慰謝料はいつまで請求できる? 過去の不倫・浮気相手に請求するときの注意点

2021年06月28日
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慰謝料はいつまで請求できる? 過去の不倫・浮気相手に請求するときの注意点

札幌市が公表している統計資料によると、札幌市にお住まいで令和2年中に離婚した夫婦は3782組でした。厚生労働省が発表する人口動態によると、北海道の離婚率(人口千対)は1.75で、全国の離婚率1.57よりやや上回ります。

夫が過去に不倫していたことが発覚して離婚を検討する方も少なくないでしょう。しかし、不倫相手への慰謝料を請求したいと思っても、事項により請求できないことがあります。本コラムでは、不倫の時効を止める方法、不倫による慰謝料請求が可能な場合と、消滅してしまう場合など不倫慰謝料請求をしたい人が知っておいた方がよいことをまとめました。

1、浮気・不倫の慰謝料請求とは?

浮気・不倫の慰謝料請求とは?
  1. (1)不倫慰謝料請求の法律上の根拠

    慰謝料とは、精神的苦痛をお金に換算して償ってもらうもので、損害賠償請求の一種です。
    民法は、損害賠償について、次のように定めています。

    民法709条
    故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

    民法710条
    他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。



    夫婦は互いに貞操義務(配偶者以外の者と性的関係を持たない義務)を負っています。
    いいかえれば、配偶者に対し、自分以外の者と性的関係を持たないよう求める権利があるということになります。
    不倫(不貞行為)は、配偶者と不倫相手が共同でこの権利を侵害するものですから、民法の規定に基づいて慰謝料を請求することができるのです。

    お金を貰ったって配偶者の浮気で受けた心の傷は一生消えないでしょう。それでも、傷つけられた相手から直接お金を貰うことで多少なりとも気持ちが落ち着く効果があることは否定できません。

  2. (2)不倫慰謝料の相場金額について

    慰謝料の金額は、経済的な損害と違って、はっきりと算出することができるものではありません。
    過去の裁判例によれば、50万~300万円が相場といわれています。ただし、不倫関係の期間や頻度はどの程度であったか、夫婦関係が修復されたかそれとも離婚に至ったか、不倫相手との間に子供がいるかなど、様々なケースがありますので、一概にこの金額が当てはめることはできません。配偶者に所得や財産、社会的な立場があり、裁判などで公になる前に解決させたいという場合には、話し合いで金額が決められ、その場合の慰謝料は高くなる傾向があるでしょう。また、浮気相手が配偶者に積極的にアプローチし、不倫の原因を作ったのが不倫相手だという事情があれば、請求できる慰謝料請求は高くなるでしょう。ご自分のケースがどのくらい請求できるかは個別的な事例によって異なるので、法律や判例に精通した弁護士に相談してみましょう。

  3. (3)慰謝料請求には不貞行為を証明する証拠が必要

    浮気相手が関係を認めていれば問題ありませんが、相手が不倫の事実を否定している場合には、言い逃れのできない証拠を用意する必要があるでしょう。
    旦那と浮気相手のメールやLINEなどの履歴から肉体関係があったことを証明することができればよいですが、メールやLINEを覗き見る行為はプライバシー侵害や不正アクセス行為に該当する可能性がありますので、推奨はできません。他に考えられる手段としては、浮気の現場での決定的な記録をとるため、探偵に依頼して証拠収集をするという手もあり得ます。
    また、「(2)不倫慰謝料の相場金額について」でも触れた通り、不貞行為の期間、頻度等で慰謝料が変わりますので、不貞行為が長期にわたることや頻繁であること、不倫相手が不倫の原因を作ったこと等の証拠があれば、慰謝料がより高額になる可能性があります。
    より確実に慰謝料を請求する方法としては、法律の専門家である弁護士であれば、証拠を集めるためのアドバイスを行うことができますし、代理人としてあなたの精神的苦痛を代弁し、できる限り高額な慰謝料を請求できる可能性が高くなります。

2、不貞行為の慰謝料請求の時効について

不貞行為の慰謝料請求の時効について
  1. (1)慰謝料請求に時効はあるのか?

    夫と不倫相手の行為が不貞行為に当たるとしても、不貞行為からどれだけ時間がたっても慰謝料を請求できるわけではありません。民法は以下の通り規定しています。

    民法724条
    不法行為による損害賠償の請求は、被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。



    あなたが「損害」と「加害者」を知ったとき、つまり、あなたが旦那の浮気と浮気相手がどこのだれかを知ったときから3年が経過すると、慰謝料請求権は時効によって消滅するのです。夫のメールやSNSで浮気相手の名前や連絡先などが分かれば、相手の住所を知らなくても時効は進行します。

    また、慰謝料請求権は、不貞行為から20年が経過すると消滅します。(除斥期間といいます)。
    不貞行為やその相手方を知ったか否かといった事情は関係ありません。
    もっとも、最初の浮気から20年経過していても、その後も旦那と浮気相手の関係が続いていれば、その都度慰謝料請求権が発生しています。

    不貞行為の慰謝料請求の時効について
    最後の浮気から20年経過していなければ、除斥期間によっては慰謝料請求権は消滅していません。しかし、浮気の事実と浮気相手を知った時点から3年間で慰謝料請求は時効制度により消滅してしまいます。

    不貞行為の慰謝料請求の時効について

  2. (2)不倫の時効を止める方法

    不貞行為や浮気相手のことを知ったが、慰謝料請求をしようか迷っているうちに時効の完成が近づいてしまった場合、どうすればいいでしょうか。

    時効には、それまで進行してきた時効期間をリセットする「中断」 という制度があります。
    どのような場合に時効が中断するかについて、民法は次のように定めています。

    民法147条
    時効は、次に掲げる事由によって中断する。

    1. 請求
    2. 差押え、仮差押え又は仮処分
    3. 承認


    不倫相手に慰謝料請求をするとき、一般的にはまず初めに不倫相手に対して慰謝料を請求する内容証明郵便を送付することが考えられます。
    しかし、内容証明郵便での請求は、法律上「催告」と呼ばれるもので、「催告」のみでは、民法147条にいう「請求」の時効中断効は生じません。
    「催告」後、6か月以内に訴訟などの裁判上の請求をするか、相手の財産の仮差押えをするなど、より強力な手段に出て、初めて「催告」に時効中断の効果が生じます。

    不貞行為の慰謝料請求の時効について


    もっとも、訴訟の提起や相手の財産の仮差押えなどは、高度な法律的な知識が必要になるため自分で行うことは難しく、弁護士を依頼した方がいいでしょう。

    それ以外に、相手が「債務の承認」をした時も、時効は中断します。債務の承認とは、債務者が債務を負っていることを認めることで、話し合いの結果作成した示談書に慰謝料請求について取り決めを記載することや、分割でも慰謝料の一部を払ったり、支払いを待ってほしいと相手が申し出たりすることなどが典型例です。

    不貞行為の慰謝料請求の時効について


    なお、時効の効力は、期間の経過によって当然に生じるものではありません。
    時効によって利益を受ける者が、その効果を受ける意思表示をする必要があります(時効の援用といいます)。

3、弁護士に依頼するメリットとデメリット

弁護士に依頼するメリットとデメリット
  1. (1)不倫慰謝料の請求を弁護士に依頼するメリット

    不倫の慰謝料請求を自分で行ったり、行政書士や司法書士に依頼したりする場合には、内容証明郵便を送り、不倫相手の出方を待つことになります。しかし、内容証明郵便では不倫相手が何の反応もしてこない可能性もあり、時効消滅が近づいているような場合は大きなリスクとなります。

    これに対し、弁護士に依頼した場合には、時効消滅が近づいているようなケースでは法的拘束力のない内容証明郵便による請求を飛ばして、法的拘束力のある訴訟を起こすこともできます。
    また、弁護士は、代理人として直接不倫相手と交渉することが可能です。
    弁護士が交渉した結果、浮気相手が債務の存在を認め、一部でも支払いに応じれば、時効は中断します。
    また、不倫相手が支払いに応じない場合、弁護士は、訴訟を提起して代理人として裁判所に出廷することができます。
    これに対し、行政書士は文書の作成権限しかないため代理人にはなれませんし、司法書士は簡易裁判所における代理権しかないため、高額の慰謝料請求について代理人になることはできません。
    そのほか、そもそも浮気相手の住所がわからない場合、携帯電話番号が分かるときは、弁護士は弁護士会を通じて携帯電話会社に開示請求を行えるなど、弁護士にしかできないこともあるのです。

  2. (2)不倫慰謝料の請求を弁護士に依頼するデメリット

    弁護士に依頼する際には、司法書士や行政書士に依頼した場合に比べて、どうしても費用が高額になるというデメリットがあります。
    ただし、さきほど紹介したように、弁護士は、行政書士、司法書士と比べて広範な権限が認められていますので、費用に見合った法的サービスを受けることができるといえます。
    弁護士事務所により手段や費用は違いますので、まずはどのような手段をとり、どれくらいの費用がかかるかを相談してみればいかがでしょうか。

4、まとめ

まとめ

不倫の慰謝料請求は浮気により受けた精神的苦痛をお金で償ってもらう、損害賠償です。個別具体的なケースにより請求できる金額は大きく異なるので、最新の判例に精通した弁護士に相談するとよいでしょう。慰謝料請求の時効が迫っている場合には内容証明郵便を送ったり話し合ったりしていては時間切れとなってしまう可能性もあります。その場合は弁護士に依頼して早急な対応を取られることをお勧めします。
ベリーベスト法律事務所札幌オフィスには、不倫の慰謝料請求の取扱実績が豊富な弁護士が在籍しています。
不倫の慰謝料問題についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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