離婚をすると学資保険はどうなるのか? 財産分与について札幌オフィスの弁護士が解説
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札幌市の発表によると平成27年の市内の離婚件数は4492件、人口1000人に対する離婚率は2.31でした。離婚率の全国平均は1.81ですので、札幌市は離婚を決意する夫婦の割合が高いことがわかります。母子家庭・父子家庭の割合も全国平均よりも高く、母子家庭は札幌市では1.69%なのに対し、全国平均は1.42%です。つまり、これだけ多くの子育て世帯が離婚に踏み切っているということ。
子育て世代が離婚する際に、気をつけなければならないのが「学資保険」の取り扱いです。今回は札幌の弁護士が、学資保険の財産分与について丁寧に解説いたします。
1、離婚の際に学資保険は財産分与の対象となるのか?
財産分与の対象となるのは、結婚期間中に夫婦で築いた財産です。結婚してから別居もしくは離婚までの期間に、増えた預貯金や購入した住宅や車、保険、家具などのあらゆる財産が対象になります。もちろん学資保険も財産分与の対象です。
学資保険は、積み立てタイプの保険なので、解約した際に「解約返戻金」が支払われます。こちらも学資保険の対象です。ちなみに生命保険も「解約返戻金」が発生するタイプのものは財産分与の対象になります。
ただし、財産分与には対象外となる財産があります。「結婚前から所有している財産」や、「親からの贈与」などです。つまり、結婚前の貯金を使って保険料を支払った学資保険、祖父母や親からの贈与で契約した学資保険は財産分与の対象外なのです。学資保険を財産分与する際は、学資保険の保険料が「結婚前の貯金や親からの贈与」で支払われていないかを確認しておきましょう。
また学資保険に限らず、財産分与の際には、財産を隠されてしまうことがあります。預貯金や有価証券などを配偶者に知られない口座に移動して財産分与の対象にならないようにするのです。
これを避けるためには、離婚成立前に財産の所在を確認しておくこと、また隠されている場合は弁護士などに相談して、隠された財産を調査してもらいましょう。弁護士であれば、弁護士会照会と言って、金融機関に口座の有無や内容を問い合わせできる手続きが可能になります。
2、学資保険を財産分与するには?
では、具体的に学資保険の財産分与の方法を解説します。学資保険を財産分与する際は、「解約する」、「解約したとみなして分与する」などの方法もありますので、それぞれの家庭の状況に合わせて最適な分与方法を検討しましょう。
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(1)学資保険の保険証券を確認する
学資保険を財産分与する際は、学資保険継続・解約するどちらの場合も保険証券を確認しておきましょう。保険証券には、契約者や被保険者、保険金額(満期の際に受け取ることができるお金)、受取人などが記載されています。学資保険の保険証券を紛失した場合は、保険会社に連絡することで再発行を受けることができます。離婚協議の際に、正確な保険金額を把握しておかなければならないので、必ず確認しておきましょう。
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(2)解約して解約返戻金を分割する
学資保険を財産分与する際に、もっともスムーズなのが解約することです。解約すれば解約返戻金が支払われますので、それを分割すれば手続きは完了です。ただし、解約返戻金は、解約までに支払った保険料よりも低額になる「元本割れ」が発生しますので、解約するかどうかは慎重に検討しましょう。
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(3)解約せずに、解約したとみなして分与する
解約による元本割れを防ぐために、契約を継続する場合は学資保険を受け取る方が、相手に「離婚時に解約した」とみなして解約返戻金の半額相当額を支払う必要があります。その場合は、学資保険を受け取る方に名義を変更しなければ後々トラブルが発生する可能性があります。
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(4)子どものための貯金だから分与せずにそのまま継続する
学資保険は基本的には子どもの学費のため将来のために積み立てている保険です。だから解約やお金のやりとりをせずにそのまま継続するという方法もあります。すでに保険料の支払いが終わっている「払い済み」の状態になっている場合は、親権者に名義だけ変更して財産分与の対象としないこととしてもよいでしょう。
ただし、裁判で離婚について争う場合は、学資保険だけ対象外にできない可能性もありますのでご注意ください。
3、支払いが残っている学資保険には注意が必要
学資保険は、契約時に全て保険料を支払っている場合と、月々、もしくは毎年保険料を支払う場合があります。すでに保険料の支払いが済んでいればよいのですが、保険料を支払っている最中で、契約を継続する場合は「保険料の支払い」に注意しなければなりません。
親権者が支払う、もしくは、親権者でない方が支払う、折半で支払うなどの方法がありますが、保険会社からの引き落としは契約者に限られますので、契約者以外に支払い義務を負わせてしまうと、保険料をきちんと支払わない可能性があります。
財産分与で親権者が学資保険を譲り受けた場合は、保険料が支払えるかどうかを慎重に検討しなければなりません。離婚前に毎月の収入と支出を点検し、無理なく払えることを確認しておいてください。
また、養育費の代わりに学資保険を支払うという方も少なからずいらっしゃいますが、学資保険の名義が親権者にない場合は、保険料を滞納する、もしくは勝手に解約するリスクがありますので、避けたほうがよいでしょう。
4、学資保険は名義を換えたほうが良い?
学資保険も通常の生命保険も、契約者本人でなければ、解約も保険金請求もできません。逆に契約者は、勝手に解約も請求もできますので、知らない間に学資保険を解約されてしまうリスクがあります。
だから、学資保険は子どもを育てる親権者に名義を変更しておくことを強くおすすめします。
理想的なのは「親権者=契約者=保険金支払い義務者」という形です。保険料を折半で支払う場合は、離婚前にしっかりと保険料の支払いについて取り決め、養育費に上乗せする形で支払ってもらいましょう。
ただし、養育費を支払わない方が非常に多いため、養育費を滞納した場合に迅速に差し押さえられるように「公正証書」を作成しておきましょう。養育費や学資保険の財産分与などの条件や支払先を記載しておけば、約束を守らなかったときに、裁判などの手続きを経ずに給与や財産を差し押さえることができます。
5、離婚問題を弁護士に相談するメリット
子育て世代の離婚は、養育費や財産分与など大きなお金のやりとりが発生することが多いため、弁護士に相談したほうがよいと考えます。ここでは、学資保険問題を抱える方が離婚問題を弁護士に相談するメリットを解説いたします。
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(1)弁護士を介しての接触
離婚の話し合いは結婚の数倍のエネルギーを使うと言われています。お金の問題も大きく絡みますし、気持ちは行き違っていますので、円満に話し合いが進むことはほとんどないと言えます。お互いの欠点などを指摘しあう、泥仕合になることも少なくありません。離婚の話し合いをするだけで大きなストレスになり、仕事や生活、子どもへの態度にも影響がでてしまいます。しかし、弁護士に依頼することで相手との接触を一切断つことができますので、離婚問題のストレスから解放されます。
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(2)協議が有利に進む
離婚の際は、財産分与や養育費などの大きなお金の動きがあります。住宅や車、預貯金などの結婚期間中に増えた財産は、財産分与の対象になりますが、当事者同士で話し合うと財産を隠されてしまう可能性があります。
また、過去の裁判例では「専業主婦でも2分の1で分割」が原則なのですが、ふたりで話すと収入が高いほうが多く財産を受け取ろうとすることもありますので、正確な財産分与が難しくなります。
養育費も、金額や期間を取り決めたものの支払わないケースが多いので、親権者となった方が苦労する可能性も非常に高くなります。これらの弊害を避けるためには、弁護士に相談して正当な財産分与を勝ち取った上で、将来受け取るお金を必ず受け取れるよう手続きを進める必要があります。 -
(3)トラブル防止
当事者同士で財産分与等の話し合いをすると、協議内容を後から覆す、支払いをしないなどのトラブルが頻発します。 もっとも多いと考えられるケースは、約束通りに支払わないことです。財産分与や養育費の支払いの取り決めを破り連絡を絶たれてしまうことも少なくありません。しかし、弁護士に依頼すれば、公正証書を作成するなどしてそれらのリスクを大幅に軽減することができます。
また法的にスキのない離婚協議書を作成するため、離婚後に「やっぱり家は渡してほしい」などと言われることもありません。離婚後のさまざまなトラブルを防止する観点でも弁護士への依頼が必要不可欠です。
6、まとめ
離婚する際に、学資保険は財産分与の対象になりますが、分与する際は保険料の支払いや、受け取りなどに注意する必要があります。学資保険を解約して分与すべきかどうかも含めて弁護士に相談して最適な方法をアドバイスしてもらうことをおすすめします。
ひとりで悩まず、まずはベリーベスト法律事務所 札幌オフィスでご相談ください。離婚における財産分与問題に対応した実績が豊富な弁護士が、あなたの状況に応じて適切なアドバイスを行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています