約束したはずの養育費が支払われない!支払わない夫から養育費を回収する方法

2021年04月15日
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約束したはずの養育費が支払われない!支払わない夫から養育費を回収する方法

離婚するとき、未成年の子どもを引き取るなら養育費の取り決めをすることが多いですが、その後支払いが行われなくなってしまうこともよくあります。平成29年に行われた、「北海道 ひとり親家庭生活実態調査」によると、養育費を「うけとったことがない」「うけとったことがあるが、現在はうけとっていない」と回答した母子家庭が、68.4%に上りました。

もし、養育費が支払われなくなったら、自分だけではなく、子どもにも不自由な思いをさせることになってしまいます。

養育費の不払いや未払いに備えるためには、どうしたら良いのでしょうか?今回は、離婚後もしっかり養育費を支払ってもらう方法について解説します。

1、養育費を確実に支払ってもらう方法

養育費を確実に支払ってもらう方法

弁護士として、実際にご相談を受けているとわかるのですが、離婚時に養育費の取り決めをしても、「どうせすぐに支払われなくなるだろう」、と半分諦めている方が多いです。

確かに、途中で支払いが止まってしまうケースもあります。しかし、養育費が支払われなくなるのは、きちんと対処をしていないケースがほとんどです。

そのため、養育費の不払い(未払い)を防ぐためには、きちんとした対処が必要となります。

  1. (1)離婚公正証書を作成する

    養育費を確実に支払わせるためには、まずは離婚時にきっちり養育費を取り決めて、離婚公正証書にしておくことが重要です。

    離婚公正証書とは、協議離婚合意書(協議離婚書)を公正証書にしたものです。公正証書は、公務員である公証人が作成する公文書の一種で、非常に信用性が高いです。
    公正証書の原本は公証役場で保管されますので紛失のおそれもありませんし、きちんと身分確認して作成されるので、公正証書を作成しておくと、後から相手が「そんな約束はしていない。合意書は偽造だ」などと言うこともできなくなります。

    もっとも重要なポイントは、公正証書には強制執行力があるということです。
    強制執行力とは、債務者(この場合には養育費支払義務者である夫)が不払いとなったとき、債務者の財産や給料などを差し押さえることができる効力です。

    つまり、養育費の支払いの約束を公正証書で取り決めておくと、相手が不払い(未払い)となったとき、預貯金や生命保険、給料などを差し押さえることによって、確実に取り立てを行うことができるのです。

    また、公正証書にしておくと、相手は「不払い(未払い)になったら差し押えされる」と考えてプレッシャーを感じるので、滞納しにくくなるという効果もあります。

  2. (2)離婚公正証書を作成する方法

    離婚公正証書を作成するためには、まずは、離婚時に自分たちで話し合った内容を「協議離婚合意書」にまとめます。そして、その文案を公証役場に持って行き、公正証書の作成を申し込みます。すると、担当の公証人が決まるので、打ち合わせをして、公正証書作成の日取りを決定します。

    当日までに、戸籍謄本や財産関係書類等、必要書類を揃えなければなりません。具体的にどのような書類が必要かについては、担当の公証人に問合せをしてチェックしましょう。

    当日は、基本的に夫婦が二人とも公証役場に行く必要がありますが、弁護士などの第三者に代理を依頼することも可能です。

    当日、公証人からできあがっている離婚公正証書の文面を見せてもらい、内容に間違いがなかったら署名押印をします。それに公証人も署名押印を行ったら、離婚公正証書ができあがります。

2、養育費が支払われない場合の対処方法

養育費が支払われない場合の対処方法

離婚をするときに、離婚公正証書を作成しないこともあります。当事者で作った協議離婚合意書のみがあるケースもありますし、養育費の支払いが口約束で、協議離婚合意書を作成していないケースもあるでしょう。中には、養育費の取り決めすらしていないこともあります。

しかし、上記のどのようなケースであっても、離婚後に相手に養育費を支払わせることができます。以下では、その手順を説明していきます。

  1. (1)まずは、督促をする

    相手が約束した養育費を支払ってくれないときや、養育費の取り決めをしていなかったときには、まずは相手に連絡を入れましょう。

    電話やメールなど、普段からやり取りしている手段があれば、それでかまいません。そして、養育費を支払うように言いましょう。何らかの事情で遅れているだけなら、相手から事情の説明があり、いつまでに支払う、という約束ができることもあります。

  2. (2)内容証明郵便を送付する

    相手に連絡がつかない場合や電話をしても無視される場合などには、内容証明郵便を使って、滞納している養育費の支払い請求書を送りましょう。

    内容証明郵便とは、書留式で手渡しになる郵便で、郵便局と差出人の手元に、発送した文書と同じ内容の控えが残るものです。内容証明郵便を送ると、相手にとってはかなり大きなプレッシャーとなりますから、それだけで支払いに応じてくることがあります。

    内容証明郵便には、滞納している養育費の金額と、それについて支払いを求めること、もし期限内に支払いをしない場合には、養育費請求調停などの厳格な手段をとることなどを記載しておきましょう。

    また、内容証明郵便を発送するとき、弁護士名で送るとさらに効果的です。弁護士から督促書が送られてくると、相手にとって、元の配偶者が送ってくるよりも心理的な圧迫効果が高くなるからです。

  3. (3)養育費請求調停を申し立てる

    内容証明郵便で督促をしても相手が支払いに応じない場合には、家庭裁判所で養育費請求調停を行いましょう。

    養育費請求調停は、養育費の支払い方法を話しあうための調停手続きです。裁判所から相手に呼出状が送られるので、通常一般の人であれば、期日に出頭してきます。また、調停委員が間に入って、養育費の重要性や、法律上支払い義務があることなどを説明するので、頑なだった相手でも支払いに応じやすいです。

    養育費の金額についても、家庭裁判所の定める養育費の算定基準があるので、それに従って決めることができます。

    お互いに養育費の金額について合意ができたら、調停が成立して裁判所で調停調書が作成されます。その後は、基本的に相手から調停調書の内容に従って養育費の支払いを受けることになります。

    相手が調停での約束通り支払いをしないときには、相手の資産や会社の給料などを強制執行することもできます。調停調書は裁判所の書類であり、強制執行力が認められているからです。

  4. (4)審判で金額を決めてもらう

    養育費請求調停をしても、お互いに養育費の支払いや金額について合意ができないことがあります。また、裁判所から呼び出しがあっても、相手が無視することもあるでしょう。

    そのようなときには、調停は不成立となって、手続きが「審判」に移ります。

    審判になると、裁判所が養育費の金額と支払い方法を決定し、相手に対して養育費の支払い命令を出してくれます。

    養育費の支払い命令が出たら、その内容が「審判書」という書類に書き込まれて、当事者宛に送られてきます。審判書にも強制執行力があるので、その後、相手が支払いをしない場合には、審判書を使って相手の財産や給料を差し押さえることができます。

3、それでも支払いが行われない場合の対処方法

それでも支払いが行われない場合の対処方法

このように、離婚公正証書を作成したり、調停や審判をしたりしても、相手が無視して養育費を支払わないことがあります。その場合には、以下のような手順をとりましょう。

  1. (1)履行勧告、履行命令を利用する

    家庭裁判所で調停や審判を行った場合には、その裁判所で履行勧告や履行命令という方法を利用することができます。

    履行勧告
    履行勧告とは、裁判所に申出をすることによって、家庭裁判所から相手に対し、養育費を支払うよう勧告してもらうことです。
    自分で相手に督促するより裁判所から督促してもらった方が相手に対するプレッシャーも大きくなり、支払いを受けられる可能性が高くなります。
    履行勧告の申出は、書面だけではなく、窓口で申請をする方法や電話でも可能です。ただ、あくまで勧告ですから、強制力はありません。

    履行命令
    履行命令は、家庭裁判所が相手に対し、養育費の支払いを命じる処分です。相手が正当な理由なく命令に従わない場合には、10万円以下の科料の制裁を受ける可能性があります。
    ただ、相手から無理矢理養育費を取り立てる手段ではありません。

  2. (2)強制執行をする

    履行勧告や履行命令にも従わない相手の場合には、強制執行をしましょう。強制執行をすると、相手が任意に支払わなくても、財産や給料から強制的に未払iいの養育費を取り立てることができます。強制執行ができるのは、手元に公正証書、調停調書、審判書、判決書などの「債務名義」がある場合です。また、履行勧告や履行命令を利用せず、不払い(未払い)があったときにいきなり強制執行することも可能です。

    強制執行の対象としては、相手が給与所得者で勤務先がわかっている場合には、給与を差し押さえることをお勧めします。給料を差し押さえると、将来の分まで差し押さえの効力が及びますので、毎月会社から直接差し押さえた金額の支払いを受けることができます。相手がその勤務先を辞めない限り、かなり高い確率で養育費の支払いを受け続けることができるのです。

    相手が給与所得者でない場合や勤務先がわからない場合には、預貯金や生命保険を差し押さえることをお勧めします。これらの債権は、比較的簡単に早期に取り立てをすることができるからです。

    強制執行を行うときには、送達証明書と執行文という書類を取り寄せる必要があります。
    書類を揃えたら、相手方の住所地を管轄する地方裁判所に対し、強制執行の各種申立を行います。不備がなかったら、裁判所が債権差し押さえ決定などをしてくれるので、その決定内容により、会社や銀行、生命保険会社などから支払いを受けられるようになります。

    給料などを差し押さえると、相手が会社に影響を与えることを嫌い、自分から養育費の支払いに応じる場合もあります。

まとめ

まとめ

以上のように、きちんと対処をしておいたら、養育費は不払い(未払い)になる可能性が減りますし、万一支払いを滞納されても、取り立てるための手段があります。

母子家庭(ひとり親家庭)になると、生活のために養育費が非常に重要となります。相手が不払い(未払い)になっても諦めることなく、回収しましょう。養育費などの離婚問題でお困りの際には、弁護士がサポートいたしますので、お気軽にご相談下さい。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています