を知ることは難しく、連絡をとれたとしても話に取り合ってくれないということは少なくありません。

弁護士であれば、警察や検察を通じて被害者の連絡先を問い合わせできる可能性がありますので、示談交渉を考えている場合は、一度弁護士に相談することをお勧めいたします。

6、まとめ

本コラムでは、車上荒らしはどのような罪になるのか、どのように逮捕されそのあとの流れはどうなるのか、車上荒らしで示談は重要なのかなどについて解説してきました。

車上荒らしは被害者が存在する犯罪であり、特に示談の成立が重要となります。

なるべく早い段階で示談を成立させることによって、早期の身柄解放や減刑の可能性を高め、社会生活に影響が及ぶのを防ぐようにすることが大切です。

そのためには、弁護士の力がきっと役に立つはずです。車上荒らしのことでお悩みがある方は、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスにぜひご相談ください。札幌オフィスの弁護士が全力であなたをサポートいたします。

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