モラハラ夫と離婚するときに絶対に注意しておきたいことを札幌の弁護士が解説
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結婚する前は優しくよき夫になると思っていたのに、結婚してから態度が豹変してしまった。
夫から日常的にモラハラを受けて、離婚を考えている方は少なくありません。
近年、モラハラ夫に苦しむ女性は増えており、平成27年度の司法統計によると、離婚原因の第1位は「性格の不一致」、それに次いで第2位が「モラハラ」になるほど高い割合を占めています。
ただし、モラハラ夫と離婚したいと考えた時に絶対に注意しておくべきことがあります。
今回はモラハラ夫と離婚したいと考えた時に知っておきたい離婚の手順や方法について弁護士が解説いたします。
1、そもそもモラハラとは?モラハラ夫の5つの特徴
そもそもモラハラとは「モラルハラスメント」の略で、精神的な暴力や嫌がらせのことを指します。
身体への暴力と違い、言葉や態度によって精神的に傷つけるので、目に見えた被害がないのが特徴です。
そのため、周りもその被害に気付かずに1人で抱え込んでしまい、精神的に追い詰められていくケースもあります。
また、被害者や加害者側も「モラハラを受けている」「モラハラを行っている」という自覚がないケースもありますので、知らず知らずのうちにモラハラが起きてしまっているというケースが少なくありません。
このように、被害が表面化しない、当人同士の自覚によって個人差があることから、
「これをやったらモラハラだ!」と必ずしも明確な基準があるわけではないのが、難しいところです。
とはいえ、基準が分かりにくいものではありますが、一般的にモラハラと呼ばれる言動にはいくつか特徴があります。
具体的にモラハラをする夫にはどんな特徴があるのでしょうか。
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(1)日常的に暴言を吐いている
たとえば、妻が些細な質問をしただけにもかかわらず、「そんなことも知らないのか?」「全くお前はダメだ」「お前は本当にバカだ」と言って、妻を貶めようとしてきます。
また、少しでも気に入らないことがあると妻を何時間でも罵ります。
その他にも妻の容姿に対して「ブス」「お前には生きている価値がない」と言って、常に罵倒し責め続けてきます。 -
(2)嫉妬や束縛が激しい
モラハラ夫は、妻に対する嫉妬や束縛が異常です。 たとえば、電話やメールをこまめに送り、すぐに連絡がないと「何をしていたんだ!」と怒鳴って怒ることがあります。
妻が今どこで何をしているかと監視したがる傾向があり、自分の知らないところで何をしているかを把握しないと気が済みません。 -
(3)自分の間違いを認めない
モラハラ夫は自分の考えが絶対だと思っています。
明らかに自分の言ったことが間違っていたり人に迷惑をかけたりしても、謝ることはありません。妻が正論を言っていても「生意気だ」「俺に口を聞くな」などと言って、逆上します。 -
(4)相手を思いやる感情が欠落している
たとえば、妻が病気で寝込んでいても看病しない、サポートをしないなど、妻をいたわり、相手を思いやる感情がありません。
ひどいケースだと、妻が病気にも関わらず、家事を強要するケースもあります。 -
(5)表向きにはよき夫、世間体が良い人
モラハラ夫の特徴として、外面はとても良い夫で、会社や近所の人など、周囲の人からの評判が高いことが上げられます。
過剰なまでに世間からの評価を気にするため、一見するとモラハラ夫には全く見えないのですが、外では夫婦円満を演じて、家に入ると態度が豹変するというケースは少なくありません。
2、モラハラを理由に夫との離婚は可能か?
モラハラを理由に離婚できるかどうかは、モラハラの程度によります。
重要なのは、モラハラ自体が離婚の理由になるのではなく、モラハラによって婚姻関係を継続することが困難な状況になってしまった場合に、モラハラが離婚理由になる可能性があるということです。
そもそも離婚には3つの種類があります。
夫婦間の話し合いで離婚する「協議離婚」、調停委員を交えて話し合いをする「調停離婚」、
協議離婚、調停離婚でまとまらない場合に、裁判で離婚をする「裁判離婚」の3つです。
協議離婚、調停離婚の際には法的な離婚理由は必要ではありません。夫婦間での話し合い、もしくは調停委員を交えて話し合いをし、お互いが合意のうえ最終的に離婚届を提出すれば、離婚は成立します。
問題は、協議離婚でも調停離婚でも話がまとまらなかった場合、裁判上で離婚を争うことになったときです。
裁判上で離婚を争う際には、法的な離婚理由が必要とされます。民法では以下の5つを法的な離婚理由として定めています。
具体的には、
- ①配偶者に不貞な行為があったとき。
- ②配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- ③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
- ④配偶者の強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- ⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
この5番目の「その他、婚姻を継続しがたい重大な自由」にモラハラが該当する可能性があります。
ただ、モラハラが法的な離婚理由として認められるかどうかは裁判所の判断によります。
ですので、必ずしもモラハラが原因で裁判所が離婚を認めてくれるわけではないということは認識しておいたほうがよいでしょう。
3、離婚を反対しそうなモラハラ夫と離婚する時の手順・方法について
夫のモラハラに我慢がならず離婚したいと思っても、夫が離婚を拒否する可能性があります。
その場合、以下のような対策を取りましょう。
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(1)協議(話し合い)離婚を検討する
まずは夫婦間で話し合って離婚できることが最もよいでしょう。
ですが、モラハラ夫の場合、離婚を切り出してもまともに取り合ってくれない、話を聞いてくれないというケースがほとんどであるため、協議離婚は非常に難しいといわれています。 -
(2)別居する
ひとくちにモラハラと言ってもその実態はさまざまです。当人同士に自覚がないケースも多く、危機的な状況であるにもかかわらずそれを認識していない方もいます。
そのような方はまずその危機的な状況から脱する必要があります。
また、モラハラが原因で夫婦関係が継続できない困難な状況であるということを裁判所に認定してもらうには、証拠が必要です。
たとえモラハラが酷い場合でも、証拠がないせいで、モラハラが認定されないことはよくあります。
その際、 別居期間が長期に及べば、モラハラとは別の「婚姻を継続し難い重大な事由」ができ、離婚が認められる可能性があります。 -
(3)離婚調停を申し立てる
協議離婚で解決できない場合は、「家庭裁判所」に離婚調停を申し立てます。調停委員と呼ばれる第三者が間に入って話し合いをします。
このとき重要になるのは、夫がモラハラをしているということが客観的に見て分かる証拠があることです。
先にお伝えしたとおり、モラハラは目に見えない被害で、被害の程度も個人差があるため、第三者からは本当にモラハラがあったのか、分かりにくいものです。
ですので、第三者の目から見てモラハラがあったことが分かる証拠があれば、事実をしっかりと裏付けることができますし、離婚を有利に進めていくことができます。
具体的には、以下のような証拠があると有効であるとされています。- モラハラの言動を録音したデータ(日常生活で自分に暴言を吐いている様子が分かるもの)
- メールやLINEのなどメッセージ
- モラハラの被害を受けたことを記録した日記
夫の言動が異常であり、かつその頻度が高いことが分かることを記録することで、モラハラがあったことを証明できる有効な証拠となります。
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(4)離婚訴訟を起こす
もっともモラハラが原因での離婚は、そもそも話し合いをすることが絶望的、また被害の状況によっては顔を合わせて話し合うことすらできない場合もあるので、調停離婚から始めていくことが無難であるといわれています。
そして、相手が離婚に応じなかった場合は、離婚訴訟を起こします。
先にお伝えしたとおり、裁判で離婚と認定されるためには、モラハラが夫婦関係を継続しがたい重大な事由であることを証明することが必要です。- ①配偶者に不貞な行為があったとき。
- ②配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- ③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
- ④配偶者の強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- ⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
判決によって、離婚が成立する場合もありますが、判決に至るまでに和解の話をすることも多いので、裁判所が間に入ることにより、話し合いによって離婚できる可能性もあります。
4、モラハラ夫との離婚のやり取りが不安な場合は弁護士へご相談を
モラハラ夫との離婚はまともに話を進めることが難しいため、精神的にも体力的にも疲弊し、限界を感じる方は少なくありません。
そんなときは弁護士の力を借りることも1つの手段です。弁護士へ相談することで以下のようなメリットが得られます。
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(1)弁護士が代理人として離婚の手続きを進めてくれる
既にモラハラ夫から被害を受けている方は、精神的に相当参っており「夫の顔を見たくない」「夫と話をすること自体がストレス」という方が少なくありません。
また、離婚するためには調停を申し立てたり、離婚訴訟を起こしたり、離婚するための事務的な手続きも必要になってきます。
ただでさえ精神的に参っている状態であるにも関わらず、これらの手続きもしなくてはならないとなるとその負担は計り知れません。
弁護士に依頼することで、弁護士が代理人となって相手方との離婚手続きを進めることができます。
また、万が一離婚裁判となった場合でも、モラハラが法的な離婚理由と認定されるために、有利に動いてくれますので、離婚できる可能性を高めることができます。 -
(2)離婚後のお金の問題を解決できる
離婚するためには財産分与、婚姻費用、養育費、慰謝料、年金分割等、離婚後のお金をどうするかを決めなくてはなりません。
弁護士に依頼していただくことで、離婚後の生活費や、その他お金の問題で揉めることのないよう相手方と交渉し、未然にトラブルを防止します。
5、まとめ
以上、モラハラ夫と離婚するときに注意しておきたいことについてお伝えしてきました。
モラハラ夫と離婚するためには、夫から日常的にモラハラを受けていることが分かる証拠を揃えて、適切に対処していくことが大切です。
自分1人では太刀打ちできないと感じたら、迷わず弁護士に相談しましょう。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています