離婚調停の代理人は親族でもなれる? 代理人に全て任せることは可能?
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北海道札幌市における2020年中の離婚件数は、3691件でした。その内訳は、協議が3261件、調停が291件、審判が68件、訴訟上の和解が40件、訴訟の判決が31件となっています。
配偶者との離婚協議がまとまらない場合、次のステップとして、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てることになります。離婚調停を行う際には、手続きのサポート役として代理人を選任する方が多くおられます。弁護士を代理人とすることが一般的ですが、事情によっては、親族も代理人になることができるのです。
離婚調停の代理人を立てる場合には、代理人との間でよく意思疎通を図ったうえで、早期の離婚成立を目指しましょう。本コラムでは、離婚調停の代理人を選任する際の注意点について、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚調停とは?
離婚調停とは、夫婦間の離婚協議では合意が成立しない場合に、家庭裁判所に場を移して話し合いを続けるための手続きです。
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(1)離婚手続きの種類
離婚を成立させる手続きには、以下のようなものが存在します。
- ① 協議離婚
夫婦が直接話し合って、離婚やその条件を取り決める手続きです。 - ② 調停離婚
家庭裁判所の離婚調停を通じて、調停委員を仲介者として話し合った末、離婚やその条件を取り決める手続きです。 - ③ 審判離婚
離婚調停が不成立となった場合に、家庭裁判所が審判によって離婚を成立させる手続きです。
なお、審判離婚がなされるのは、調停で細かい部分の条件が折り合わなかった場合に限られます。
調停の後にも重要なポイントで対立が残っている場合には、家庭裁判所の審判は行われません。 - ④ 訴訟上の和解による離婚
夫婦のいずれかが離婚訴訟を提起した後、裁判官の提案に応じて夫婦が和解して離婚を成立させる手続きです。 - ⑤ 裁判離婚
離婚訴訟の判決によって離婚を成立させる手続きです。
離婚調停は、協議離婚を試みたもののうまくいかなかった場合に、訴訟などに進行する前に引き続き離婚について夫婦が話し合いを行うための場として、利用されています。
- ① 協議離婚
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(2)離婚調停の参加者
離婚調停の参加者は、以下のとおりです。
- ① 当事者
離婚について話し合う夫婦本人です。 - ② 代理人
各当事者は、代理人を選任することができます。
代理人は調停期日に同席し、意見の代弁などを通じて、当事者をサポートします。 - ③ 調停委員
学識経験者などから選任される、離婚調停の仲介者です。
客観的な立場から当事者双方の主張を聴き取り、調整を図って解決を模索します。 - ④ 裁判官・家事調停官
離婚調停の経過を踏まえて、調停案を作成して当事者に提示します。
そのほか、調停手続きに関する各種決定を行ったり、離婚に関する審判を行うかどうか判断したりするなど、離婚調停の総括者としての役割を果たします。
- ① 当事者
2、親族は離婚調停の代理人になれるのか?
離婚調停に臨む際には、代理人を選任した方が心強い場合が多いでしょう。
代理人には弁護士のほか、親族を選任できる場合があります。
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(1)離婚調停の代理人になれる人
離婚調停の代理人になれるのは、以下のような人です(家事事件手続法第22条第1項)。
- ① 法令により裁判上の行為をすることができる代理人
未成年者の法定代理人や、後見開始の審判がなされた人の成年後見人などが該当します。 - ② 弁護士
法律に精通した専門家として、離婚調停の代理権が認められています。 - ③ 家庭裁判所の許可を得た人
上記以外の人についても、個々の事情に応じて、家庭裁判所が個別に代理権を認める場合があります。
- ① 法令により裁判上の行為をすることができる代理人
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(2)裁判所の許可を得れば、親族も代理人になれる
離婚調停の代理人に親族を選任したい場合、家庭裁判所に「代理許可申請」を求める必要があります。
家庭裁判所は、「本人の利益を不当に害しないか」「手続きを混乱させたりするおそれがないか」など、代理人の適格性について審査を行います。
その結果、問題ないと判断されたら、親族を代理人に選任することが許可されるのです。
本人と近しい間柄にあり、かつ冷静に論理立てて話ができる親族であれば、離婚調停の代理人になる許可を得られる可能性は高いでしょう。 -
(3)裁判所の許可が取り消される場合もある
法定代理人や弁護士以外の者を離婚調停の代理人とすることの許可は、家庭裁判所の判断によって取り消されることがあります(家事事件手続法第22条第2項)。
たとえば、代理人が調停期日において取り乱すなどして「離婚調停の進行を阻害している」と家庭裁判所に判断された場合には、代理人選任の許可が取り消される可能性がある点に注意してください。
3、離婚調停を代理人に一任することはできるか?
離婚の当事者のなかには「関係の悪化した配偶者と顔を合わせたくない」などの理由で、離婚調停に出席せず、代理人に対応を一任することを希望される方がおられます。
以下では、本人は何もせず、離婚調停への対応を代理人にすべて任せることができるかどうかについて解説します。
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(1)期日の出席は代理人に任せてもよい
離婚調停の代理人には、離婚調停の手続きに参加する権限が与えられています(家事事件手続法第24条第1項)。
この代理人の権限には、「本人に代わって」調停期日に出席することも含まれています。
したがって、本人が離婚調停に出席せず、代理人に対応をすべて任せることも、法的には可能です。 -
(2)本人が出席しない場合、手続きが遅延する可能性に要注意
代理人はあくまでも「本人のために、本人の意向を尊重して対応する」という立場にあります。
たとえば、相手方や調停委員から調停期日において新しい提案がなされたとします。
本人が離婚調停に出席しておらず、代理人しか出席していない場合には、新提案への対応をその場で話し合うことができません。
この場合、代理人はいったんその提案を持ち帰って、本人との間で協議する必要があるのです。
このように、離婚調停に本人が出席していないと、調停期日の話し合いや調整に時間がかかってしまい、離婚成立までに長期間を要する可能性が高くなります。
調停期日では、調停委員が片方ずつ当事者を呼び出して話を聞くため、配偶者と顔を合わせる機会はほとんどありません。
「離婚を早期に成立させる」ということを重視するなら、代理人を選任する場合であっても、できるだけ本人も同席しておくことが望ましいでしょう。
4、離婚調停の代理人を弁護士に依頼するメリット
これまでに説明してきたように、親族を離婚調停の代理人に選任することは可能です。
しかし、適正な条件を取り決めたうえで早期の離婚成立を目指すなら、代理人は弁護士にすることが安心です。
以下では、弁護士を離婚調停の代理人に選任することのメリットを解説します。
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(1)離婚条件を漏れなく取り決めることができる
離婚後のトラブルを未然に防ぐためには、以下のような離婚条件について漏れなく取り決めることが大切です。
- 財産分与
- 年金分割
- 婚姻費用
- 慰謝料
- 親権
- 養育費
- 面会交流の方法
弁護士であれば、論点を整理しながら話し合いを進めて、各離婚条件について漏れなくバランスの良い合意を形成できるようにサポートすることができます。
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(2)適正な離婚条件の水準がわかる
各離婚条件には、個々の事情に応じて、裁判例などに照らした適正な内容や水準が存在します。
弁護士は、裁判例や事案の分析を通じて適正な離婚条件を導き出し、それを基準として離婚調停の対応に当たることができます。
また、相手方から理不尽な提案がなされた場合にも、法的な観点から適切に反論することができるのです。 -
(3)離婚訴訟に移行した場合も安心して任せられる
夫婦間で主張の対立が激しい場合には、離婚調停が不成立となり、離婚訴訟に移行せざるを得ない事態も想定されます。
離婚訴訟では、証拠に基づく厳密な立証が必要となるため、離婚調停以上に法的な専門知識が求められます。
法律の専門家である弁護士を代理人とすれば、離婚訴訟に移行した場合にも、裁判所に対して自らの利益や主張を説得的に伝えることができます。
特に配偶者との対立が深刻で関係の亀裂が深い場合には、協議や調停の段階から弁護士に依頼することをおすすめします。
5、まとめ
離婚調停の代理人には、法定代理人や弁護士のほか、家庭裁判所の許可を得れば親族を選任することもできます。
「弁護士費用を節約するため」などの理由から、親族を代理人に選任しようと考える方もおられるでしょう。
しかし、親族を代理人とすることには「相手方の提案が妥当かどうか判断するのが難しい」「代理人が離婚調停の手続きに戸惑ってしまう可能性がある」などのデメリットに注意しなければいけません。
弁護士に離婚手続きを依頼すれば、調停でも合意が成立せず離婚訴訟に発展した場合の対応も含めて、早期の離婚成立を目指すためのサポートを受けられます。
配偶者との離婚をご検討中の方は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています