購入した家が欠陥住宅だったら? 損害賠償できるか否かを弁護士が解説

2019年09月30日
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購入した家が欠陥住宅だったら? 損害賠償できるか否かを弁護士が解説

札幌市のホームページでは、住まいに関するさまざまな相談窓口が紹介されていますが、中でも「住まいるダイヤル」は、欠陥住宅や住宅部品の不良・欠陥などについて建築士などの相談員に無料で相談できる窓口があります。家は一生の買い物といわれるように、長い期間住むことを想定した建築物です。しかし、その住宅が、住んでいるうちに十分な機能を果たしていないと判明した場合はどうすればいいのでしょうか?

欠陥住宅は金銭的な損害が大きく、生活の平穏を阻害する重大な問題です。損害賠償の請求をすべきなのか、契約の解除はできないかなど、対処方法にもいろいろあります。ますます悩ましいところでしょう。

みなさんの中にも、相談を検討している方がいらっしゃるかもしれません。そこで今回は欠陥住宅の問題について、欠陥の法的な意味や責任を追及する手段、問題解決までの流れを解説します。

1、欠陥住宅の意味

欠陥住宅という言葉はよく見聞きしますが、そもそも欠陥とはどのような状態を指すのでしょうか。

  1. (1)欠陥の判断基準

    法律では欠陥を「瑕疵(かし)」といい、住宅における瑕疵は大きく次の2つに分けられます。

    ●一般的に備わっているはずの品質や性能がない状態
    住宅は大前提として雨風をしのぐためにあるのに、買ったばかりの住宅で雨漏りが発生すれば、一般的に備わっているはずの品質や性能がないといえるでしょう。

    ●契約によって得られたはずの品質や性能がない状態
    特別な仕様にする契約を結んだのに通常の仕様だったときには、契約によって得られたはずの品質や性能がありません。

    どこからが欠陥にあたるのかの基準については、契約内容や法令、各種技術基準や仕様書などによって判断されます。ご自身の住宅に欠陥があるか否か、欠陥の程度がどのくらいなのかは、1級建築士に調査してもらうことになるでしょう。

  2. (2)欠陥に対する法的な責任

    瑕疵があった場合の責任については、民法第570条(566条の地上権などがある場合の売り主の担保責任を準用)で、売り主の瑕疵担保責任が定められています。これは、買い主が通常の注意を払っても気づかない瑕疵があったときに、売り主が買い主に対して負う責任について定めたものです。

    条文の内容を簡単にまとめると、次の3つのことが書いてあります。

    ●契約の目的を達成できないときに、買い主は売り主との契約を解除できる
    欠陥が重大な場合や修理ができないような場合、つまり、とても住める状態ではない場合は解除できると考えられます。住宅に少しでも欠陥があればもう住みたくないと感じるかもしれませんが、必ずしも契約解除できるわけではありません。

    ●契約を解除できないときに、買い主は売り主に対して損害賠償を請求できる
    一般的には、建物の修理代金を中心とした損害賠償を請求することになります。修理代金以外には、修理中の仮住まいにかかる費用、建築士の調査費用、場合によっては慰謝料や弁護士費用なども請求の対象となります。

    ●買い主が行う契約の解除や損害賠償請求は、事実を知ってから1年以内にしなければならない
    つまり、法律上は買い主が「欠陥住宅であることを知ってから1年」以内であれば、上記の請求ができると定められています。しかし、契約により、売り主が瑕疵担保責任を負う期限を別途定めているケースがあります。

    たとえば、売り主が宅地建物取引業者である場合には、「引き渡しのときから2年」となる特約を結ぶことがあります。この場合は、引き渡しから2年以上経過してから欠陥が見つかっても、請求期限が過ぎていて、契約の解除や損害賠償請求はできないことになります。

    もっとも、新築住宅の場合は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」によって引き渡しから10年間は、責任追及が可能です。その他、各社が定めるアフターサービス制度の基準にもとづき補償が受けられる場合もありますので、契約書の内容などを踏まえて弁護士へ相談されるとよいでしょう。

2、欠陥住宅の損害賠償を請求する相手

では、欠陥が見つかり損害賠償を請求しようと決めたとき、その相手方は誰になるのでしょうか。

  1. (1)瑕疵(かし)担保責任の場合

    民法の瑕疵担保責任は、「売り主」の責任を定めています。つまり、責任を負うのは住宅を販売していた相手となり、販売会社とは別の施工業者や仲介業者、設計者には賠償請求できないことになります。

    したがって、売り主である不動産会社が倒産などをした場合、修補などを求めることができない可能性が高くなることに注意しましょう。なお、注文住宅の場合は、売り主であるハウスメーカーに損害賠償を請求することになります。

    一方、中古住宅の場合には、施工業者や仲介業者が間に入っていることも多いですが、これらの業者はあくまでも仲介をするのみで責任はなく、責任の所在は売り主である個人の住宅オーナーになります。しかし、中古住宅の場合は瑕疵担保責任を1~6ヶ月程度に限定するのが通例です。これでは何の落ち度もない買い主が救われません。そこで民法の不法行為責任にもとづき、直接の売り主以外に対しても損害賠償請求できる場合があります。

  2. (2)不法行為責任の場合

    瑕疵担保責任についてまず説明してきましたが、この他にも不法行為によって責任を追及する方法もあります。

    民法第709条では、故意または過失によって他人の権利や利益を侵害した者には、損害を賠償する責任がある旨を定めています。これが、不法行為責任です。欠陥住宅の場合は、建築に関わる法律に違反して設計や工事をした者が負う責任となります。

    不法行為責任は、瑕疵担保責任と損害賠償請求の期限が異なります。損害および加害者を知ってから3年、不法行為のときから20年です。(民法第724条)

    責任を追及できる範囲も異なり、不法行為責任の場合、居住者や訪問者、通行人などの生命、身体、または財産を危険にさらすような、建物としての基本的な安全性を欠いた瑕疵である必要があります。現実に被害が発生している場合だけでなく、放置することで被害が生じる危険性がある場合も含まれます。

    具体的には、外壁が崩れ落ちそう、住宅が傾いている、天井にひび割れがある、ベランダにぐらつきがある、といったケースです。このようなケースでは建築に関わる施工業者や設計者が、建物の基本的な安全性に配慮する義務を怠っていますので、違法性の程度を問わず不法行為責任が成立する可能性があるでしょう。

3、欠陥住宅問題を解決するまでの流れ

購入した住宅の欠陥が見つかってから解決までの手順は一般的には下記のようになります。

  1. (1)任意の交渉

    まずは相手方と任意の交渉を行い、示談の成立を目指します。事前準備として、1級建築士に住宅の調査をしてもらいます。建築士は交渉の代理人とはなれませんので、ご自身が交渉するか、弁護士に依頼することになるでしょう。

    原則として、示談で取り決めた内容は後で覆すことができません。示談書の内容や請求する範囲などをしっかり検討する必要があります。示談の時点から弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。

  2. (2)調停

    調停とは、裁判所が間に入って、裁判によらない紛争解決を目指す手続きのことです。中立的な立場である調停委員が当事者の主張を聞いて整理し、調停案を提示します。 住宅紛争審査会や紛争解決センター、簡易裁判所の調停など、さまざまな公的機関を利用した調停があります。ただし、あくまでも話し合いによる手続きですので、合意にいたらなかった場合に強制力はありません。

  3. (3)訴訟

    示談交渉や調停でも解決できなかった場合には、損害賠償請求訴訟を提起します。訴訟に発展した場合、欠陥が重大である、相手方が不誠実であるなど、問題が深刻化している状態となります。こうなるとご自身で対処することは非常に困難になりますので、弁護士に依頼しましょう。

4、欠陥住宅の問題は弁護士に相談しましょう

  1. (1)法的な専門知識のサポートが不可欠

    欠陥住宅の紛争の場合、問題の解決にあたっては1級建築士の調査を前提としますが、その後の損害賠償や契約に関する事項については法律の専門知識や交渉力を要します。一般の方が法律にもとづき損害賠償の請求期限や請求の範囲を判断し、速やかに対処することはそう簡単ではありません。

    最初から弁護士のサポートを受け、スムーズな問題解決を目指すべきでしょう。

  2. (2)交渉の頼れる代理人

    任意交渉の段階から弁護士が代理人となったほうが、相手方が交渉に応じやすくなり、後々のトラブルを回避し、法的に有効な示談書を作成してもらうことができます。調停、訴訟と展開していく場合も、弁護士が瑕疵の立証や法的な主張を行うことで、受けた損害をしっかり賠償してもらい、早期に安定した日常を取り戻すことが可能となります。

5、まとめ

今回は欠陥住宅の問題に着目し、法律上の意味や損害賠償請求、解決までの流れをお伝えしました。多くの方にとって、住宅はかけがえのない財産であり、安全に日常生活を過ごすための基礎となるものですから、もし損害を受けた場合は速やかに賠償してもらわなければなりません。

しかし、瑕疵の有無および程度を判断することや、適切な損害賠償を求めるには専門知識が必要です。被害者が自身で対処することは難しいため、速やかに弁護士に相談し、状況に応じた解決案を提示してもらいましょう。

ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスでは、一般民事事件に対応した経験が豊富な弁護士がお力になります。欠陥住宅問題でお困りであれば、お気軽にまずはご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています