【前編】オレオレ詐欺の量刑は? 逮捕後の流れや弁護士のできることを弁護士が解説

2019年03月28日
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【前編】オレオレ詐欺の量刑は? 逮捕後の流れや弁護士のできることを弁護士が解説

昨年末、札幌市内在住の女性に対して、親族を騙る男から現金を要求されて振り込んでしまうというオレオレ詐欺事件が発生しました。

実は、オレオレ詐欺に関わった未成年の者が逮捕されるというケースが増えています。アルバイト感覚で詐欺に加担してしまい、最も捕まりやすい役割をやらされているという実態があります。

ご家族がオレオレ詐欺で逮捕されてしまった場合、「身柄はどうなるのか」、「逮捕された息子(娘)に弁護士はついているのだろうか」、「いつどのように弁護士に依頼すればよいのか」、「弁護士はどんなことをしてくれるのか」など、疑問がたくさんあるかと思います。

そこで、この記事では、オレオレ詐欺の量刑や逮捕から裁判までの流れ、弁護士にできること、弁護士に依頼するタイミングなどについて解説いたします。

1、オレオレ詐欺の量刑

オレオレ詐欺の定義や量刑について解説いたします。

  1. (1)オレオレ詐欺の定義・分類

    「オレオレ詐欺」は、高齢者をターゲットにして、「おれおれ」「わたし、わたし」など縁者を装い、口座に送金させ、金銭をだまし取る犯罪行為のことです。

    オレオレ詐欺は特殊詐欺の1つとされています。

    特殊詐欺とは、不特定の方に対して、対面することなく、電話、FAX、メールを使って行う詐欺をいいます。

    手口が多様化した現在では、オレオレ詐欺(成りすまし詐欺)は架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金詐欺 と合わせて「振り込め詐欺」というように整理されています。

  2. (2)オレオレ詐欺の現状

    オレオレ詐欺は組織的な犯行が多く、それぞれ①主犯格、②かけ子、③出し子、④受け子が役割を分担して犯行に及ぶケースが一般的です。

    受け子や出し子は誰にでも務まる一方で、逮捕される可能性が非常に高い役割です。
    そのため、アルバイト感覚で未成年者をグループに引き込み、逮捕されやすいポジションに配置するというケースは少なくありません。

    オレオレ詐欺における役割の具体的な内容は次のとおりです。

    ① 主犯格
    主犯格はオレオレ詐欺を主導する人物のことです。

    具体的には、犯行の手口を立案したり、具体的な指示を出したりするというように、オレオレ詐欺の重要な役割を果たします。

    中には、主犯格が暴力団関係者であり、オレオレ詐欺で手に入れた金銭が暴力団の活動資金になっているというケースも少なくありません。

    ② かけ子
    かけ子は、ターゲットに電話をかけて騙すという役割を担います。

    たとえば、高齢者に電話をかけて、子どもや孫を装ってお金を用意させます。

    その後、振込先を指定して送金させたり、受け渡し場所を指定して金銭を持ってこさせたり、送り場所を指定して金銭を送付させたりします。

    ③ 出し子
    出し子は、被害者が振り込んだ金銭を引き出しに行くのが役目です。

    銀行やATMへ行って入金を確認し、お金を下ろして主犯格に金銭を渡します。

    ④ 受け子
    受け子は、被害者の住居を訪ね、直接金銭を受け取りに行くという役割になります。

    金融機関に金銭を振り込ませるようにすると、振込口座や防犯カメラから身元が判明してしまうことがあります。

    そのため、被害者から直接金銭を受け取るという手口が使われるケースは少なくありません。

  3. (3)オレオレ詐欺の刑罰

    オレオレ詐欺は、通常、詐欺罪や窃盗罪が成立します。

    ① 詐欺罪
    詐欺罪は、被害者を欺いて錯誤に陥れ、財産を処分させた場合に成立する犯罪です(刑法第246条)。

    詐欺に関わった主犯格、かけ子、受け子、出し子など、それぞれ加担した者が詐欺を行う意志の疎通があれば、共犯として全員が詐欺罪に問われる可能性があります。

    詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役に科されることになります。罰金刑はありませんので、起訴されて有罪となれば、必ず懲役刑が科されます。

    ② 窃盗罪
    オレオレ詐欺の場合、詐欺罪が成立しますが、共犯関係から外れて出し子などの他人の口座から金銭を引き出した場合は、窃盗罪が成立する可能性があります(刑法第235条)。

    窃盗罪の量刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

2、未成年(少年事件)、逮捕から裁判までどのように進むのか

未成年の者が逮捕された場合、裁判まで以下のような流れで手続きが進むことになります。

  1. (1)逮捕

    未成年が逮捕された後、成年事件と同様に警察署で48時間以内に取り調べを受けることになります。その後、身柄を検察庁に送致されます。場合によっては、逮捕されず何度か警察に呼び出されて、取り調べを受けるというケースもあります。警察署で十分な取り調べが行われれば、検察庁に送致されないこともあります。

  2. (2)勾留または家庭裁判所へ送致

    検察庁に身柄を送致されると、送致から24時間以内に検察官は未成年者の身柄を引き続き拘束(勾留請求)するか家庭裁判所へ送致するかどうかを決定します。

    勾留請求が認められると、最大10日間、被疑者は身柄を拘束されることになります。
    さらに勾留が必要だと判断されると、検察官は最大10日間、裁判所に対して勾留の延長を請求することができます。
    つまり、勾留されると原則として最大20日間、被疑者は身柄を拘束されることになります。

  3. (3)家庭裁判所で観護措置の審判

    被疑者が未成年の場合、勾留せずに家庭裁判所に送致されることがあります。家庭裁判所に送致されると、観護措置を受けるべきかどうかを判断されます。

    観護措置は、最大4週間、非行の原因や今後どのようにすれば更生できるのかを分析するため、少年鑑別所に収容する処分のことです。

    観護措置を受ける必要がないと判断された場合、被疑者は釈放されますが、家庭裁判所の調査官が事件の内容や加害者の家庭環境について調査を行います。調査の際に、加害者の保護者と面談を行ったり、心理テストを行ったりします。

    観護措置を受けて少年鑑別所に収容されると、約4週間後に少年審判を受けることになります。
    少年審判では、裁判官から被疑者、調査官、付添人や保護者などに対して質問がされます。
    被疑者に対しては、事件の経緯や事件後に何を思ったのかなどについて聞きます。保護者に対しては、被疑者の普段の様子や問題のある行動を起こしていないかなどを質問します。
    最終的には、不処分、保護観察、少年院送致、検察官送致などの審判が下されることになります。

    後編では、オレオレ詐欺で逮捕された場合に、弁護士ができることや弁護士を選任するタイミングについてご説明いたします。>後編はこちら

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