子どもが2人いる夫婦、離婚後の養育費はいくら必要? 支払いはいつまで?
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まだ経済的に独立していない子どもを抱える夫婦が離婚することになったとき、しばしば大きな壁となって立ちはだかるのが養育費の問題です。
子どもが1人でなく2人いるなら、必要な資金も増えます。
また、親権が別々になってややこしい問題が発生する可能性も出てきます。
離婚に伴い、相手に対して養育費を請求したいと考えている場合に、知っていると便利な知識について弁護士が解説いたします。
1、養育費の目的とは? 現在はどのようにして支払われているのか
養育費とは、未成熟子(経済的に自立していない子ども)を育てるために必要な費用として、親権者が配偶者に対して請求できる費用のことをいいます。
現在の社会では、子どもを育てるためにとても費用がかかります。毎日の衣食住の費用はもちろんですが、学校をはじめとした教育費も多額な費用がかかるでしょう。また、健康を維持するための医療費も高くつくことがあります。
しかし夫婦が離婚することになったら、養育費の負担はしばしば大問題となります。厚生労働省の発表によると、札幌市の平成29年の離婚率は政令指定都市の中では大阪市に次ぐ高さでした。人口1000人に対する離婚率は、大阪市は2.17、札幌市は2.04だったということです。年間の離婚数は4003件を記録しています。※
※出典元:厚生労働省「人口動態総覧」
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(1)離婚しても夫婦双方に養育費を準備する義務がある
離婚すれば夫婦のどちらかが親権を持って、子どもをひとりで育てることになります。その親権者が自力ですべての養育費を賄えるのであれば問題は起こりません。しかし、親権者にならなかった親にも、その子どもの養育費を負担する義務があるのです。
日本では夫婦が離婚すると、母親側が親権を持つことが一般的です。とはいえ母親にじゅうぶんな資力がない場合は、父親は子どもが経済的に自立するまで、養育費を支払い続ける義務を背負うことになります。 -
(2)養育費は、子どもが何歳まで必要なのか
なお、子どもがいくつになるまで養育費を支払うべきなのか、年齢に関してはっきりとした法規定はありませんが、現在は子どもが成年に達するまで養育費を払うべきだという考え方が定着しています。
ただし、子どもが成年に達する前に社会に出て働くことになったら話は別です。高卒で就職するなら、高校卒業と同時に養育費の支払いを止めても問題ありません。
その反対で子どもが大学に進学した場合は、成年に達していても養育費の支払いを続ける可能性があるでしょう。
2、養育費を決めるための「算定表」について
成人まで子どもを育て上げるにはさまざまな費用がかかります。各家庭の事情もまたさまざまです。このため、養育費の内訳を細かく決定することは極めて困難です。
そこで、養育費を決める際の参考資料として、家庭裁判所が養育費算定表を公開しています。家庭裁判所で使用している「養育費算定表」は、以下の項目をもとに算出することになっています。
- 子どもの人数
- 子どもの年齢(14歳以下か、15歳以上か)
- 父母それぞれの年収
- 父母の職業区分(給与所得者か、自営業か)
- 権利者・義務者となるのは父母のどちらか
現在のところ、具体的な養育資金の使い道は算定表の項目に含まれていません。たとえば、私立の学校に入学したり習い事をはじめたりするとコストがかさみますが、そのような点は考慮されないのです。
逆に言えば、算定表をもとに決定された養育費の使い方は、親権者の判断に委ねられるという特徴があります。
3、子どもが2人の場合の、養育費の具体的な計算例
では、養育費算定表を実際に利用して、子ども2人分の養育費を計算してみましょう。
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(1)養育費計算ツールで目安金額を把握
「ベリーベスト法律事務所では、家庭裁判所が公開している養育費算定表をもとに、養育費計算ツールをご用意しています。
どなたでも簡単に目安の金額を知ることができますので、ぜひご活用ください。
ベリーベスト法律事務所 養育費計算ツール
それでは次のような例で計算してみましょう。- 子どもの人数:2人
- 子どもの年代:6歳と3歳
- 父母の年収:父が400万円、母が200万円
- 父母の職業:父も母も給与所得者
- 父が義務者、母が権利者
⇒計算してみると、養育費の範囲は毎月4~6万円となります。
では、条件を大幅に変えてみましょう。- 子どもの人数:3人
- 子どもの年代:17歳と15歳と13歳
- 父母の年収:父が700万円、母が300万円
- 父母の職業:父は自営業者、母は給与所得者
- 父が義務者、母が権利者
⇒計算してみると、養育費の範囲は毎月10~12万円となります。
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(2)養育費はどんなときに高くなるのか
子どもが多いと養育費は高めになります。また、年齢が高くても養育費は高めになります。これは、高校や大学に進学する際にかかる学費を考慮しているためです。
支払う親が自営業者の場合は、給与所得者の場合と比べて高くなります。自営業者は毎年、確定申告を行います。この際に経費を差し引いて計算することが慣例ですが、この点は税金が自動的に計算される給与所得者よりも有利な点です。このため裁判所は、給与所得者の負担額を減らしているのです。
4、子どもの親権が分かれる場合の、養育費の計算方法とは
夫婦が離婚することになると、父母どちらかがすべての子どもの親権を持つとは限りません。子どもが2人いるなら、父母が子ども一人ずつの親権を持つというケースもじゅうぶんに考えられます。
このような場合については、算定表だけでは養育費の支払い方がはっきりとしません。
そこで現在は、「生活費の指数」をもとにした計算方法が採用されています。
生活費の指数は以下のような割合で配分されています。
- 成人:100
- 15~19歳の子ども:90
- 0~14歳の子ども:55
この指数を用いて、養育費を分けるのです。
たとえば、以下のような条件で考えてみましょう。
- 子どもの人数:2人
- 子どもの年代:15歳と5歳
- 父母の年収:父が300万円、母が150万円
- 父母の職業:父は給与所得者、母は給与所得者
- 父が義務者、母が権利者
⇒計算してみると、養育費の範囲は毎月2~4万円となります。
さて、子どもたちは15歳と5歳のため、生活費指数はそれぞれ90と55です。
義務者である父親は、母親が引き取った子ども(5歳)のために養育費を払い続けることになりますが、あくまでも1名分でOKということになります。
養育費を4万円として計算する場合、この2万円を子ども2名で(90:55で)分けることになります。
4万÷(90+55)×55=15172.41379310345
したがって、母親が連れて行った子どものために毎月およそ15000円程度を送り続けるということになります。
5、離婚する際に、養育費を決めるときの注意点
離婚を控えて養育費を支払う必要がある立場の場合、早めに算定表を使って計算したほうが正解でしょう。その上で、相手との交渉に臨むことになります。
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(1)養育費の交渉をするときの心構え
協議離婚のような、話し合いで条件を決められる余地がある場合は算定表の基準をもとに交渉するケースがほとんどです。相手方もおそらくは、算定表の存在を知って利用している可能性が高いでしょう。
あくまでも大切な我が子のために使われる費用ですから、むやみやたらに出し惜しみするべきではありません。とはいえ、高すぎる養育費を請求されたときは注意が必要です。相手から請求された金額をそのまま受け入れてしまったために、あとで払い切れなくなって困ったというケースも少なくありません。
養育費で大切なことは、扶養者する者と子どもの生活が同じ水準の生活を送れるように、滞りなく支払いが続くことでしょう。まず相手方にその点をよく理解してもらった上で、金額を決めていくことが大切です。 -
(2)養育費について、法的な文書を作成する場合
離婚をする際に、養育費や財産分与・慰謝料といった諸条件を「公正証書」にして残すことがあります。公正証書は証拠能力を有する公文書として認められています。このため金銭債権が履行されないときは、裁判を行わなくても強制執行が認められます。養育費の支払いがストップしたとき、親権者は相手方の資産の差押が可能となります。
公正証書に養育費に関して記載することになったら、支払いの延滞をしないように肝に銘じるべきでしょう。
なお協議離婚ではなく調停離婚を選び、調停調書に養育費に関する取り決めが記載された場合も、同じような強制執行が認められます。 -
(3)弁護士の力を借りることのメリット
家庭裁判所が公表している養育費算定表やWEB上に公開されている養育費計算ツールがありますので、養育費の計算については誰でも簡単にできるようになりました。
しかし、算定表の結果に縛られたくないこともあるでしょう。金額の決定は、相手方との交渉や離婚調停しだいです。このとき、弁護士の協力を受けたほうが有利に事を運べるチャンスを持てます。
なぜこの金額を希望するのかは、子どもの将来設計を踏まえた上で説得力のある交渉を行うことが可能ですし、相手からとても払えそうにない金額を請求された場合には、ご自身の収入などを考慮した減額交渉を行うことが可能です。
書面を作成する場合も、弁護士の助けがあれば、ミスや漏れのない書類を作成することが可能ですから、不安な場合には弁護士への相談や依頼をおすすめいたします。
6、養育費を途中で減額してほしくなった場合
養育費については、離婚する際に決めた条件を最後まで守る必要はありません。何年も経過すれば、子育ての状況や父母それぞれの収入は変わってしまうことがほとんどです。
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(1)減額してほしい場合に選べる方法とは
養育費の増額・減額は父母の間で自由に話し合って決めることが可能です。たとえば、義務者が失業や転職を契機に収入が激減してしまったときは、減額してほしいと感じるのが普通でしょう。
実際のところ、収入が著しく減っている場合なら減額を申し入れたほうが賢明でしょう。ただし調停調書や公正証書がある場合は、話し合うだけではいけません。裁判所に養育費減額調停を起こす必要があります。
その上で父母の間で合意がなされれば正式に減額が認められます。合意に達しない場合は裁判所が代わりに金額を決定しますが、減額ではなく増額という結果になる可能性もあります。 -
(2)相手方から増額の希望があった場合
親権者側が、増額を求めてくることもあります。
この場合も手続きは基本的に同じです。父母の間で話し合って決めることもありますし、裁判所を通して養育費増額調停が行われることもあります。
相手からの希望金額が本当に適した金額であるのか分からない、ご自身の収入状況からはとても払えそうにないといった場合には、弁護士に一度ご相談のうえ、相手と交渉を行うことをお勧めいたします。
7、まとめ
養育費の決定は、父母が離婚する前に話し合って決めることが可能です。父母双方が納得できる条件で決まるなら、それに越したことはないでしょう。
しかし話し合いがもつれることも少なくありません。また、法的な知識が少ない状態で話し合うと、ずいぶんと時間が経ってから後悔する羽目になる恐れもあります。
このため、まずは法律事務所に足を運んで相談したほうが無難でしょう。弁護士に依頼すれば、相手方との交渉を一任することも可能です。
ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスでは、養育費をはじめとした離婚に関する問題やトラブルについてのご相談を受け付けております。養育費のことでお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスまでお気軽にご相談ください。
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