0120-629-021

平日9:30〜18:00/土日祝除く

メールでのお問い合わせ 24時間・365日受付
メニュー メニュー

求人詐欺とは? 企業が求人詐欺をするリスクと問われる罪を解説

2022年11月14日
  • 労働問題
  • 求人詐欺
求人詐欺とは? 企業が求人詐欺をするリスクと問われる罪を解説

労働者の新規採用をしようと考えた企業が求人情報を掲載したとしても、記載されている労働条件によっては、労働者からの応募がないこともあります。そのような状況に直面した企業の担当者が、実際よりも高い給与や福利厚生を求人票に記載することによって、採用を有利に進めようと考えることもあります。

しかし、本来の労働条件と異なる好条件を求人票に記載する行為は俗に「求人詐欺」と呼ばれ、世間からは批判の対象とされています。また、求人情報に虚偽の条件を記載することには、労働者から訴えられるなどの法的なリスクも存在するのです。

本コラムでは、企業による求人詐欺の法的な問題について、ベリーベスト法律事務所 札幌オフィスの弁護士が解説します。

1、求人詐欺とは?

まず、俗に「求人詐欺」と呼ばれる行為の種類や、求人詐欺をした場合に企業側が問われる可能性のある罪について説明します。

  1. (1)求人詐欺とは

    求人詐欺とは、求人票や求人広告に実際の労働条件とは異なる好条件を記載して求職者を集めて、応募してきた求職者との間で募集時の労働条件とは異なる不利な条件で労働契約を締結することをいいます。

    たとえば、以下のような事例が、求人詐欺にあたります。

    • 求人票では月給25万円と記載されていたのに、実際の契約では月給20万円だった
    • 求人票では土日、祝日休みと記載されていたのに、実際には月1回休日出勤が必要だった
    • 求人票では正社員との記載があったのに、実際には契約社員としての採用だった
  2. (2)求人詐欺の違法性

    企業が求人票を出す段階では、どのような人が応募してくるかわからないために、応募者の能力や適性がわからない状態で労働条件の提示をしなければなりません。
    そのため、求人票に記載した労働条件は、あくまでも見込みの労働条件に過ぎません。したがって、実際の労働条件との間に相違が生じたとしても、直ちに違法となるわけではないのです。

    しかし、当初からその労働条件で労働契約を締結するつもりがないにもかかわらず、求職者を集める目的で、あえて有利な労働条件を求人票に掲載したような場合には、「職業安定法」に違反する、違法な行為となるのです
    職業安定法では、労働条件について明示するよう定められており(職業安定法5条の3)、明示等に応じない事業者に対しては、改善命令を行うことができるとされております(職業安定法48条の3)。
    そして、改善命令等にも違反した事業者に対しては、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることになります(職業安定法65条8号)。

2、求人詐欺をすることのリスク

企業が求人詐欺をすることには、職業安定法違反の罰則が適用されることの他にも、以下のようなリスクが含まれています。

  1. (1)会社の社会的信用が低下する

    虚偽の条件で労働者の募集をした場合には、厚生労働省による勧告や企業名の公表といった制裁を受ける可能性があります。
    企業名が公表されてしまうと、「悪質な企業である」との認識が世間に広まってしまい、優秀な人材を確保することができなくなるだけでなく、会社の社会的信用が大きく低下し重大な風評被害にもつながりかねません。

    また、厚生労働省による企業名の公表がなされなかったとしても、求人詐欺によるトラブルの被害を受けた労働者がSNSなどに書き込む可能性があります。
    インターネットを通じて求人詐欺の事実が拡散してしまった場合にも、会社の社会的信用は大きく低下するでしょう

  2. (2)労働者から訴えられる可能性がある

    求人票に記載されていた労働条件と実際の労働条件が異なっていた場合には、不満を抱いた労働者から訴えられる可能性もあります。

    求人票は、雇用契約の申し込みの誘引にすぎませんので、原則として求人票記載の労働条件がそのまま会社と労働者との間の労働条件になるわけではありません。
    しかし、求人票記載の労働条件と異なる内容であることを明示しないと、求人票記載の労働条件が実際の労働条件になってしまうリスクがあるのです。
    労働者から訴えられた場合、労働契約締結までの経緯によっては、会社側に不利な判決が言い渡される可能性がある点に注意してください

    なお、求人の段階で給与条件について誤解を与えるような不適切な説明をしていたことが、労働基準法15条1項に違反し、採用担当の説明が労働者に誤った理解をさせかねないものという点で契約締結過程における信義則に反するとして、労働者の不法行為に基づく損害賠償請求が認められた裁判例もあります。

3、求人詐欺で訴えられた裁判例

以下では、求人詐欺を理由として企業が労働者から訴えられた裁判例として、京都地裁平成29年3月30日判決を紹介します。

  1. (1)事案の概要

    企業Yは、ハローワークで求人を行うことにし、「雇用期間の定めなし」、「定年制なし」との記載がある求人票を作成して、ハローワークに求人申し込みを行いました。
    労働者Xは、ハローワークでYの求人票を閲覧し、基本給や定年制がないことに魅力を感じてYへの応募を決めました。
    XはYでの採用面接の際に、求人票のコピーを持参し、定年制がないことを質問したところ、Yは「まだ決めていない」と回答をしました。なお、雇用期間の定めの有無、労働契約の始期については特にやり取りはなく、その後Yは、Xに対して採用する旨の連絡をしました。

    Yは、求人票では上記の労働条件を記載していたものの、実際のXの労働条件としては、契約期間を1年とする有期契約、65歳までの定年とする労働条件通知書を作成し、Xに提示して署名捺印を得ました。
    そして、Yは、Xを雇用してから1年後、期間満了を理由としてXとの労働契約を終了したところ、それに反対したXから解雇無効を理由に訴訟が提起されたのです。

  2. (2)裁判所の判断

    裁判では、XとYとの間で、求人票記載のとおりの雇用期間の定めのない労働契約が成立したかどうかが争点となりました。

    裁判所は、「求人票記載の労働条件は、当事者間で異なる合意がなされるなどの特段の事情がない限り、雇用契約内容になる」と判断しました。
    また、本件では求人票に「雇用期間の定めなし」との記載があり、採用面接でも求人票と異なる旨の話し合いがないまま、Xに採用通知をしたものであるから、当事者間に求人票とは異なる特段の合意は存在せず、期間の定めのない雇用契約が成立したと判断されたのです。

    この裁判例を前提とすると、求人票と異なる条件で労働契約を締結する場合には、求職者に対してその旨十分に説明をして、合意を得ておくことが必要となります。
    このような手続きをふまえずに採用通知を送ってしまうと、求人票の内容が実際の労働契約の内容になってしまう可能性がある点に注意してください。

4、従業員とトラブルにならないために企業がとるべき対策

求職者の募集にあたって、従業員とのトラブルを回避するためには、以下のような対策をとる必要があります。

  1. (1)求人票に正確な情報を記載する

    求人詐欺によるトラブルは、求人情報に記載した労働条件と実際の労働条件が異なることが原因で生じます
    そのため、求人詐欺によるトラブルを回避するには、正確な情報を求人票に記載することが最善の方法となるでしょう。
    「人材不足であるから、少しでも多くの求職者に応募をしてもらいたい」という意図があるとしても、虚偽の労働条件を記載してしまうと、採用後にトラブルが生じる可能性が高くなってしまいます。
    できる限り、正確な情報を記載するように努めましょう。

    ただし、求人票を作成する段階では、確定的な条件を記載することが難しいこともあります。そのような場合には、「基本給25万円~30万円」、「賞与の支給:会社の業績などを勘案して定める」など、ある程度幅のある記載にとどめておき、条件を確定させないようにしておくとよいでしょう。
    また、採用後に業務内容や就業場所の変更がある場合には、そのことも求人票に記載しておくようにしましょう

  2. (2)求人票と異なる条件で採用する場合には採用前に説明し合意を得る

    採用面接の結果、「募集していた労働条件での採用は難しいが、別の条件であれば採用を検討してもよい」という判断がされることもあるでしょう。
    しかし、求職者としては、求職票を見て、「就職したらこの条件で働くことになるのだ」という認識をしたうえで応募をしています。
    もし別の条件で採用するというのであれば、そのことを求職者にきちんと説明しなければ、誤解を招いてしまうおそれがあるでしょう

    求人票の求人内容とは異なる条件で採用をするという場合には、求職者に対してきちんと事前に説明をして、異なる労働条件で採用することについての合意を得るようにしましょう。

  3. (3)顧問弁護士を依頼することでトラブルを未然に防ぐことができる

    求人詐欺のように、労働者の採用の場面では、会社と労働者の間でトラブルが生じることがあります。
    このようなトラブルを未然に防ぐためには、法律の専門家である弁護士のアドバイスを受けることが有効な手段となります

    顧問弁護士を利用すれば、いつでも気軽に相談をすることができるために、トラブルに発展する前に予防することが可能になります。
    トラブルが生じてからでは、解決までに長い時間がかかることもあるうえに、事態を解決しても会社の社会的信用が損なわれてしまうおそれがあります。
    労使間のトラブルを回避するためには、ぜひ、顧問弁護士の利用をご検討ください

5、まとめ

求人票に記載した労働条件と実際の労働条件が異なっている場合には、適切な対応をとらなければ、労働者との間でトラブルが生じてしまうおそれがあります。
弁護士であれば、そのような場合の対策をアドバイスすることができ、実際の従業員との対応も任せることができます。
「求人詐欺でトラブルになりそうだ」「求人詐欺で訴えられないか不安だ」といったお悩みを抱えられている場合には、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

お気軽にお問い合わせください ご相談の予約はこちら

0120-629-021

平日9:30〜18:00/土日祝除く

メールでのお問い合わせ
24時間・365日受付

お気軽にお問い合わせください ご相談の予約はこちら

札幌オフィスの主なご相談エリア

札幌市中央区、札幌市豊平区、札幌市南区、札幌市西区、札幌市清田区、札幌市手稲区、札幌市北区、札幌市東区、札幌市白石区、札幌市厚別区、石狩市、小樽市、江別市、千歳市、恵庭市、北広島市、岩見沢市、美唄市、三笠市、苫小牧市、余市郡、余市町、石狩郡、当別町、南幌町、長沼町、むかわ町、夕張市、室蘭市、喜茂別町、厚真町、登別市、京極町、倶知安町、古平町、積丹町にお住まいの方

ページ
トップへ