ギャンブル癖のある夫と離婚したい!ギャンブル依存は離婚理由になる?
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札幌市保健所が公表している人口動態統計によると、令和4年に札幌市で離婚した夫婦の件数は3455件でした。また札幌市の離婚率は1.75となっており、全国の離婚率1.47に対して、札幌市の離婚率は比較的高いことがわかります。
離婚の原因は夫婦によってさまざまですが、そのひとつに配偶者のギャンブル癖や、ギャンブルによる借金が考えられます。
パチンコや競馬などを娯楽として楽しむ範囲では問題は起きませんが、ギャンブルに依存して生活に支障をきたすようになった場合、どのように対処したらよいのでしょうか。
本記事では、ギャンブル依存症を理由として離婚はできるのか、慰謝料や養育費を請求できるのかなどを、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。
1、ギャンブル癖を理由に離婚はできる?
夫のギャンブル癖を理由に離婚したいと思っても、夫が離婚を受け入れない場合は離婚できないのでしょうか。
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(1)法律で定められた離婚理由
民法では、夫婦の一方が離婚を拒んでも、一定の理由がある場合には離婚の訴えを提起できるとされています(民法770条1項)。一定の理由とは次の5つです。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 悪意の遺棄をされたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他、婚姻生活の継続が難しい重大な事由があるとき
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(2)ギャンブル癖が直接の離婚理由とはならない
ギャンブル癖は直接の離婚理由にはあたらないため、ギャンブル癖や借金があるからといって、直ちに離婚が認められるわけではありません。
ただし、夫婦にはお互い協力して結婚生活を送る義務があるにもかかわらず、仕事もせずパチンコや競馬ばかりしている、生活費までギャンブルに充てているなど、客観的に見て婚姻生活を続けるのが困難とされる場合には、離婚理由として認められる可能性があります。
現時点で離婚を考えている場合はもちろん、そうでない場合にも、ギャンブルにつぎ込んだ金額やギャンブルの頻度など、夫の状況がわかる証拠は残しておくのがよいでしょう。
2、ギャンブル依存が原因で離婚した場合、慰謝料・養育費は請求できる?
ギャンブル依存でお金がない場合でも慰謝料や養育費は請求できるのでしょうか。
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(1)慰謝料請求について
慰謝料とは、受けた精神的苦痛に対して支払われる賠償(金銭)をいいます。ギャンブル依存を理由に慰謝料が認められるかは、受けた苦痛の程度や状況などによって変わってきます。
また、慰謝料請求が認められても、相手が自己破産してしまった場合には受け取れなくなるので注意しましょう。 -
(2)養育費請求について
養育費は自己破産をしても支払い義務が継続します。自己破産後も子どもの親であることに変わりはないからです。
慰謝料や養育費を支払ってもらうためには、相手の支払い能力を考慮したうえで金額を算出することが重要です。
お金がない相手にどのように支払わせるかはとても難しい問題となるため、実績が豊富な弁護士に相談するのが望ましいでしょう。
お問い合わせください。
3、ギャンブル依存症とはどんな状態?
ギャンブル依存症は精神疾患のひとつで、世界保健機関(WHO)の公式名称は「病的賭博」とされています。
その名の通り、仕事を休んでまでパチンコに行く、負けた分を取り戻すために借金を重ねるなど、病的に賭博(ギャンブル)にのめり込む状態を指します。
趣味や娯楽との線引きが難しく、また、病院での診断をもって「ギャンブル依存症である」と判断されますが、本人に自覚がないことからそもそも受診を拒むケースも多く、改善は容易ではありません。
軽度のギャンブル依存症であれば、話し合いで回復する可能性もあるでしょう。
しかし、依存症の本人は「やめたくても、やめられない」状態にあるため、「ギャンブルをやめてほしい」と伝えられたことで怒りだすなど、夫婦関係が悪化する可能性もあります。
そういった場合には病院や専門機関での適切な治療が必要と考えられます。消費者庁に依存症の相談窓口があるため、まずはそちらに問い合わせるのもよいでしょう。
4、ギャンブル依存症の夫に対して妻ができること
夫にギャンブル依存症の疑いがある場合に、妻ができる対処法について紹介します。
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(1)ギャンブル依存症が回復に向かうよう配慮・治療をする
まずは夫に自分がギャンブル依存症であることを理解してもらうことが回復への第一歩となります。
病院や専門機関で適切な治療を受けるのが理想ですが、夫が病院などへ行くことを拒む場合、妻だけで相談に行くのもよいでしょう。 -
(2)妻がお金を管理する
可能であれば、妻がお金やクレジットカードの管理をし、夫には1日〇円など、決まった金額を渡すのがよいでしょう。お金を要求されても必要以上に渡してはいけません。
ただし、手元のお金では足りなくなった夫が借金してしまうケースも考えられるため、すでに借金をしていないか調べることも大切でしょう。借金があった場合の対処法は後述します。 -
(3)子どもへの影響に配慮する
夫婦に子どもがいる場合、夫のギャンブル依存が子どもに影響しないよう配慮することが大切です。
ひとつの選択肢としては、離婚が挙げられます。ただし、ギャンブル依存の夫だからといって、必ずしも離婚することが子どものためになるとは限らないことから判断は難しいでしょう。
生活費までギャンブルに使っている場合や借金がある場合、暴力がある場合などには、離婚を視野に入れることも有効といえます。そのような事情がある場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。
5、夫に借金があった場合の返済はどうなる?
夫に借金があることが発覚した場合、どのように対応すればいいのでしょうか。妻の返済義務についても解説します。
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(1)借金の金額や借入先を正確に把握する
借金が発覚した場合、「金額」・「どこから(誰から)借りているのか」・「借りている期間」などを夫に確認しましょう。
つい感情的になってしまいがちですが、正直に話してもらうためにも責めるような口調は避け、落ち着いて尋ねるようにしましょう。妻が協力姿勢を見せることで、夫が話しやすい環境となることもあります。
可能であればあらかじめ弁護士に相談し、借金の金額によっての対応や正直に話してもらえない場合の対応など、アドバイスを受けることをおすすめします。 -
(2)夫がギャンブルで作った借金、妻の返済義務は?
夫個人の借金であれば、基本的には妻に返済義務はありません。
また、離婚時の財産分与(結婚生活中に夫婦共同で築いた財産をそれぞれの貢献度に応じて分けること)の対象にもなりません。
ただし、「生活費に充てるための借金」の場合と「妻が借金の保証人になっている」場合には例外となり、以下で解説します。 -
(3)勝手に妻を保証人にしていた場合
勝手に妻を保証人としていた場合はどうなるのでしょうか?夫が妻の本人確認書類や印鑑を勝手に持ち出し、借金していたケースなどです。
通常は借入先である金融機関が電話による本人確認を行うため、そのようなことは起こらないはずです。万が一、知らない間に保証人にされていた場合にも返済義務はありません。
しかし、知らない間に保証人となっていた場合でも、債権者(金融業者などお金の借入先)からの請求に応じて一部でも返済すると、自分が保証人であると認めたことになってしまうため注意が必要です。
身に覚えのない請求には決して応じないようにしましょう。
また、請求を無視し続ければ問題ないかというとそうではありません。債権者は妻のことを保証人だと思っているため、妻が「私は保証人ではない」と証明する必要があります。
具体的には、内容証明で返済義務がない旨を通知するなどの対応を行います。不安なことや不明点があれば、自分だけで解決しようとせず弁護士に相談しながら進めるのがよいでしょう。
6、まとめ
夫がギャンブルに依存し、生活費までギャンブルにつぎ込んでしまうような生活が続くと、離婚を考えるようになって当然でしょう。
しかし、いざ離婚となると、その後の生活のことや子どものことなど、不安や問題が出てくるものです。
ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスでは、ギャンブルによる借金問題や離婚問題に詳しい弁護士が、それぞれの状況を考慮したうえで適切なアドバイスや提案を行っています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
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