弁護士が教える離婚で父親が親権を得るために知っておくべき3つのこと

2019年02月07日
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弁護士が教える離婚で父親が親権を得るために知っておくべき3つのこと

北海道の離婚率は、平成27年の「人口動態総覧(率)」によると、人口1000人あたり2.09件で、全国3番目の多さになっています。さらに都市別でみると、札幌市は1000人あたり2.31件で、離婚率は主な都市の中でも全国2位の多さとなっています。離婚の際、子どもの親権が問題になることも多いでしょう。

子どもが小さい場合は、母親が子どもの全般的な生活の面倒をみていることが多いことから、母親に親権が認められる場合がほとんどです。しかし、父親が小さい子どもの親権を勝ち取るケースもあります。

どのようなとき父親が親権をとれるのか、どうしたらよいのかなど、判断基準から弁護士が解説します。

1、「親権」はだれのためにあるのか

そもそも親権とは、民法第820条から第824条に定められている権利です。子どもの監護および教育の権利義務を指します。

具体的には、子どもの生活面すべてにおける監督保護や養育を行う「身上監護権」と、子どもの財産を管理したり、財産にまつわる法的な行為を代行したりする「財産管理権」を合わせたものが「親権」と呼ばれています。

  1. (1)親権の判断基準とは

    民法第820条では、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育を行う権利を有し、義務を負う」と定めています。

    したがって、裁判所などが親権を決める際も、「子の利益」になるかどうかをもっとも重視しているといえるでしょう。つまり、親権を判断する際は、基本的に子どもの福祉、つまり、母親と父親のどちらが親権者になるほうが子どもの育成によりよいか、ということが考慮されます。

    一般的には、子どもを監護する意思、監護する力があるほうが親権者になります。しかし、両者が同程度の場合、過去の判例では、次のようなことが判断基準として重要視される傾向があるようです。

    • 生後から今に至るまで、主に育児を担ってきた親が優先される
    • 離婚後も生活環境が大きく変わらないこと
    • 子どもの考えを尊重する
    • 兄弟姉妹を分けない


    しかし、家庭裁判所ではこの他にも、次のようなことを考慮します。

    • 監護を助ける祖父母などがいるかどうか
    • 子どもに接する時間をどれだけ作ることができるか
    • 離婚後の経済力(支払われる予定の養育費も含み判断されます)
    • 肉体、精神ともに健康であるかどうか
    • 暴力や無視、放置など虐待とみなされる行動をした経験はないか


    最終的には個別のケースごとに判断されることになります。先に紹介したような判断基準を満たせば間違いなく親権を持つことができる、というようなものではありません。

  2. (2)継続性の原則

    親権の判断基準の中には、「継続性の原則」があります。これは、両親の離婚によって、子どもの環境が変わることをできるだけ少なくしようという配慮のことです。

    そこで、監護養育を主に継続して行っていたものを親権者とすると、普段子どもの世話をしている割合が多い母親が、親権者として選ばれる傾向があります。また、面会交流は、特別な理由がない限り、子どもにとっては利益があることとみなされます。したがって、積極的な面会交流を拒む側の親権が認められないケースもあるでしょう。

2、親権の決め方は?

離婚する際、未成年の子どもがいるときは、親権者を決めなければ離婚届の提出ができません。したがって、親権を決めることは離婚する際の必要事項ともいえます。

具体的には、どのように決めていくのかを知っておく必要があるでしょう。

  1. (1)まずは親権について協議する

    協議離婚を目指す場合は、まずは話し合いを行う必要があります。離婚届に記入する親権者をどちらにするかを決めましょう。

    子どもの父親と母親で行う、親権についての話し合いの内容や手順について、法的な決まりや基準はありません。子どもの親として、子どもの将来を考慮して話し合いを進めることになるでしょう。冷静な話し合いができなかったり、いくら話し合っても結論が出ない状態であったりすれば、調停を目指すことになります。

    なお、一度決めた親権者を変更するためには、非常に難しい手続きや交渉が必要となります。早く離婚したいと考える方もいるかもしれませんが、親権が決まるまでは慎重に行動する必要があります。

  2. (2)話し合いで決まらなければ調停へ

    協議してもどちらも親権を譲らないときは、調停を通じて話し合いをすることになります。調停では、男女1名ずつの調停委員がいる部屋に呼ばれ、ひとりずつそれぞれの主張を行います。「子どもにとって、自分が親権をとったほうがなぜよいのか」ということを、第三者でも納得できるように説明する必要があるかもしれません。場合によっては、証拠が求められることもあるでしょう。

    親権をとれなかったときの面会交流や養育費についての話し合いも、調停で行うことができます。調停を通じて親権が決まり、離婚に合意した場合は調停離婚となり、決まった内容を記載した「調停調書」と呼ばれる書面が発行されます。公的な書類となるため、しっかり保存しておくとよいでしょう。

  3. (3)調停で合意できないときは裁判所に判断を仰ぐ

    調停で話し合ってもお互いの落としどころが見つけられないときは、裁判所に判断を得ることになります。原則、調停で話し合いをしたときの内容が加味されるため、調停を行う前にはある程度、あなたの主張が正しいという根拠となる証拠を準備しておいたほうがよいでしょう。

    なお裁判所は、前述したとおり、母親と父親のいずれが親権を持つのが子どもの福祉にとってよいのかということが重要視して、判断を下します。

3、父親が親権を勝ち取るために

親権が裁判や調停で争われる場合、どのような主張をしたとしても、客観的に、親権者はこれまでの養育環境から判断されることになります。

親権をとるためには、普段から意識せずとも次のような行動をしている必要があるでしょう。

  1. (1)主体的にかかわる

    ●子どもと一緒に過ごす時間を増やす
    親権者に選ばれるのは、子どもと一緒に過ごす時間が長くなる親のほうです。そのため、子どもと過ごす時間を確保する具体的な方法などを考え、実践するようにしましょう。

    ●子どもの意思
    子どもの意思も、親権者を選ぶための判断基準として考えられます。特に、15歳以上の子どもの場合は進学などの事情もあり、その意思が尊重されます。このため、普段から子どもが父親と暮らしたいと思うように接しておくことが大切です。

    ●子どもへの愛情
    客観的にわかるように、子どもの養育にどのように貢献したか、記録を残すことも大事です。

  2. (2)子どもの監護体制を整える

    ●経済力
    経済力があるほうが親権者にふさわしいと、一般的には考えられます。しかし、父親が親権を持たなくても、母親が親権を持って教育費などを父親に要求することによって対応できます。よって、現状の所得のみが判断基準となることはありません。注意しましょう。

    ●心身の健康
    責任を持って子どもを養育するためには、心身が健康であることが大切です。

  3. (3)別居する場合は子どもと住む

    離婚の前に別居する場合は、あなた自身が子どもと一緒に住みましょう。「継続性の原則」によって、それまでの子どもの生活環境が重要視されるため、親権者として有利になります。

4、まとめ

親権を持ちたいと考えることは、子どもを愛する親としてごく自然のことです。しかし、親権をとった親は子どもの利益のために行動することが求められます。つまり、離婚後においても、現状の「子ども自身の生活」をどれだけ変えずに守ることができるかが重要視されるということです。

父親が親権を持つためには、ある程度状況を変える覚悟がなければ難しくなることもあるかもしれません。離婚に際し、子どもの親権がほしいと悩んでいる方は、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスへご相談ください。親権問題に多く対応した経験を持つ弁護士が状況に適したアドバイスを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています