離婚したけど同じ人と再婚したいとき、知っておいたほうがよい豆知識

2022年07月11日
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離婚したけど同じ人と再婚したいとき、知っておいたほうがよい豆知識

札幌市が公表している人口動態に関する統計資料によると、令和元年の札幌市内における婚姻総数は、1万117件でした。そのうち、夫の再婚の件数が2463件、妻の再婚が1940件あり、婚姻総数に占める夫の再婚件数の割合が24.3%、妻の再婚件数の割合が19.2%となっています。男女とも年々再婚割合が増えてきていますので、離婚ともに再婚も身近な出来事になっているといえます。

離婚をした後、そのまま独身の状態で生活する人もいれば、再婚をして新たなパートナーを見つけるという人もいます。そして、珍しい事例ではありますが、離婚をした元配偶者とよりを戻して再婚をするというケースもあります。

元配偶者と再婚する場合には、再婚禁止期間、婚姻時の姓、戸籍などに注意しなければいけません。再婚時に焦ることのないように、事前からしっかりと把握しておくことが大切です。本コラムでは、同じ人と再婚をする場合に知っておいた方がよい豆知識について、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。

1、再婚禁止期間でも同じ相手なら再婚可能

女性が再婚をする場合には、再婚禁止期間があります。
しかし、同じ相手と再婚をする場合には再婚禁止期間は適用されないのです。

  1. (1)再婚禁止期間とは

    再婚禁止期間とは、「離婚から100日を経過した後でなければ再婚することができない」という、再婚の制限を定めた期間のことをいいます(民法733条1項)。

    再婚禁止期間は、離婚後に生まれた子供の父親を確定するための制度であるゆえに、女性のみに適用されます。
    女性が再婚する場合には、原則として100日の経過を待たなければ再婚をすることができません

  2. (2)同じ相手なら再婚禁止期間の適用はない

    上述したように、女性のみに再婚禁止期間が定められているのは、父親の推定が重複することの不都合性を回避するためです。

    民法では、婚姻後200日経過または離婚から300日以内に子どもが生まれた場合には、夫の子どもと推定されるという規定があります(民法772条)。
    そのため、女性が離婚後すぐにし再婚をして子どもが生まれてしまうと、現在の夫との間だけでなく元夫との間の子どもとも推定されることになるという、不都合な事態が生じてしまいます。したがって、離婚後100日間は再婚を禁止することによって、このような不都合を回避しようとしたのです。

    しかし、離婚後100日以内に再婚をしたとしても、それが離婚をした相手と同じ相手であれば、父親の推定が重複するということはありません。いつ子どもが生まれたとしても推定される父親は1人だからです。
    そのため、同じ相手と再婚をする場合には再婚禁止期間の適用はなく、100日経過前であっても再婚をすることができます

2、再婚時、相手の苗字(名字)を自分の旧姓にすることはできる?

再婚時に、再婚相手の苗字を自分の旧姓にすることはできるのでしょうか。
以下では、離婚と姓に関する概要と、再婚時の姓の選択について説明します。

  1. (1)離婚と姓

    婚姻時に姓を改めた方については、離婚によって原則として旧姓に戻ることになります。これを「復氏」といいます。
    一般的には、婚姻時には、妻が夫の姓に変更することが多いでしょう。したがって、離婚による姓の問題は、多くの女性が直面するものといえます。

    ただし、婚姻期間が長い女性の場合には、離婚後に旧姓に戻ることによって仕事や生活上不都合が生じることもあります。
    そのため、離婚から3カ月以内に届け出をすることによって、婚姻時の姓を離婚後も名乗り続けることができます。これを「婚氏続称」といいます。

    婚氏続称は、「離婚の際に称していた氏を称する届」を市区町村役場に提出することによって、簡単に行うことができます。

  2. (2)再婚時の姓の選択

    日本では、選択的夫婦別姓制度は存在していませんので、再婚をする場合には、最初の婚姻と同様に夫または妻のどちらか一方の姓に改めなければなりません。
    そのため、再婚時に相手の苗字を自分の旧姓にするためには、以下のような方法をとる必要があるのです。

    ① 離婚時に復氏により旧姓に戻る
    離婚の際に、特別な手続きを行わなければ、婚姻によって姓を改めた人については、当然に旧姓に戻ることになります(民法767条1項、771条)。
    再婚時に再婚相手の苗字を自分の旧姓にするためには、婚氏続称の手続きをとるのではなく、復氏を行わなければいけません

    ② 再婚時に相手に自分の苗字に改めてもらう
    最初の婚姻では、自分が相手の姓を名乗ることになりましたが、再婚時には、相手に自分の姓を名乗ってもらうことによって、相手の苗字を自分の旧姓にすることが可能です。


    ただし、一度選択した姓については、離婚をしない限り変更をすることができません
    どちらの姓にするかについては、お互いによく話し合って慎重に決めるようにしましょう。

3、戸籍上にあるバツ(除籍)の記述はどうなる?

離婚をした事実は戸籍に記載されることになります。
以下では、同じ人と再婚した場合の、戸籍の扱いについて解説します。

  1. (1)離婚した場合の戸籍の記載

    離婚をした人について、「バツ1」、「バツ2」などと表現する俗語があります。
    この俗語の由来は、以前の縦書きの戸籍の記載方法として離婚をした場合には、戸籍の氏名の欄にバツ印が付けられたことにあります。

    現在は、コンピューター化された横書きの戸籍となっていますので、離婚をしたとしてもバツ印が付けられることはなく、「除籍」という記載がなされるのみです。
    ただし、このような離婚による除籍の記載がなされるのは、夫婦のうち戸籍の筆頭者になっている方の戸籍です。
    戸籍の筆頭者ではない人については、離婚によって婚姻前の戸籍に戻るか新たな戸籍を作ることになりますので、除籍の記載はされないのです

  2. (2)同じ人と再婚した場合でも変わらない

    再婚をする場合には、既に夫または妻を筆頭者とする戸籍が存在していますので、その筆頭者の氏を選択したときは、他方の方はその筆頭者の戸籍に入ることになります。
    たとえば、夫が筆頭者の場合には、離婚によって妻が除籍された旨の記載が戸籍にされることになり、再び同じ人と再婚をした場合には、妻との婚姻の事実が記載されることになります。
    同じ人が戸籍に出たり入ったりすることになりますが、離婚によって除籍されたという記載が消えることはなく、これまでも身分関係として戸籍の記載が残ることになるのです

    このような除籍の記載を消すことはできませんが、本籍地を変更(転籍)することによって、過去に離婚をしたという事実を隠すことは可能です。「戸籍謄本から同じ人と離婚や再婚をしたという事実が知られてしまうと困る」という方は、転籍という方法も検討してみるとよいでしょう。

4、同じ人と離婚と再婚をしたときの子どもの戸籍は?

以下では、前の配偶者との間に子どもがいる場合に同じ人と再婚をしたときの、子どもの戸籍の扱いについて解説します。

  1. (1)離婚と子どもの戸籍

    子どもがいる夫婦の場合には、離婚をする際にどちらが子どもの親権者になるかを決める必要があります。
    子どもの親権者になった親としては、当然、子どもも自分と同じ戸籍に入るものだと考えますが、実際は、親権者と戸籍には関連性はありません。
    そのため、離婚をしたとしても、子どもは原則として従来の戸籍に残ったままになるのです。したがって、父を筆頭者とする戸籍に母と子どもいる場合において、離婚後母が子どもの親権者になったとしても、子どもは父の戸籍に残ったままです。

    母が離婚後に旧姓に戻る場合には、母の姓と子どもの姓が異なる状態になり、生活していくうえで不都合が生じる可能性があります
    この場合には、以下の手続きをとることにより、子どもの姓を変更して、親権者である母親の戸籍に入れることが可能です。

    • 家庭裁判所に子の氏の変更許可の申し立て
    • 市区町村役場に入籍届の提出
  2. (2)同じ人と再婚した場合の子どもの戸籍

    同じ人と再婚をした場合の子どもの戸籍については、離婚時に子どもの戸籍に変更があったかどうかによって扱いが異なってきます。

    ① 筆頭者の戸籍から変更がない場合
    離婚をしても子どもの戸籍はそのままの状態で変化はありません。再婚によって、配偶者が再び筆頭者の戸籍に戻る場合には、以前と同様に戸籍に父と母と子どもが記載されることになります。
    そのため、子どもの戸籍に関して特別な手続きは不要です

    ② 筆頭者の戸籍から変更があった場合
    離婚後に親権を獲得した母親の戸籍に子どもを入籍させたような場合において、再婚によって母親が父親の戸籍に入る場合には、そのままでは子どもが父親の戸籍に入ることはありません。
    父を筆頭者とする戸籍に母が入籍することになりますが、子どもは母の従前の戸籍に残ったままとなります。
    子どもを再び父の戸籍に入れるためには、市区町村役場に入籍届を提出する必要があります。この場合には、離婚後の入籍届のような家庭裁判所の許可は不要です。


    なお、通常の再婚では、再婚相手に子どもがいる場合には、養子縁組の手続きをすることになりますが、同じ人と再婚をする場合には、養子縁組の手続きは不要です。離婚をしたとしても、親子関係は解消されることがないためです。

5、まとめ

離婚後も子どもを介して元配偶者との間で交流があると、相手の良さや自分の抱いている愛情を再認識して、同じ人と復縁・再婚をするということがあります。
このような場合には、通常の再婚では問題となる再婚禁止期間が適用されませんので、すぐに再婚をすることができます

再婚をするにあたっての手続きについて不安があるという方は、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスまで、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています