産後クライシスで夫との離婚を考えたときに知っておきたいこと

2018年05月14日
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産後クライシスで夫との離婚を考えたときに知っておきたいこと

子どもを出産する前は、夫婦関係も良好で幸せいっぱいだったのに、子どもが生まれた途端、夫婦仲が悪くなってしまったという方はいませんか?実は、これは産後クライシスという夫婦に訪れる危機で、意外と多くの夫婦が経験しています。今回は、産後クライシスの原因や対策、産後クライシスで離婚を考えるときに知っておくべきことをご説明します。

1、産後クライシスとは?

産後クライシスとは?
  1. (1)産後クライシスとは、出産後の夫婦に訪れる悪影響を及ぼす現象のこと

    産後クライシスとはどのようなものなのでしょうか。

    産後クライシスとは、出産後に夫婦関係が急速に悪化し、その後の夫婦関係にも悪影響を及ぼす現象のことを指します。夫婦間だけでなく、社会生活にも影響を及ぼすと言われています。最悪の場合は、離婚に至る夫婦もいます。
    特に、初産では今まで経験したことのないことをたくさん経験します。赤ちゃんが生まれて幸せなこともあれば、わからないことばかりで苦労することも多くなります。その結果、鬱のような症状が現れ、結果として夫婦関係にも影響を及ぼすのです。

    産後クライシスという言葉自体は、最近できた言葉です。NHKの朝の番組で取り上げられ、大きな反響を呼んだことから有名になりました。

    岡山大学大学院保険学研究科の調査では、岡山県内の保育園などの施設にて353人の意見を集めました。産後クライシスについて当てはまる(かなり当てはまる・どちらかといえば当てはまる)と答えた人は、5割もいることがわかったのです。
    (参考文献:朝日新聞

  2. (2)産後うつや産後ブルーとは違う?

    産後クライシスと類似する用語に、「産後うつ」というものがあります。「産後ブルー」も基本的には同じ意味です。

    これらの用語と産後クライシスは同じものと認識する方がいらっしゃいますが、実際は異なります。産後うつ(産後ブルー)については、出産によるホルモンバランスの変化が主な原因です。ホルモンバランスが変化することにより、精神的不安定などを引き起こし、産後うつ(産後ブルー)になると言われています。

    他方、産後クライシスは、ホルモンバランスだけの問題ではありません。産後クライシスは、出産後の環境の変化などとも複雑に結びついており、何か1つが原因と言えないのが特徴です。出産に伴い、体の変化だけでなく、夫の育児に対する不協力、慣れない子育てへの不安などから引き起こされると考えられています。

    このように、産後クライシスとは、多くの要因が結びついて訪れる夫婦関係の危機のことです。多くの方は、産後うつという過程を経たあとに、産後クライシスを経験します。

2、こんな症状は産後クライシスの可能性あり!

こんな症状は産後クライシスの可能性あり!
  1. (1)産後クライシスの症状を自分でチェック

    実際に、産後クライシスの症状をチェックしてみましょう。

    産後クライシスの具体的な症状は、次のようなものです。

    • 子供を産んでから夫が嫌いになった
    • 夫が育児を手伝ってくれず、腹が立つ
    • 夫婦関係を結ぶのが嫌
    • 夫に触られるのも嫌
    • 夫に出産前と別人のようだといわれる
    • 夫に対し辛く当たってしまう自分が嫌だ
    • 話し方がキツくなった
    • 小さなことにイライラしてしまう
    • とにかく毎日が不安
    • 鬱のような症状がある(悲しい、苦しい、寂しいなど)
    • 離婚を考えてしまう

    もちろん、これらに当てはまるからといって、必ず産後クライシスだというわけではありません。しかし、このような症状にいくつも当てはまる場合は、産後クライシスの可能性が高いと言えます。

3、なぜ産後クライシスは起きる?よくある3つの原因

なぜ産後クライシスは起きる?よくある3つの原因

次に、産後クライシスによくある3つの原因をご説明します。

  1. (1)ホルモンバランスの急激な変化

    まず、第一の原因とされているのがホルモンバランスの変化です。

    影響を与えているホルモンは3つあります。具体的には、エストロゲン、プロラクチン、オキシトシンというホルモンです。エストロゲンは女性らしさを作り出すものであり、プロラクチンは母乳の分泌を促す一方で性欲を減退させます。オキシトシンは愛情を脳に感じさせるもので、子どもを守る意識を高める一方、子ども以外に対して攻撃的になる作用があります。

    出産後は、これらのホルモンの量が変わります。プロラクチンとオキシトシンが増え、ホルモンの相互作用より、性欲はなくなり、子どもを守るために他者を敵対視するようになるのです。他方、エストロゲンは減り、生理前のような精神的不安定を招くようになります。

    ホルモンバランスの急激な変化は、産後クライシスに大きく影響しているのです。

  2. (2)夫が育児に非協力的

    夫が育児に非協力的であることが原因になると言われています。

    出産後は、体の状態も不安定であり、妻が夫に育児への協力を求めます。しかし、夫がなかなか思ったように育児をしてくれず、イライラが募っていくようになります。育児を手伝ってくれないだけではなく、家事すらしないという家庭では、夫が産後クライシスの主な原因となることもあります。

    実際の夫の育児への参加状況だけが影響するのではありません。
    メディアで取り上げる「イクメン」という言葉、そして友達の夫と比較することで、余計に辛くなってしまうこともあるのです。世間には「イクメン」がたくさんいるのに、なんでうちの夫は協力してくれないんだろう?という感情が、余計に自分自身を苦しめてしまうケースがあります。
    このように、夫が育児に非協力的であることや、周囲の状況と比較してしまうことが原因の1つになっています。

  3. (3)子育てへの不安

    子育てに休みはありません。睡眠中も子どもが泣けば起きてミルクをあげ、日中もオムツを替えたり、お風呂に入れてあげたり、一日中働きっぱなしの状態が続きます。睡眠時間が少ない日が数ヶ月と続けば、誰だって精神状態は不安定になります。出産前は自由な時間もたくさんあったのに、産後自分の時間はゼロという方も少なくありません。そんな子育ての大変さが、「自分にできるのかな?」という不安をうみます。

    初産の場合は、もっと不安が募ります。全てが初めてのことで、何が正しいかもわからないことが多いでしょう。

    • 子どもが泣きやまない
    • 何を欲しがっているかわからない
    • どう育てるのが正解かわからない
    • 誰に相談すればいいかわからない

    このような状況の中で、子育てを行っていくことになります。夫が協力的でない場合は1人で解決しなければいけない状況に追い込まれます。子育てに対する漠然とした不安が、産後クライシスを作り出す原因となっているのです。

4、産後クライシスを乗り切る方法は?4つの対策方法

産後クライシスを乗り切る方法は?4つの対策方法

次に、産後クライシスを乗り切るための4つの対策をお伝えします。

  1. (1)夫婦で不安なことを話し合う

    まず、大事なことは夫婦で不安を共有することです。

    女性は、育児に対する不安を抱えていても、なかなか口に出して男性に伝えないことが多いのです。夫に、育児のこと、体調のこと、夫婦関係のこと、どんな些細なことでもいいので、伝えてみましょう。コミュニケーションをとることで、不安は少しずつ消化できます。夫の受け答えにイライラしてしまうこともあるかもしれませんが、少しだけ我慢をして自分の感情を伝えてみてください。これだけで夫婦関係が改善し、あなた自身の心も楽になります。

  2. (2)ホルモンのせいだと認識する

    イライラしてしまったときは、「ホルモンのせいだ」を言い聞かせましょう。

    ホルモンバランスが影響しているとわかっていても、実際イライラしているときは、このことを忘れがちです。目の前のイライラする状況に囚われてしまい、余計に怒りが増幅します。これを防ぐためには、「少し今日はイライラするかも?」と、体調の変化に自分で気付けてあげることが重要です。カッとなってしまったときは「ホルモンのせいだ」と自分に言い聞かせましょう。イライラや怒りが頂点に達したときはコントロールするのが難しいため、普段から言い聞かせることが大切です。

  3. (3)夫を他人と比べず、認める

    男性は育児に非協力的な方が多い傾向にありますが、女性も1人で頑張りすぎる傾向にあります。子どものことを全て自分でやってしまおうと考え、夫が育児に入る隙を与えない状況を作り出してしまうこともあります。夫が協力しようとしてくれたときは、素直に受け入れ、小さなことであっても褒めてください。褒めることで、育児参加を促すことができます。
    また、夫を他人と比較しないことも大事です。現実に「イクメン」はそれほど多くありません。厚生労働省の調査によると、2016年度の男性の育休取得率は3.16%です。毎年少しずつ上がってはいるものの、積極的に育児に参加できている夫は少ないのが現状です。
    イクメンと比較したところで状況は変わりません。状況を変えたいなら、夫と話し合い、少しでも育児に協力させることの方が大切です。

  4. (4)周囲や医者に相談する

    どうしても辛くなったら周囲や医師に相談しましょう。

    1人で抱え込んでしまうと、余計に辛くなってしまいます。産後うつかもしれない、産後クライシスに陥っているかもしれないと悩んでしまう場合は、友達や家族に相談するのが適切です。話をするだけで気が楽になることもあります。子育てをしている友達がいる場合は、子育ての悩みについて打ち明けてみましょう。意外にも、同じような悩みを抱えていることが多いものです。周囲に誰も相談できる人がいない場合は、検診時に医師に伝えるか、自治体ごとにある相談窓口に相談してみましょう。

5、産後クライシスで離婚を考えた方がいい4つのケースとは?

産後クライシスで離婚を考えた方がいい4つのケースとは?

最後に、産後クライシスで離婚を考えた方がよい4つのケースについてご説明します。

  1. (1)不倫行為があった

    産後クライシスの最中、夫の不倫が発覚することがあります。産後クライシスによって夫婦関係が冷え切ってしまい、セックスレスや不仲が原因で浮気に走ってしまうケースです。お子さんがいるため、離婚は慎重に考えるべきですが、浮気が本気になってしまったような場合は、家庭に引き止めるのも難しくなります。また、どうしても許せない、夫婦関係を改善できる見込みがない、というケースでは離婚を考えるべきでしょう。子育てがひと段落したら、弁護士に相談してみましょう。

  2. (2)DVをするようになった

    家庭内暴力がある場合は、すぐに離婚を考えるべきです。
    あなた自身に暴力を振るうことはもちろん許されませんが、それ以上に子どもに暴力を振るうようなことは防がなければいけません。お子さんが小さい場合、暴力が原因で不幸な出来事が起きてしまうこともあります。子どもを守るためにも、離婚を考えてみてください。

    まずは、家族や友人に相談してみましょう。そして、できるだけ早く離婚手続きを進めることをおすすめします。「夫が怖くて離婚できない」という場合は、弁護士に相談してみましょう。

  3. (3)産後クライシスを理解してくれない

    夫が、産後クライシスを理解しない場合も、離婚を検討する価値はあります。

    夫婦関係が冷え切ってしまった場合、まずは夫婦で話し合いをすることが大切です。お互いの不満を受け入れることで、少しずつ夫婦関係の改善を図ります。しかし、話し合いを行った結果、「夫が産後クライシスを理解してくれない」という状況では、打開策がなくなります。

    コミュニケーションをとることを夫が拒否した場合には、離婚を考えた方がよいでしょう。

  4. (4)夫が子育てに対し、極端に非協力的

    「夫に子育てへの参加を求めても、協力してくれない」という状況もあるでしょう。

    平日は夜遅く帰ってくるため、育児参加を期待できないという場合でも、休日なら少しくらいは手伝えます。夫に一切協力する気がないという場合は、離婚を考えてみるべきです。なぜなら、産後クライシスを乗り切るには、夫の子育てへの協力が必要不可欠だからです。あまりに非協力的である場合や、協力する気すらないという場合は、今後の結婚生活にも不安がつきまといます。このようなケースの場合は、一度離婚について法律事務所に相談することをおすすめします。

    これら以外でも、生活費を入れない、家に帰ってこないなど離婚の一般的原因がある場合は、離婚を考えてみるべきでしょう。

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