共働き夫婦が離婚した場合の財産分与について札幌の弁護士が解説
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札幌市では、年々減少傾向にはありますが離婚率が高く、平成28年度時点では全国での離婚率1.73(人口千対)に対して、札幌市は2.09(人口千対)と非常に高い数字を記録しています。
離婚をする場合には、事前に決めなければならいことがたくさんあります。
たとえば、子どもがいる場合には「養育費」や「親権」、それに夫婦で所有していた「財産」についてもどのように分与するのかを決める必要があります。
では、共働きの夫婦が離婚した場合に、夫婦の共有財産などはどのように財産分与すべきなのでしょうか。
今回は、財産分与とはなにか、共働きの夫婦ではどのように財産分与すべきなのかを中心に解説していきます。
1、財産分与とは
そもそも財産分与とは、婚姻生活の中でともに蓄えてきた財産をそれぞれの貢献度に応じて分配しようという考え方です。
法律でも民法768条1項に記載されており、離婚する場合には相手方に財産の分与を請求できます。
財産分与には大きく分けて3つの種類があるため、具体的な内容を見ていきましょう。
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(1)清算的財産分与
この清算的財産分与とは、これまでの結婚生活の中で、夫婦ともに協力して形成・維持されてきた財産について、それぞれの貢献度に応じて公平に分配しましょうという考え方です。
あくまで公平に夫婦の財産を分与するという考え方ですので、仮に離婚原因を作ってしまった側からの請求も当然認められることになります。 -
(2)扶養的財産分与
扶養という言葉がある通り、夫か妻のどちらかが生活に困窮してしまう事情がある場合に、その生活を補助する扶養目的で分与することを指します。
また、扶養すべき理由としては、「病気」「高齢」「預金・収入が少ない」などであることが挙げられます。
一般的には、扶養的財産分与という形で、一定額を定期的に生活費として支払うというスタイルが多い傾向にあります。 -
(3)慰謝料的財産分与
慰謝料と財産分与という言葉が一緒になっていますが、本来であればこれらは別々に算定されるべきものです。
しかしながら、それぞれ金銭の発生が生じるために、これらをまとめて「財産分与」として請求されるケースもあります。
もちろんこの場合には、財産分与の中に慰謝料も含まれていると考えるため、慰謝料的財産分与と呼ばれています。
このように財産分与にもそれぞれ分け方があり、目的も大きく異なります。
財産分与の種類を明確に理解した上で、共働き夫婦が財産分与する場合の「割合」について見ていきましょう。
2、共働き夫婦の財産分与の割合について
夫婦間で物を買う場合など、多くは夫名義で買う家庭が多い傾向にありますが、家や車などの資産を夫名義で購入した場合でも、それは夫婦共有の財産としてみなされるのでしょうか?
財産分与においては、名義がどちらであっても夫婦で形成・維持してきた財産であれば「実質共有財産」として清算します。
夫婦の働き方や労働時間にも左右されますが、原則として「2分の1」とされています。
しかし、あくまで原則として2分の1ということであり、夫婦間で極端に「収入の差」がある場合、「労働時間の差(家事時間含む)」がある場合は除きます。
この家事時間を含む労働時間というのがポイントであり、総務省より発表されている「社会生活基本調査」によると、平成28年度の男性の仕事等時間は6時間08分、女性の仕事等時間は3時間35分となっています。
この数字だけを見ると、やはり男性のほうは労働時間が長いという印象を持ってしまいますが、実はそういう訳でもありません。
家事関連に費やした時間を見てみると、男性が44分、女性が3時間28分となっています。
これらの時間を合計すると、仕事等プラス家事に費やした時間は、男性が6時間52分、女性が7時間3分となっており、働きに出ている時間には2時間30分ほどの開きが見られますが、家事時間を含む総労働時間に大きな差は見られません。
このように、一日の中での仕事等プラス労働時間が男女ともに差がないことから、原則として財産分与は2分の1という考え方となっています。
3、夫婦がそれぞれの財布で財産を管理している場合
では、夫婦がそれぞれの財布で財産を管理している場合には、どのような分け方になるのでしょうか?
共働き夫婦の場合、必要最低限の生活費をそれぞれの収入から捻出し、それ以外に関しては各自が預貯金を管理するというケースは少なくありません。
こうしたケースでは、夫名義の預貯金は夫が、妻名義の預貯金は妻が取得するとして、預貯金以外の不動産や車などを財産分与の際に清算するということになるでしょう。
どちらか一方が浪費家で全く預貯金がない場合、預貯金も折半する可能性があります。納得がいかないという場合には、一度弁護士に相談されることをおすすめいたします。
4、財産分与の対象は?
それでは、具体的に財産分与の対象となるものはどういったものがあるでしょうか。
- ①共有財産(婚姻期間中に築いた財産)
- ・不動産や車
- ・預貯金を含む現金
- ・共同生活に必要な家具や家電
- ・有価証券
- ②年金(公的年金、私的年金含む)
- ③退職金
- ④保険解約返戻金
- ⑤借金
上記のように、婚姻生活中に形成・維持されてきた財産は、名義がどちらになっていても財産分与の対象となります。
しかし、このようなプラスの財産だけではなく、借金のようなマイナスの財産も分与となります。
- 「婚姻生活中にできた家賃や生活費などの借金
- 住宅ローンや車のローン
このようなマイナスの財産分与も生じるため、離婚時にどのような配分で財産分与を行うのかをきちんと協議する必要があります。
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(1)別居期間中や結婚前の財産について
では、離婚前に別居している期間があった夫婦の場合、別居期間に得た財産はどうなるのでしょうか?
財産分与の対象となる財産は、「別居時」を基準に考えられます。
つまり、離婚が成立していない段階であっても、別居している期間に得た財産については、夫婦でともに協力し得た財産ではないと考えられています。
また、財産分与の対象とならないものは、別居している期間に得た財産だけではありません。
「特有財産」と呼ばれる財産については、財産分与の対象から外されるケースがあります。
これは民法762条1項に定められており、どちらかが「婚姻前から有していた財産」、「婚姻中であっても夫婦の協力とは関係なく得た財産」を指しています。
たとえばですが、婚姻前から貯めていた預貯金、婚姻中に相続した不動産などが該当します。
しかし、婚姻後にそれらの価値が維持されている、または増加したと認められる場合には、貢献度に応じて財産分与の対象となるケースもあります。
5、財産分与の方法・手順を解説
財産分与の方法・手順としては、下記が一般的な流れとなります。
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(1)財産分与の対象となるものをリストアップする
預貯金などのプラスの財産、借金や住宅ローンなどのマイナスの財産含め、財産分与の対象となるものをすべてリストアップします。預貯金などに目がいきがちですが、借金や負債などは忘れてしまうケースも少なくありませんので、忘れずにリストに入れておきましょう。
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(2)財産分与の割合を決める
前述の通り、妻が専業主婦の場合であっても、原則として財産を折半することが認められています。ただし、必ずしも1/2にする必要はありませんので、夫婦が納得する形であれば、3:7などの割合にすることは問題ありません。
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(3)財産分与の方法を決める
預貯金や現金であれば、夫婦が納得した形で分与すると良いでしょう。
不動産や車などそのまま分与できないものに関しては、「財産の評価額」を専門家に算定してもらい、結果的に半分ずつになるように分与します。
財産分与の割合については揉めてしまうケースも少なくありませんので、円満に解決することを望む場合には、弁護士に相談することもひとつの手です。
6、まとめ
今回は、共働きの夫婦が離婚する場合の財産分与について解説しました。
実際に財産を正確に評価し算定することは難しく、夫婦間の協議で解決できない場合には、弁護士に相談されることをおすすめします。
財産分与に関する問題にお困りの方は、ぜひともベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士にお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています