養育費の相場は? 金額の決め方と流れについて札幌市の弁護士が解説

2019年01月10日
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養育費の相場は? 金額の決め方と流れについて札幌市の弁護士が解説

子どものいる夫婦が離婚する場合、親権者を決めるのと同様に争点となるのが今回の「養育費」です。

子どもを育てる上で養育費の有無は深刻な問題です。

この養育費がいくらもらえるのかによって、今後の子どもとの生活も大きく変わってくることでしょう。

ちなみに、札幌市は全国的に見ても離婚率が高いことをご存じでしょうか。

平成13年度をピークに年々減少傾向にはありますが、それでも平成28年度の全国での離婚率1.73(人口千対)に対して、札幌市は2.09(人口千対)と高い数字が出ています。

もちろん離婚理由については、DV(家庭内暴力)や不貞行為などさまざまですが、子どものいる家庭であれば養育費についての知識があったほうが良いのは確かです。

そこで今回は離婚をしている、または離婚を考えている方向けに、養育費の相場や決定までの流れを解説していきます。

1、養育費とは

養育費とは、まだ未成熟な子ども(未成熟子)が自立するまでにかかる必要な費用であり、主に食費・教育費・医療費などを指します。

養育費は、監護をしていない親(非監護親)から監護をしている親(監護親)へと渡される費用であり、監護している親は養育費の支払いを請求することが可能です。

また養育費は、自分と同じ程度の生活を、扶養を受ける者にも保持させる義務があり、このことを「生活保持義務」といいます。これは、養育費を支払う者に資力がないからといって、支払いが免除される義務ではありませんので、非常に重い義務といえます。

また、養育費は親として未成熟な子どもにすべき最低限の義務であるため、親子関係があれば養育費の支払い義務が生じます。
つまり、血縁関係のない養子である場合にも、養育費の支払い義務が生じるということです。

2、養育費を請求するにあたって決めておくべきことや手順について

では、養育費とはどのように決めていけば良いのでしょうか。

まず養育費をどうするかについては、「離婚時に協議」して決めます。

協議離婚する場合には、親権とともに協議しておくべきものが養育費です。

すでに離婚してしまったという方でも、養育費の請求は可能です(ただし、過去分の請求についてはほとんど認められませんので、請求した月からの支払いとなる可能性が高いでしょう)。

話し合いの中で決めるポイントとしては、「養育費の金額」「養育費の支払い日」「いつまで養育費を支払うのか」「養育費の振込先」です。

どのような流れで養育費を決めていくのかを確認していきましょう。

  1. (1)養育費の金額について

    養育費の金額を決める上で大切なことは、「現実的な金額」に設定することです。

    離婚の経緯はそれぞれありますが、その場の感情で養育費の金額をあまりに高額に設定してしまうと、あとで養育費の不払いなどのトラブルが生じる可能性があります。

  2. (2)養育費の支払い日について

    支払日については、それぞれの家庭状況で異なります。

    たとえば、支払日については監護者でない方の給料日から1週間以内の振り込み、支払期間は成人するまでといった具合です。

    これらを決めずして後回しにしてしまうと、養育費の請求はできますが交渉がなかなか進まないことも多いため注意しましょう。

    また、話し合いで決める場合、決して口約束などではなく、きちんとした「公正証書」にしておくことをおすすめします。

    公正証書にしておくことにより、養育費の不払いに対して「差し押さえ」などで対応することが可能です。

    万一、話し合いの場でしっかりと養育費について決められなかったという場合には、家庭裁判所を通して決定していきます。

    家庭裁判所での決定は、公正証書と同様に養育費の不払いに対して差し押さえなどの強制力を持っています。

  3. (3)いつまで養育費を支払うのか

    実は、養育費をいつまで支払うのかについては、家庭状況により異なります。

    決して20歳までという訳ではありません。

    養育費を考えていく上で重要な要素となるため、詳しくは後述していきます。

  4. (4)養育費の振込先

    具体的に養育費をどの銀行の口座に振り込みしてもらうのかを決めておく必要があります。

    これを決めておかなければ、逐一相手方と連絡を取る必要性が生じます。

    子どもための義務である養育費については、きちんとした書面、または機関を通して決定することを心がけましょう。

  5. (5)養育費の決定までの流れ

    話し合いにて決められない場合には、裁判所にて第三者である調停委員を介して「調停」という形で決定していきます。

    ほとんどのケースでは調停で話がまとまることが多いですが、

    話が合わない場合には、「訴訟」という流れになります。

    訴訟は調停とは異なり、改めてお互いの言い分を裁判官が判断していきます。

    お互いの権利を証明していく戦いですので、しっかりと主張する根拠や証拠を示すひつようがあります。

    最終的には、裁判官が判決を下します。

3、養育費がもらえる期間について

養育費がもらえるのは子どもが何歳までかご存じでしょうか。

実は、何歳までという決まりはありません。

未成熟子は成熟していない子どもと説明しましたが、学業に専念している大学生であれば就労して自立することが困難なため、これは未成熟子と言えます。

つまり、すべては協議で決まります。

養育費が支払われる期間は個々の家庭により異なり、高校卒業後に子どもが就職をする場合には18歳の誕生日月まで、大学生で就労していない場合には大学卒業する22歳の誕生日月までなど、子どもの状況で柔軟に考えてあげることが大切です。

基本的には、子どもが成人を迎えるまでという考え方がありますが、子どもが健やかに安心して暮らせるまでは最低限の支援をする必要があります。

仮に子どもが大学院に進学するという場合には、協議をして学費を負担するのか、または毎月の養育費の支払いを延期するのかを決めていくのが賢明です。

4、養育費の相場は?算定方法

養育費は一律でいくらと金額が決まっている訳ではありません。

そのため、両親の合意さえあれば、いくらになってもかまいません。

養育費において、具体的にいくらという相場はありませんが、調停や審判などを通して養育費を決める場合には、家庭裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」をもとに判断されるのが一般的です。
夫婦間で養育費について協議する場合に使用するケースも少なくありません。

養育費算定表は、養育費を払う「義務者の年収」と受け取る側の「権利者の年収」が分かればおおよその目安額が分かります。
また、子どもの人数や年齢など家庭状況によっても金額は異なります。

養育費算定表を基準に、子どもの数が一人から三人の場合と年齢が0歳から14歳、15歳から19歳の場合で養育費を算定することが可能です。

たとえばですが、義務者の年収が400万円、権利者の年収が200万円、5歳の子どもがひとりの家庭で養育費を算定すると、2万円から4万円が養育費の相場だと算定されます。

ベリーベスト法律事務所では、養育費算定表を参考に「養育費計算ツール」を用意しておりますので、養育費の目安を知りたい方はご活用ください。

  1. (1)給与所得者と自営業者で養育費算定表の金額が異なる?

    養育費算定表を見る場合、給与所得者と自営業者では養育費の金額が若干異なります。一見、自営業の方が損をしているように見えてしまいますが、給与所得者と自営業者とで所得の算定式が異なるためです。算定表を見る場合、それぞれの年収の求め方について説明いたします。

    ①給与所得者の場合
    算定表での年収の求め方ですが、「給与所得者」の場合は源泉徴収票に記載されている「支払金額」がいわゆる年収に該当します。

    源泉徴収票ではなく給与明細での支払金額に関しては、あくまで月額での給与となるため、ボーナスや営業職の歩合給などが含まれていないことも考慮しましょう。

    また、確定申告されていない収入がある場合には、もちろんそれも含めた金額で算定するようにしてください。

    ②自営業者の場合
    「自営業者」の場合は、確定申告書にある「課税される所得金額」が年収に該当します。

    この課税される所得金額については、実際には支払われていない基礎控除、青色申告控除などが引かれた金額であるため、これらを加味して算定するようにしてください。

    また、「児童手当」「児童扶養手当」については、社会保障給付であるため権利者の年収に含める必要はありません。

5、できるだけ養育費をもらうためには?

確実に養育費をもらうためには、養育費決定までに話し合ったことを書面に残しておくことです。

これも普通の書面ではなく、「公正証書」という形で残しておくことにより、わざわざ裁判をするまでもなく養育費を回収することが可能です。

公正証書の効力は、裁判にて下される判決と同等の効果を発揮します。

確実に養育費を受け取りたいと思うのであれば、きちんとした形で公正証書を残しておくほうが賢明です。

また、調停を経て離婚をした場合でも、「調停証書」という書面が作成されます。

これも公正証書と同様に、養育費の支払いがない場合には、差し押さえなどの強制執行という手段がとれます。

これらの公的証書を残しておくことで、養育費の不払いリスクを回避することが可能です。

6、まとめ

今回は、養育費の算定方法や決定までの流れについて解説しました。

養育費は決して20歳までではない、養育費には相場があるなど、養育費についてしっかりと覚えておくべき知識もたくさんあります。

万一、養育費の相場よりも低い金額で話が進みそうだ、養育費をきちんともらえるかが心配だという方は、お近くの弁護士に相談されることをおすすめします。

養育費に関するトラブルは、養育費に詳しい弁護士に相談するのが最良の手段です。

養育費に限らず、時間が経過してしまうとなかなか解決が難しくなるケースもあります。

養育費に関して疑問・不安があれば、ぜひお気軽にベリーベスト法律事務所・札幌オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています